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第二話 2-2

~トレンティー大陸・南部 ルハナ街 ギルド2F・作戦室~



「それでは、これより依頼内容の説明を始めたいと思います。まず、依頼内容の確認ですが、村を約20名から25名の規模の盗賊団が占拠しているのでこれを討伐し盗賊団の手から村を開放するのが依頼の内容となります。続いて村の位置ですが、ここより南南東に早馬で5日行ったところにあるそうです。ここまででなにか質問は御座いますか?」


 そこまで言い終わるとイラマリはここに集まる全員の顔を見る。


「現在の村の状況は?」

「イリーナ様、詳しい村の状況を教えていただけますか?」

「わかりました。」


 イラマリに言われイリーナは静かに話し始める。


「村の男の人たちはみんな、休みなく働かされていました。女の人や子供は盗賊たちの世話をさせられていました。盗賊団の人達はみんなにひどいことを・・・」

「悪いがそういうことを聞いているんじゃない。盗賊たちが村に来て今の段階でどれだけの日が立っているか、盗賊たち(リーダー)の特徴。あとはそうだな、盗賊たちが村の男達にどういう目的で仕事をさせているかが聞きたい。」

「失礼ですがマサズミ様。もう少し言い方があるかと・・・」

「イラマリ、お前は甘すぎる。同情で人が救えるならいくらでも同情してやろう。だが、今はそんなこと言ってる時じゃない。明確に目的や状況を把握しないと俺、自身の命に繋がる。それでどうなんだ?」


 正純に言い返したが言い返す言葉が浮かばず、イラマリは沈黙した。

 イリーナは、苛立ちたい気持ちをぐっとこらえて、言われたとおりに自分の記憶を探る。


「えっと、盗賊団が来てから何日経っているか覚えていませんが、僕が村から出て今日で29日くらいたってます。それと、盗賊団の(リーダー)の特徴ですがティグって名乗ってました。あと頬に大きなキズがありました。あとは、盗賊団の目的ですが、ごめんなさい。僕にはわかりません。」

「なるほど、ほぼ、情報はゼロに近いな。まぁ、行って調べるしかないか。」

「そうですか、いつ頃の出発される予定ですか。」

「村が占拠されてから日にちが経ちすぎている。早いほうがいいだろ。今すぐ出るぞ。」

「い、今ですか?準備は?」

「既にできてる。イリーナ、道案内を任せる。馬は乗れるか?」


 イリーナは首を横に降った。


「つくづく使えないやつだ。いいだろ。犬未、すぐに、早馬を2頭を用意しろ。」

「すでに、手配しております。おそらくもう、ギルドの前に来ているかと。」

「さすがだ。出るぞ!」


 そう言うと正純は立ち上がり颯爽と部屋を出て行った。

 二人はいきなりこのとで固まったまま動けずにその場に固まっていた。

 正純と一緒に出て行った犬未が戻ってきてイリーナに言った。


「ご主人様を待たせるつもりですか。イリーナ、行きますよ。」

「は、はい。」


 犬未に呼ばれ硬直から立ち直り犬未の後へと続く。


「あの、説明を・・・もう、なんなのよ!!」


 会議室には、一人取り残されたイラマリの叫び声が響き渡った。



 ◆



~トレンティー大陸・南部 街道~


 ルハナ街を出てから数日が過ぎた。

 現在、村まであと半分のくらいのところで、イリーナは正純に言われて野営の準備をセッセとしていた。

 正純はというと、どこから出したかわからない椅子に腰掛けてのんきに本を読んでいる。


「近くに魔物の気配はありませんでした。」

「ご苦労様。イリーナ、野営の準備どうだ?」

「まだです!!」


 なんで自分だけが野営の準備をしないといけないのかと腹を立てながらも天幕を建てる。


「手伝ってくれないんですか?」

「それは君の仕事だ。お坊ちゃん。」

「僕の名前はイリーナです。」


 自分はのんきに椅子に腰掛けて本を読んでいるではないか!仕事をしたといば魔物の偵察をしてきてくれたイヌミさんくらいだ。と文句を言いたげにしているがイリーナの口からその言葉は発せられなかった。


「イリーナ、私が手伝いましょう。」

「有難うござます。イヌミさん。」


 最初は取っ付き難かったがこうして数日、犬未と暮らしてみて犬未という人間が段々とわかったきた。

 わかると同時になぜ、そこまで正純に慕い従うのかわからない。

 イリーナの中で正純という人物は最初からであるが、今村を占拠している盗賊団の頭の様な人物とまでは行かないが、それに近い評価だ。

 そうこう考えてるいるうちに野営の準備が整う。

 日が山にかかりあと数刻もすぎれば夜が訪れようとしていた。


「さて、夕食の準備をするか。」


 パタンと読んていた本を閉じて正純は立ち上がった。

 近くの枯れ木の枝を集めて火を灯すと、そこに鍋を置き食材と水を入れる。

 しばらくすると、グツグツという音とともに湯気が上がり鍋に蓋をしてしばらく待つと出来上がり。

 野営の時に簡単に食べれる炊き出し料理だ。

 できた炊き出しを器に注ぎ焚き火を三人で囲いながらそれに口をつける。


「あと、数日で村の付近につくが。間違っても村につかずくなよ。」

「どうしてですか?」

「もし、お前が村に行ったら。1人取り逃がしたと知った盗賊団は逆上して村人を殺すかもしれない。それに、情報が不十分だ。明確な人数。盗賊団の拠点。戦力。資金。まずはそれを調べてから、対策を練って村を奪還。これが一連の流れだ。」

