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第0話:プロローグ

突如として案が思いついたので、勢い任せに書いてみました!メインの小説投稿を優先させたいので、偶にしか投稿しないと思いますが、宜しければブックマーク・感想をよろしくお願いします。

 ニャ〜ン………


 ある夏の夜、俺は電池切れになったゲームコントローラーの電池を買うためにコンビニまで足を運んでいた。

 都会よりも田舎に近いこの街ではコンビニに行くまでにそれなりの時間が必要になる。

 いくつか買い置きしてあったはずなんだがなぁ…とぼんやりしていた俺に突然頭上から猫の鳴き声が降ってきた。



「ん?こんな時間にどうした」


 昔から動物にはなぜか懐かれていた俺は、知っている猫なのかと思い、顔を上げて塀の上にいる猫を見てそう呟く。


 ニャーン?


 目があった見知らぬ猫はそう一鳴きすると、なぜか塀から肩へと飛び移り、前方に右の前足を向ける。

 まるで、そちらに進めと言っているみたいだ。




「あっちか?分かった」


 猫の頭をひと撫でし、猫の指した方へ歩みを進める。

 途中、十字路やT字路に来ると猫がペシペシと頬を叩いて歩みを止めさせ、違う方向へと向かわせる。














 しばらく猫の指示どうり歩いていると、気がついたらあたりの風景が森へと変わっていた。


「………ここは…どこだ?」


 思わず言葉が漏れた俺の肩から猫は飛び降り、足音を立てずに静かに地面へと降り立つ。



「お前の仕業か?」


 誇らしげに胸を張っているように見えて俺は自分の目の前で尻尾を揺らしながらすわっている猫にそう問いかけた。




『ええ』


 猫は頷きそう言葉を発した。

 そう、猫が喋ったのだ。


 それだけではない、そう言った猫はむくりと二本足で立ち上がると身体から黒い靄のようなものを放ちだしたのだ。

 やがて靄の量は増え、徐々にくっきりとした形を作り出していく。そして、気がつくとそこには猫の姿はなく、代わりに黒いローブを着た人型の“何か”が立っていた。


 月明かりに照らされ、真っ黒なローブの下から輝く紅蓮の双眼で此方を見るその姿は………まるで、物語に出て来る【終焉を司る者】。

 そう、[死神]の様だったのだ。



『汝…いや、貴様はまこと可笑しな人間であるな』


 [死神]のように唯々冷たい眼差しで此方を見つめている者は、俺に向かってそう言葉を発す。

 その声にはノイズのようなものが混じり、若干聞き取りにかかった。



「ふっ…そんな格好をした奴には言われたく無いんだかな」


『やはりそうだ…貴様には欠けている物がある。

 しかし、今となっては意味のないことだがな…』


 そう呟くと、[死神]は腕を上げ月明かりに翳す。まるで死人のように真っ白な手に、先ほどと同じような靄が集まって行く。

 そして、靄は次第に質量を持ち始め、やがて月明かりさえ吸い込みそうな漆黒の鎌となった。


 [死神の鎌]。


 冷たく輝くそれは、まるで質量を持たないかのように軽々と持ち上げられ、俺の首にそっと添えられる。



『最後に…汝の願いを聴こうか』


 首に鎌を当て、そこで静止させながら[死神]は、そう問いかける。



「そうだなぁ………もし…来世ってのがあるんだったら…“死神でもなんでもいいから、猫みたいに自由に生きたい”…かな」


 首に触れる鈍い冷たさを感じながら俺はそう呟く。

 伸び伸びと自由に生きる動物たち。窮屈な世の中に疲れていた俺はそんな彼らが羨ましかった。



『良かろう。汝が願い、しかと受け取った。

 …汝の心が来世で満たされることを祈っている』


 そう冷たく答える[死神]の瞳が、一瞬だけだが暖かく揺らいだ気がしたのだった。



『ではさらばだ黒木(くろき 凪沙(なぎさよ。

 ………汝に祝福があらんことを』


 手に持つ大鎌を引きながら、[死神]はそう呟く。

 ヒュッという風を切る音が耳に聞こえたと思ったら体の感覚が消え、何かに包まれるような不思議な暖かさを感じた。




 ぼんやりと薄れゆく意識の中で、美しく輝く紅蓮の月が3つ、自分を見下ろしていたのを俺は眺めていた。


 こうして、黒木 凪沙の人生は人知れずに、ただ静かに幕を閉じたのだった。




















『ふふっ…汝はなかなか面白かったぞ』


 凪沙が風に溶けるように塵と化して消え去ったのをしっかりと見送ってから、[死神]は、真っ赤に染まった月を見上げながらそう呟く。


 彼女の手には()()()()()鎌が握られているのだった。

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