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3話


 店の入り口までやってくる。入口脇に景品の一覧表が貼られていた。


 そこには、強そうなアイテムの名前や珍しそうな道具の名前が書かれている。

 これって、あれだよな……ガチャ的な?


「リーファ、1回だけいいか?」

「ダメーっ! 1回1000リンもするのよ!? ダメに決まってるじゃない。良い物が出ることなんてほとんどないんだから」


「ほとんどってことは、出ることもあるんだよな?」

「まあね。まれに、だけど」


 中をちょっとのぞくと、老若男女の姿がある。

 そわそわしていたり、財布の中を確かめたり、祈ったりしている。


 抽選器は、大きめの筐体の中にカプセルが無数に入っている、日本でもよく見かけるガチャガチャだった。


「一回だけ、一回だけだから。な?」

「もう……じゃあ、一回だけだからね?」


 店内に入って順番待ちをする。

 三つある抽選器の前でそれぞれの人が受付のお姉さんにお金を渡して、ガチャを回している。


「アンタ、もうやめて! それは今月の生活費――」


 甲高い声にそっちに目をやると、30過ぎくらいの女の人が涙ながらに男の人に訴えていた。


「るせぇえッ! あと一回だ、あと一回まわしゃ絶対出るんだ!」


 壮絶なやりとりを見ながらも受け付けのお姉さんはニコニコしている。


 お金をお姉さんに渡した旦那さんは、ハンドルを回す。回す回す回す――


 計33個のカプセルを出した旦那さん。

 最後のカプセルの中身を確認して「orz」態勢でうなだれた。

 隣の奥さんもおいおい泣いている。


「ガチャってのは、どの世界でも怖いもんだな……」


 ガチャ沼を目の当たりにした気がした。

 もうちょいでおれの番だ。なんか、キンチョーする……。


 ガッツポーズする人がいたり、「orz」したり、放心状態になる人が続出している。

 そんな阿鼻叫喚のガチャ屋。


 ついに、おれの番が回ってきた。

 アイテムボックスから財布を取りだして、1000リン札を抜き取って渡す。


「お願いします」

「1万リンで11回まわすことができますが、よろしいですか?」


 と、お姉さんが確認してくる。

 どうしよ、1万リン渡しちゃおうかな……。


 気配を感じて後ろを振り返ればリーファがガルルルルと唸っていた。


「約束したでしょー! 一回だけだって」


 これから何が起こるかわからないし、今日のところは無駄遣いは避けとくか。


 おれは1000リンを渡して、ガチャのハンドルを掴んだ。


「どうぞ」

「……よしっ!」


 ぐりぐり、と時計周りに回す。

 コトン――、カプセルが落ちた。


 生唾を飲んでカプセルを開くと、中には虹色の石が入っていた。


 何コレ。何等賞?


「「「「おおお――っ!?」」」」


 ガチャ屋中がどよめいた。


「え、何、何? どうしたんです……?」

「あんちゃん、やったな……!」


 肩をポンと叩かれて見れば、さっきの旦那さんがいた。


「やった? 何をやったんですか? ていうか、おれ何かやらかした……?」


 旦那さんが親指でクイッと指差した先には、景品一覧がある。

 虹色……虹色……あれ、一番上?


 虹色石:特賞 魔焔剣(レーヴァテイン)


 お――ぉおおおおおおおお!?


 やった! なんかすごそうな剣が当たったっぽい!!


 店内からは、特賞を当てたおれへ羨望と嫉妬まじりの視線が飛んでくる。


 ――ふっ。ふはははははは!

 君ら、いくら使ったの? ねえねえ?


 特賞欲しさに、いくら突っ込んだの?

 教えて欲しいなあー参考までに。


 おれ、一発で、しかも最低額で当てちゃったしわかんねーわー。

 いくら使うんだろーフツー。

 やっべー。わっかんねー。


 外ではリーファが期待顔で小さく跳ねている。


「なになに? 何か当たったのーっ!?」

「特賞らしい!」

「ウソ! すごい!! ジンタすごいじゃん!!」


「チッ」


 音源は、ニコニコしている受付のお姉さん。

 あれ。今、舌打ちしましたよね?


