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黒猫転生〜死神と少女の物語〜  作者: 霧ヶ峰
第1章:始まりの旅
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第4話:

先ほどまで淡い月の光だけで照らされていたはずの森は、今や紅蓮に染まり、黒い煤煙が立ち込めている。



この世界に初めて降り立った場所。

そのためもあってか、俺はこの森をとても気に入っていた。


太陽の照らす昼間だろうが関係なく、いつも夕暮れのように薄暗く、木々の揺れる音や獣の叫び声の木霊する森。

人が一度足を踏み込むと、帰ることすら難しいと思われるこの森で、この世界に降り立った時から長い長い間…それこそ人の一生くらいの時間を俺は過ごしてきた。

10年ほど森を離れていたことがあったが、その間もここを自分の帰る場所だと思っていた。




そんな場所を傷ついた少女を追いかけ回すような男どもに荒らされるのは許せなかった。

奴らと少女がどんな関係で、なぜ少女が追いかけられているのかは知らないし知りたくもない。


彼女を助ける。ただの自己満足に過ぎないが、助けてと言われた瞬間にどうしようもなく助けたいという気持ちになったのだ。



それにほら。どこかの漫画の主人公が言ってただろ?


人を助けるのに理由なんかいらないってさ。








『ふぅー』


燃え盛る木々を見つめて、大きく息を吐いて意識を自身の内側に向ける。

ここ最近はとんと使ってこなかったが、魔力は

「シッ!!!」

と猫の口から鋭く息を吐き出し、ナギは力強く地面を蹴ると、そのままの勢いで空へと飛び上がる。

そのジャンプ力は生い茂る木々を軽々と越し、燃えている部分が一目で分かるほどの高さに到達する。


『[水弾]!』

燃えている部分をしっかりと視認したナギは、そのまま空中で水の玉を発現させ、燃え盛る木々を囲むように大量に放つ。



一斉に放たれた大量の水の玉は、ナギの狙い通りの場所へ着弾し、中心部を残して、残り火すら全て消し飛ばす。


風も吹いていないため、これで燃え広がることはないだろう。




地面に着地し、『ふぅ・・・』と先ほどとは違う意味で息を吐くと、ゆっくりと未だに燃えている部分へと歩き出す。・・・そこで待っている人間の元へと。

















「よおバケモノ。せめて一回は斬らせろよ?」

燃える草木が映る視界が開けると、血の滲む指で長剣を構えている男から、そう声が投げられた。


男の後ろで燃えている炎のせいで、その表情はわからないが、声の感じと首から下げられているロケットペンダントの輝きから、どんな心情なのかは伺える。



『狂ったままだったなら、そのまま命を刈り取るだけだったが、どうやら正気に戻っているようだからな・・・俺も礼儀に沿おうか、人間』

「なっ!こいつ頭の中に直接!?・・・いや、そんなことは構わねぇ。てめぇが殺ったあいつらの分・・・俺がやらせてもらうぜ!」

『やれるものならな。いつでもいいぞ?さぁ来い』


ナギがそう言うと同時に、頭領は剣をダラリと下げ、身を低くして一気に走り出す。


そのままナギに接敵すると、下から掬い上げる

ように斬りつける。

そして振り上げた後に刃を返し、一撃目を避けたナギに向かって振り下ろす。



「チィ!これを避けるか!なら、これならどうだ!」

一撃目とは比べ物にならないほどの速度で振り下ろした二撃目も避けられたことに頭領は悪態を吐くが、地面を斬りつけてナギの前に土埃を作ると、後ろへと飛び図去り、何かの詠唱を始める。


「いくぜ![精霊召喚・サラマンダー]!」

土埃が吹き飛ばされるのと頭領の詠唱が終了するのがほぼ同時だったが、頭領はナギが近づいて来る前に、自分とナギの間に魔法陣を創り出し起動宣言(アクションワード)を言う。



