表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/114

9話

 馬車に乗り込み、エルム湖にむけて再出発。

 慣れたのか、リーファも酔うことはなく、今度は何事もなく馬車は進む。


 森に入り、少し進んだ場所に湖があって近くに家があった。


 御者さんにお礼と運賃を渡して、別れた。


 森の中だからか、空気も湖の水もきれいだ。

 静かでいいところっぽいんだけど、町から遠いんだよな。

 現代人の感覚で言うならちょっと不便かもしれない。


 推定1千万リンっていうのも、なんとなくわかる気がした。


 肝心の家はというと――


「わぁっ! ステキっ」


 見た瞬間にリーファの低かったテンションがあがった。

 うん、でも気持ちはわかる。

 家っていうよりは、ちょっとオシャレなログハウスだったから。


 森の中のログハウスって、なんか憧れる。

 扉の鍵をカタンとあけた。早く早くと急かすリーファに押されて中へ入った。


 広いリビングと、ダイニングとキッチン。あと部屋が三つある。


 二人で住むにはちょっとでかいけど、これが自分ちだと思うとちょっとワクワクする。

 家具は一通り揃っていて、部屋の一つには――大きめのベッドが置いてあった。

 寝室なんでしょうね、きっと。


「「…………」」


 ――しぅううううううううう


 変な音がして隣を見ると、リーファが頭から湯気を出してた。


 湯気出るヤツなんてはじめて見た! つか、顔真っ赤だ!

 たぶん、何を想像したのは一緒っぽい。


「わ、わわわわ、私、ほ、他、みみみみ見てくるねっ」

「お、おう! お、おおお、おれは隣の部屋見るからな」


 逃げるようにリーファがリビングのほうへ行き、おれもすぐに隣の部屋へ入った。

 おれもテンパったけど、リーファもけっこうテンパってたな……。


 で、この部屋は書斎っぽい。

 壁際の本棚には本が詰まっていて、机とイスがひとつずつある。


 どれだけ使われてない家なのかと思ったけど、意外とキレイなまま。

 前の住人が退去してから、そう時間は経ってないみたいだ。


 本を一冊手にとってページをめくっていると、


「――きゃああ!?」


 奥のほうからリーファの声が聞こえた。

 なんだよ、今度は。大方段差につまづいたとかそんな程度だろ。


「おーい、大丈夫かー?」


 一応確認しに行ってみると、玄関扉をリーファが両手で押さえていた。


「何してんだ?」

「ちょ、ちょっと、手伝って!」


 押さえるのを? 別にいいけど――。


 ドンッ!


「うわっ、なんだ!?」

「くう……、早くジンタ」


 尋常じゃないってことだけはわかったから、おれも一緒に押さえた。


「何だよ今の音! ビックリハウスでしたってオチじゃねーだろうな!?」

「ある意味そうかもっ」


 ドンッ!


 うわっ。外から何かのすげー力が……。


「たぶん、魔物か獣か何かが入ろうとしてるのよっ! ジンタ、早くやっつけて!」

「やっつけてって……」


 仕方ないな……。扉から外に出た瞬間。


「ガァアアアアアォオオオオオオオオ――ッ!!」


 ビリビリって空気が震えるのがわかった。

 すっげーおっかないやつがいそう……。


 ゆっくり振り返ると、熊のふた回りは大きいトカゲがいた。


 ……でも、翼が生えてんだよな、背中に……。

 真っ赤な瞳に、朱色の鱗、地面にぶっ刺さってる太い爪。


 ステータスをちょいと確認。


――――――――――

種族:火竜(幼少)

Lv:16

HP:3000/3000

MP:260/260

力 :310

知力:140

耐久:350

素早さ:170

運 :21


【スキル】

咆哮(自分よりレベルの低い魔物をひるませる)

ブレス(竜種特有の放射攻撃。属性は炎)

――――――――――


 竜って、あのドラゴンのこと?


 しかも幼少ってなんだよ!?

 このサイズで!? 既に十分立派なんですけど!?


 何でこんなところにいるのかとか、そんなの今はどうでもいい。

 お子様ドラゴン(らしい。おれは全然認めてないけど)に黙って食われるワケにはいかないんだ。


 魔焔剣を抜いてスキルを発動させる。


「【灰燼】!」


 一気に黒焔が刀身を包む。


「やるっていうなら、容赦しねえぞ?」


 魔焔剣を軽く振って、構えた。

 おれも無駄な戦いはしたくないし、ドラゴンってカッケーし、殺したりなんてしたくない。一応子供らしいし。


 すると。


 おれの剣を見るなり、ドラゴンは顎を地面につけて、翼をパタパタと動かした。


 え。なに。何のポーズこれ。


「がぁあ」


 いや、がぁあって言われても、竜語はわからんが……。

 でも、さっきみたいに殺気立ってないし……、どうしたんだろ。


 ギョロついていた瞳もどこか穏やかになっているような……。

 あの書斎に、「竜のきもち」みたいなマニュアル本がありゃいいんだけど。


「ジンター? もうやられちゃったー?」

「やられちゃった、て訊くのおかしいだろ。無事を確認してくれよ」


「なんか静かだけど?」

「見てみるか? おれもよくわからないんだ」


 ガチャっと中から鍵をあけてリーファが出てくる。


「わっ、火竜の子供じゃないっ! しかも――手なずけたの?」


「……手なずけた??」



次回は17時頃更新ですー!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