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労働

作者: ルスト

 労働とは、我々労働者が、企業に対して己の時間を売ってお金を得る商売である。と、私は考える。

 我々労働者が、企業、すなわち会社に対し、会社での仕事を行うために己の時間を売り払い、その対価として会社から給料と言う名の代金を得るのだ。

 労働契約とはすなわち「貴方に私の時間を売りますので、その分のお金を払ってくださいね」という契約であり、面接とは会社が「どの労働者から時間を買い取って代金を支払うかを決めるための場」なのである。

 面接の場で我々が会社にアピールするのは、商品を作った会社が消費者に対して売り込みを行うのと何一つ変わらない。

 単に会社が買い手で我々が「時間」という商品を売り込んでいるだけなのだ。


 しかし、この商売はなかなか上手くいく物ではない。

 我々消費者があからさまに不要と分かりきっている物を買ったりすることがまず無いのと同じように、この場合の消費者――――すなわち会社も、不要と判断した相手をわざわざ購入したりはしない。

 面接で落とされているのは「貴方の時間など我々は必要とはしていません」と言われているのと同じであり、ここで何を言おうとこの結果が覆ることは無い。

 何故なら、我々が要らない物を買わないのと同じように、会社もまた、要らない物をわざわざ買ったりしないからである。


 ここまでで終わるのなら単に貴方の時間が売れなかった――――つまり、時間をお金に変えられなかっただけで終わってしまうのだが、そうはいかないのが労働の厄介なところである。

 我々が社会で生きていくうえで絶対に必要な物としてお金の存在があり、お金を持たない者には食事を摂る権利すら与えられないのがこの社会のルールの一つである(刑務所の中などの例外の話はここでは除外させていただきます)のだが、このお金を得る唯一の手段こそが労働なのだ。

 我々は、時間を売ってお金を得なければ物一つ手に入れることは出来ないのである。


 しかし、先ほど言った通り、消費者は不要な物など買わないのだ。

 会社もまた、不要な人間の時間など買おうともしないしそもそも必要としていない。

 そして、時間を買ってもらえない、すなわち、働き口の無い人間にはお金が入らないのだ。

 少し考えたら分かるだろうが、なんとまあ理不尽な事だろうか。

 時間を買ってもらって仕事に就けないとお金が入ってこないのにも関わらず、その時間を買ってもらえないのだ。

 どのような理由で不要と判断されたのかなど我々は知る由もないが、いずれにしろ時間を買ってもらえない=お金が入らない、であることには何ら変わりない。


 労働は義務であり権利であるなどと憲法では書かれているのだが、その現実はこんなのである。

 消費者が不要と判断した商品同様、会社に不要と判断された人間もまた、売れ残って赤字を出してしまうのだ。

 何故赤字が出るのか? と思ってしまう人もいるだろう。こう考えてほしい。

 時間を売ることが出来なければお金が得られないのは当然だが、商品に保管料や開発費がかかるように、我々人間にも品質保証のための費用が常にかかり続けるのだ。

 食事を抜いて生きられるか? 散髪にも行かずにぼさぼさの頭と伸び放題の髭面で面接に臨めるか?

 そう言う事である。


 最後にもう一度言わせていただくが、労働は商売である。

 我々労働者が、己の時間を企業に買わせ、時間と引き換えに対価を得るのだ。

 隣に並ぶ他の面接者と言ういくつものライバル商品を蹴落とし、会社と言う名の消費者に己の時間を買わせなければいけない。

 それが、労働に対する私の考えである。

拝見していただき、ありがとうございます。

労働とは我々が会社に時間を売る商売ではないのか、と思った事からこんな考えが浮かびました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白いと思うのですが、もう少し踏み込んで書いて欲しいなとも思いました。 御指摘内容は労働力を売り込む段階(面接)において雇用者(消費者)と労働者(生産者)の関係に特化しています。 それはそれ…
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