それと同時に、魔法陣が紅く輝き始める。

魔法陣の内部に光が集まり、徐々にその形を作っていく。


僅かの間にはっきりとした形が作られ、魔法陣をが消えるとともにサラマンダーは身体から炎を噴き出し、咆哮する。

それと同時に周囲で燃え盛っていた炎が、メラメラと大きく揺れ、サラマンダーへと集まっていく。


「俺の最後の技だ・・・こいつはそんじょそこらのトカゲとは一味も二味も違うぜ?さぁ、仕切り直しだ!バケモノよぉ!!!」

周囲の炎が取り込み、一段と激しく炎を噴き上げるサラマンダーの横で、剣を構えなおした頭領はそう言い、再びナギに向かって駆け出す。



『フッ・・・』

頭領がサラマンダーを召喚し終わるまでの間に、頭領、サラマンダー共に[死神の瞳]で鑑定していたナギは、小さく笑みを洩らす。心の中だけで溢した小さな小さな笑みだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


[名称]

・ベネット=ノオ=マージュ

[種族]

人間族(ヒューマン)

[レベル]

・34

[称号]

・痛みを分かち合う者・心の救済者・火の魔闘師・サバイバー・奴隷の主人・火炎の契約者

[技能]

・長剣術・火炎魔法・契約魔法・拳闘術・薬草知識・調合術・見切り術・危機感知


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


[名称]

・サラマンダー(真名:サンドラ=バーミリオン)

[種族]

・サラマンダー

[レベル]

・38

[称号]

・火の女神の寵愛を受けし者・契約を結びし者

[技能]

・火炎吸収・火炎耐性・火炎魔法・自己再生・牙闘犬 術・体術・爪闘術・危機感知・魔力操作・火炎防壁(フレイムプロテクト)


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


これが目の前にいる二人の・・・いや、一人と一匹のステータスだ。








笑ってしまうな。これじゃあまるで、俺が悪者で彼方が主人公じゃないか・・・


ちなみに今のナギのステータスは


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


[名称]

・ナギ

[種族]

・シュバルツカッツェ/人間族(ヒューマン)【死神(高位):74(取り込んだ魂 13529/15000)】

[レベル]

・83

[称号]

・生まれ変わりし者

〈・忍び寄る者・喰らい尽くす者・魔獣の長・暗黒樹林(ダークフォレスト)の覇者・魔獣〉

《・世捨人・狩猟者・開拓者・孤独に棲まう者・魔獣の敵》

【・死の代行者】

[技能]

・体術・魔力操作・気配察知・回避術・危機感知・鷹の目・毒耐性・麻痺耐性・野草知識・全属性耐性・石化耐性・五感強化・念話・闇影魔法・風雷魔法・水氷魔法・生活魔法

〈・牙闘術・爪闘術・着地術・木登り術・跳躍術・立体機動・自己再生・気配遮断・悪食〉

《・罠感知・罠作成・気配希薄化・格闘術・採掘・鍛治・伐採・木工・解体・裁縫・調合・錬成・料理・投擲・暗殺術・登攀・剣術・槍術・弓術・糸操術》

【・死者の灰・死神の瞳・人化・黒猫化・魂刈り・畏怖】


*〈〉は猫化時、《》は人化時、【】は死神の固有能力(他人は不可視)、それ以外は基本表示されるが隠蔽可能

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


こうなっている。


笑ってしまうな。このステータスでは、完全な悪役だろう。


長年一人で暮らしていたためか、様々な事に手を出していたらこのようなステータスになってしまっていた。

糸操術はアレだ、死神といったら糸使いだろう?やっぱり憧れちゃうじゃないか!



