恐るべき暗躍
アカリ達がトランプを楽しんでいた頃、ジンは図書室にいた。何かの書籍を探しているらしく、懸命に棚を見て回っている。そこに、人影が一つ、彼の背後に立った。
「ちっ、また刺客か。俺に用か?」
「うふふ、ジン、私はあなたを殺さねばならない。あの方を私から奪った罰として」
「あの方だと?」
「しらばっくれても無駄よ。私の心の支えであるギース様の命を奪った」
「またあいつか、いい加減にして欲しいね。最近、不穏な空気が町中を包んでいるが、テメー、何か企んでるな?」
ジンの言葉に人影は答えなかった。代わりにジンの元にゆっくりと接近した。
「あの方の復活まで、あと一週間は掛かる。それまでに貴様を殺して、ギース様から褒めて頂く」
「お前よお、ギースに何の義理があるんだ?」
「教えてあげるわ。私とギース様の関係を」
人影はゆっくりと口を開いた。
今から数十年前、ギース・ブラッドと言う邪悪な男が永い眠りから覚め、全宇宙に恐怖と混沌をもたらしていた。七つの聖剣を、それぞれ異なる世界に突き刺し、聖剣の力で世界を腐食させる。そんな彼だったが、常人には理解し難いセンスも同時に持ち合わせていた。
ギースは見えない運命を畏れた。邪悪な人間に滅びなかったためしはない。これはこの世界に伝わる諺である。事実、古来から魔王と呼ばれる存在は必ず滅ぼされてきた。彼はそれを知っていたのか、そういう運命という存在を異様に警戒し、ある事業を行った。
それは孤児院の設立である。グリニカ孤児院という、身寄りの無い子供や乳児を引き取って、人並みの生活を送らせ、個々の才能を磨いていく。ギースは多額の金を使って、世界一の規模を誇るであろう孤児院を建てると、実際に親のいない子供を集めて、そこで部下に育てさせた。子供達は皆、芸術家や博士になっていったという。彼がどうして、こんな慈善に手を染めたのか、彼のいない今、詳しく追及することは不可能であるが、恐らく、彼は悪いことと良いことを同時に行うことによって、悪業とも呼べる、自分に降りかかる天罰と言ったマイナス要因を、ゼロに帳消しにしたかったのだと思われる。
「私はグリニカ孤児院に引き取られた子供の一人、私を拾ってくれたあの方に恩返しするため、お前を倒す」
「ち、上等だ」
ジンと人影は真っ直ぐ対峙した。