「お客様、どうぞこちらへ。景品をお渡しいたします」


 先を歩くお姉さんについて行って、奥の部屋へ入った。

 事務室っぽいところで、お姉さんが黒塗りのケースから剣を取りだした。


「装備するもよし、売るもよし、しかるべき人に譲渡するもよし、です」


 赤黒い鞘に包まれた剣を受け取った。

 剣の柄を握るだけで、体が火照ってくるような気がする。


「ありがとうございます。大事にします」

「……以降のトラブルなどは、こちら【アイテム賭場】は一切関与いたしませんので、ご了承ください」


「トラブル?」

「ええ。当てた景品が盗難にあったりすることもありますので。特に今回は狙っている方も多かったですし、ガチャ後を狙う賊も多いです。お気をつけください」


 力づくで奪いにくる輩がいるって……?


――――――――――――――――

種族:人間

名前:風見仁太

Lv:1

HP:12/4012

精神:7/3007

力 :2009

知力:1506

耐久:5

素早さ:6

運 :999999

――――――――――――――――


 フ、返り討ちにしてくれるわ。どこからでもかかってきたまえ。


 魔焔剣のおかげで、かなりステータスが向上している。

 どんだけ凄い剣なんだよ。


「出口はこちらです」


 お姉さんの案内に従って、おれはガチャ屋の地下通路から外へ出た。

 遠回りするのは、ガチャ屋の表の出入り口から出たらトラブルの元になるからだそうだ。


 まだガチャ屋にいるリーファと合流して、ぶらぶら町を歩く。


「ジンタ。どうするのソレ。売ったらすっごい額になるわよ。億はすると思う」


――――――――――――――――

【SSSR 魔焔剣(レーヴァテイン)

魔神をも焼き殺したという逸話の残る魔剣の一本。


HP +4000

MP +3000

力 +2000

知力 +1500


スキル

黒焔(ダークフィラメント)】1/10 消費MP-

(失われた古代魔法の一種。超長距離から放てる極焔の魔法。MP消費量に応じて威力増大)


灰燼(アッシュ)】1/10 消費MP毎分150

(焔を剣にまとい攻撃力をあげる)

――――――――――――――――


 売ったら億、なんて言われてグラグラ揺れる。

 けど、そんなもったいないことしない。


「おれのモンだから、使いこなすに決まってるだろ」

「ジンタに使いこなせるかしら……?」

「そんなに難しいの? この剣」


「それ――大昔勇者が使ってた、すっごく有名な剣だから。そのあとは、使えなくて転売ってケースがほとんどなのよ」


「ゆ、勇者の剣――?」

「うん。どうせ使えないんだから売っちゃえばいいのに」

「まだ使えないって決まったわけじゃないだろ」


 あとで試しに行って、それで使えなかったら……剣をどうするかはそのときに考えよう。


「ステータス見たら【SSSR】ってついてたんだけど」

「えっとね、それは一番レアって意味よ」


 リーファいわく、

 【SSSR】【SSR】【SR】【R】【N】


 こんなふうにアイテムにランクがあるらしい。


「スマホゲームみたいだな」

「わかりやすくていいでしょ?」

「うん」


「普段目にするのは【R】がせいぜいで、【SSSR】は超レアなのよ? Sの数で、トリプル、ダブル、シングルって呼ぶの」

「へえ超レア……。1/10っていう数値が見えるんだけど?」


「ああ、スキル習熟度のことね。MAXまでいけば、その武器を装備せずにそのスキルが使えるの」

「なるほど。そういうことか」


 町を歩き手頃な宿屋を見つけ、おれたちはそこに宿泊することにした。


明日は17時更新予定です!

よろしくお願いしますー!

あ。あと、メリークリスマス!

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