「そんなことしてる間にみんなが苦しんでいるんですよ。」


 正純は「はぁ」っと大きくため息をついた。


「一々、説明しないといけないのか?」

「イヌミさんがいればすぐにでも盗賊団をやっつけれるじゃないんですか?」


 イリーナはここに来るまでに犬未の実力を見ていた。

 道中に魔物が現れても現れたと同時に魔物は真っ二つになっていたのだ。

 ほぼ、一瞬の出来事だ。どれだけ数が増えようとも一瞬の出来事で、魔物は真っ二つにされるのだ。

 戦争が起きる前、自警団や騎士隊が村を訪れて魔物を狩ってくれた時があったがそこに来た誰よりも犬未のほうが強いとイリーナは確信している。

 そんな犬未だからこそ、正純は犬未をつれてきたのだとイリーナは思った。


「なるほど、確かに犬見がいれば並の盗賊団が束になっても勝てないだろうな。」

「だったら」

「お坊ちゃん、おまえの過ちを3つ正そう。」

「一つ、犬見は強い。確かにそうだ。だが、犬見が盗賊団を鎮圧するまでにもし、村人が人質に取られたらどうする。」

「二つ、盗賊団の頭が犬見よりも強かったらどうする。」

「三つ、もし、お前の村に盗賊団以外の者の手が加わっていた場合。同じことが繰り返される場合があるが、それはどうする?」

「以上三つだ。これを全部無視していいというのであれば犬未を突貫させて依頼を完遂したことにするが?それでもいいのか?」


 気持ちが焦っていたといえばいいわけになるだろ。

 だから、イリーナはこう答えるしかなった。


「よくないです。」

「もう少し、考えて発言しろ。その場の感情で発言をするな。これが終わったら俺のもとで働くんだ。少しはマシな働きをしてくれ。」

「すいません。」

「まぁ、報酬分はしっかりと働いてやる。・・・犬未、最初の見張りは任せた。頃合いを見て見張りは変わる。起こしてくれ。」

「御意」


 そう言うと、空になった器を置いて正純は天幕の中へと入っていた。

 焚き火の前には犬未とイリーナ、2人きりとなる。

 イリーナは膝を抱え焚き火の火をじっと見つめる。


「ご主人様に任せておけば問題なく解決しますよ。」

「そうでしょうか・・。僕には彼を信用できません。」


 これまでの正純との記憶を探るもどれを見てもいい印象はない。

 むしろ、悪い印象しかない。正純に頼って本当に良かったのかすら思えてくる。

 唯一の救いとなるが犬未の存在だ。先程も考えていた様に犬未は強い。

 だから、少しは安心はできるが正純は言った。

 もし、村人が人質に取られたらそれをかばいながらの戦闘になったら、数が少ないこちらが不利になるのはイリーナにもわかる。

 自分はもとよりおそらく正純も戦力外だとイリーナは思う。

 助けてもらえると思った時、嬉しさでは思考が麻痺していたのだろう。

 冷静になると不安ばかりが溜まっていく。

 戦力となるのは犬未だけこれでどうするのだと。


「犬未さんの強さは僕にもわかります。おそらくですが犬未さん一人で盗賊団を討伐出来てしまうと思うんです。でも、マサズミさんに言われたとおり、もし人質がとられたら、いくら犬未さんでも・・・」

「あまり、私達を舐めないでほしいですね。」


 犬未から鋭い視線来てイリーナはブルリと体を震わせた。


「ご主人様が、依頼を受けた。その時点でこの依頼が失敗に終わることはないんです。あなたが我々を信用できなくてもこれは確定事項です。」

「なんで、あなたはそこまで、彼を信用できるのですか?」


 イリーナの問に犬未は答えなかった。

 

 イリーナには不思議でならなかった。

 彼女ほどの人がなぜ彼、程度の人に従うのか。

 彼女ほどの人なば、1人でも生きていける。それこそ国の重役の護衛しかり、冒険者となってもトップクラスだろう。


「なんで、マサズミさんの元にるんですか?あなたならもっと―――。」

「話はここまでです。」


 犬未はイリーナの言葉を遮り、そういった。


「見張りは私がします。明日も早くに出発すると思うので、早めに体を休めてください。」


 犬未に言われたようにイリーナは空になった器を片付けて天幕に入ろうとする。


「不安なのはわかりますが、安心してください。ご主人様がなんとかしてくれますよ。」


 犬未がそういったのを聞いてイリーナは振り返る。

 犬未は小枝で焚き火をつついていた。

 

「有難うござます。」


 イリーナはそういい残し天幕の中へと入っていた。

 用意されていた寝袋に入るもしばらく、村のことを考えていた。

 自分が村を出てから随分と日にちが経っている。

 村の皆んなは無事なのだろうか。

 静かに目を閉じると眠気が訪れたので、イリーナはそのまま意識を手放した。


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