まぁ、自分のステータスにケチを付けても仕方ないし、今は戦闘中だ。そっちに注意を戻そう。












「セェヤァアアア!!!」

ベネットは真正面から突っ込み、ナギへと向けて長剣をまっすぐ振り下ろす。


『???』

ナギは、いきなり戦い方が悪くなった事に疑問を浮かべるが、それは一瞬にして納得へと変わった。


「ガァッ!!!」

ベネットの後ろ、ナギの死角になる部分にいたサラマンダーが、ベネットの横スレスレに火の玉を放ったのだ。



『やるな・・・だが!』

ナギはそう呟き、後ろへと跳ぼうとした。だが、ナギの[危機感知]に頭上からの反応があった。


『なっ!?』


そう、ベネットが声を上げて突っ込んで来たのも、サラマンダーがナギの左右に火の玉を放ったのも、その全てが囮だった。いや、どれに注意を取られても、次の攻撃が当たるようにするための連携と言うべきものだろう。



「一発貰ってけ!バケモノよぉ!!!」

ベネットがそう叫び長剣を振り下ろすと、ナギの横を通過しようとしていた火の玉も上から迫って来ていた火の玉も、急に角度を変えてナギへと集まっていく。



四方向からの攻撃は一箇所に集結し、地面を震わせるほどの衝撃となって爆発した。

当然、その攻撃の一端を担ったベネットを巻き込んで。













衝撃によって、ベネットは吹き飛ばされ、木へと衝突する。着ていた革の鎧は、衝撃により破損し、鉄で出来ている長剣ですら半ばから折れていた。当然、ベネット本人も唯ならる被害を受けていた。


「ゴホッ!ゴホッ!・・・ど、どうだ、バケモノよぉ」

ベネットの口から弱々しく呟かれたその呟きは、未だ土煙りの立ち込めているソコにいるであろうナギに向けられる。


『流石だ・・・だがな、俺には通じない』

その呟きに応えるように、ナギは土煙りの中から身を露わにする。

バチッ!バチッ!っと、その身体の周りで“黒い”電撃を走らせながら。



「!!!・・・なるほどなぁ、こりゃあ勝てねぇわ」

ベネットはその様子に目を見開くも、静かに笑ってそう言う。


「まぁいい。さっさと殺しなよ、バケモノよぉ」

『潔いな。いいのか?今なら油断してるかもしれんぞ?』

「ケッ!ナマ言ってんじゃねぇよ。今の俺が何できるってんだ?」

右腕は肘から先が吹き飛び、左腕は折れ曲がっている。両足とも不自然な方向へと曲がり、腹部には折れた長剣の半身が突き刺さっていた。


強い口調でそう言っているが、その顔には血の気がなく、今も傷口からは血が流れ続けている。



『いいだろう。だが、お前を殺す前に一つだけ願いを聞いてやる』

「へっ、ありがてぇことだな・・・んじゃ、そのサラマンダーには手を出さねぇでくれや。どっちみち、俺が死んだら契約は切れるんだからよ」

『汝の願い、心得た。・・・まったく、違う出会い方をしたら上手くやっていけただろうに。では、さらばだ・・・ベネット=ノオ=マージュ。汝に次なる生を』

「ケッ!最後の最後で変なことぬかすんじゃねぇよ。バケモノがよぉ」

ベネットがニヤッと笑うのと同時に、ナギは黒い稲妻をベネットの心臓へと放つ。


稲妻を受けたベネットは、ビクンと身体を反らし、そのまま動かなくなった。



ベネットが死んだことによって、契約が解かれたサラマンダーは、召喚時と同じような光を発しながら消えていった。その時、ナギへ向けて小さく頭を下げたように見えた。











『・・・墓でも作ってやるか』

炎も全て消えて、再び月の光だけが照らす森となったところで、ナギは一人静かに月を見上げ、そう呟くのだった。




それからしばらくして、ナギが家へと戻っていく時、その背後には[死に争う勇敢なる者 ここに眠る]と彫られた石が、小さな小山の上にそっと立っていたのだった。

ふと思いついた名前をつけていたら、なぜかコ◯ンドーになっていた。な、何を言って(ポルポル省略





ナギの[技能]欄に、[生活魔法]と[畏怖]を追加しまし、[暗視]を削除しました。

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