先生、事件発生です
エンシャント学園にはいくつかの派閥が存在している。それは学生達の間のみで効力を発揮する。
最も権力を持つのが、女子であればクイーン・ビー、二番目にサイド・キックス、そして三番目にワナビー、最も弱いのがブレインという、いわゆるガリ勉やオタクと呼ばれる部類で、それらとは別にワンダーという、通称不思議系少女達が所属する派閥が存在している。男子達にも恐らくそれなりのカースト制度が存在しているのだろうが、物語には無関係なので、ここでは説明を省く。
「さあ、行くわよ」
「何処にだよ。もう消灯時間だぜ。戻ろうよ」
「何よパメラ。出会いが欲しくないの?」
「欲しいけどよ。分かってないと思うけど、エンシャント学園には派閥があるんだ。この学校で派閥に所属していないってことは、死活問題なんだよ」
「だから何よ。あんた達の派閥は?」
アカリの言葉にミルとパメラは言葉をつぐんでしまった。
「どうしたのよ?」
「入ってないんだよ。あたし達は」
「そうなの、派閥って人間関係が大変そうだから」
「じゃあ、死活問題ってどういうこと?」
「良いか、落ち着いて聞けよ。派閥に入っていないということは、いざという時に守ってくれる後ろ盾がいないということなんだ。つまり、あたし達は目立っちゃいけないんだよ。目立たずに学校生活を終えるしか道は残されていない。それを、こんなところで、他の派閥に見られたら大変だ」
アカリはパメラの必死な様子を見て、フッと鼻で笑った。
「お前なあ、あたしがせっかく忠告してやっているのに」
「何よビビっちゃって。せっかくの学校生活よ。皆と友達にならずして、学校生活って言える?」
「友達とかアホかよ。あいつらはあたしらを見下してんだよ。誰が友達になんてなるものか」
パメラはベッドの上に腰掛けると、そのまま寝転がってしまった。まるで話しても無駄だと体で表現しているように見える。
「さあて、寝よ寝よ。あたしら底辺は早寝だけが取り柄でしょ」
「嫌な言い方ね」
パメラ達がさっさと寝てしまおうとしているその時だった。
「ん・・・・?」
突然、遠くの方でガシャンと何かが割れるような音が聞こえて来た。それは明らかにガラスの音である。
「ちょっと聞こえた?」
「ああ、きっと派閥同士で喧嘩でもしてんじゃねえの?」
「喧嘩のレベルじゃないわ」
アカリは立ち上がると、そのまま廊下を出て、音の聞こえて来た方向に走って行った。すでに廊下には明かりが付けられており、パジャマ姿の生徒達が集まっていた。見ると、確かに窓ガラスが割れており、これが只事でないことを証明していた。
「ちょっと何よこれ」
アカリは人の群れを押し分けて、最前列に来ると、そのまま割れた窓ガラスから外を覗こうとした。
「おい、見るな」
隣にいたジンによって、アカリの眼が塞がれた。よほど、衝撃的な光景がそこには広がっているのだろう。教師達が集まって来ると、あっという間に生徒達を部屋に追い返してしまった。
「先生、これは一体・・・・」
「アカリか。ああ、クレイジーな事件が起きたぜ。うちの生徒が窓ガラスを突き破って、下まで落ちて行った。顔面は落ちた衝撃で潰れていて、すぐに身元が分かるような状況じゃないな」
「自殺とか?」
「自殺だったら、こんな中途半端な場所でしないだろ。校舎の屋上から飛び降りるのが普通だ。わざわざ窓ガラスを割って外に出るなんて、明らかに他殺だ」
ジンはそう言い切ると、ハッと我に返り、アカリも部屋に連れて行った。