ギースの遺品
ジンと人影は向き合っていたが、暗がりのせいで相手の顔が全く分からなかった。
「・・・・」
ジンは一歩前に出ると、拳を突き出して、人影に掴み掛ろうとした。しかし、それよりも速く人影の体が一瞬消えた。そして、ジンから2メートルほど先に再び現れると、ポケットからメモ帳のようなものを取り出して、眼を通していた。
「何だ?」
ジンはメモ帳から嫌なものを感じた。それは悪寒や殺気といった目に見えないものだが、彼の長年の経験から言って、メモ帳には何かの細工があると考えられた。
「くくく、あはははは。流石に勘が良いわね」
人影は口に手を当てて笑うと、もう姿を隠す必要は無いとばかりに、暗がりから姿を現した。それは女性であり、年齢的には30代前後といったところだった。
「このメモ帳こそが、私の能力。その名もコレクター。死んだ人間の超能力を奪い取り、このメモ帳の中に文字として保管できる。保管した能力はいつでも引き出せるの」
「ふん、模型だけの下衆な能力だ」
「それはどうかしらね。今使ったの能力は、ある内気な少年が持っていた能力、マインドロード。相手との心の距離の分だけ、実際に相手との立っている距離を離す能力。マインドロードを発動している限り、私を捕まえることはできない」
女はニヤニヤと下卑た笑みを浮かべると、メモ帳をペラッと捲った。次の攻撃が来る。ジンは深く腰を落として警戒した。
「おほほほ、私の目的は一つ。あなたへの復讐もあるけれど、今は、この学園に保管しておいた。ギース様の遺品を取りに行くことが先よ」
女が床に手を置くと、そこに黒い大きな穴が出現した。
「さようなら。次に会う時は、あなたが死ぬ時よ」
女は黒い穴の中に入り消えてしまった。
女は何処に消えたのか。女は学校の地下にある倉庫にいた。彼女はこの学校の中にギースの遺品をずっと保管していたのだ。そして今、女は埃に塗れた箱の中から、一個の黒い壺を発見し、それを大切そうに頬に摺り寄せた。
「うふふふ、ついにギース様がわが手の中に」
女はそのまま壺を小脇に、何処かに消えてしまった。彼女の行方を知る者はいない。そして次の日、女は例の儀式に取り掛かるべく、学校の中庭にいた。




