表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/22

裏切りは蜜の味

 マインの能力によって、校舎に飛ばされたアカリは頭を押さえたまま、低い声で唸っていた。そしてそのまま廊下に入ると、正面からミルと、もう一人の見覚えの無い男子生徒が近付いて来た。


「あ、アカリちゃん・・・・」

 ミルはバツの悪そうな顔をしている。どうやら彼氏と過ごしているところを、アカリに見られて、困惑しているようだった。

「ちょっと、ミル、嘘でしょ?」

 アカリとしては信じたくなかった。ミルは三人の中で一番色気が無くて、モテるはずがないと信じていたからだ。しかし、アカリが傷付いたのは、それだけではない。


「あ、あの・・・・」

 男子生徒はか細い声で、ミルとアカリを交互に見比べていた。変声期前の少女のような声だった。その男子生徒は、年齢で言えば14歳前後で、少女のような可憐な容姿に、白く透き通るような肌をしていた。体付きは華奢で、その上、鼻筋は通っており、瞳もパッチリ大きい。美少年という言葉があるとすれば、それは正しく、彼のために使うべき言葉であろうと、アカリは勝手に納得した。


「うぐう」

 アカリは喉の奥から信じられいないような低温の声を出した。アカリの好みのタイプは、体育系などの男々したタイプとは真逆の、中性的でほっそりとした、少女のような少年だった。それだけに、ミルの今回の所業には、人一倍腹が立っていた。そこに丁度、間が悪いことに、パメラが通り掛かったのだ。


 パメラはアカリ達を発見すると、鬼のような形相で、男子生徒もろとも、ミルを自分達の暮らしている女子寮の一室に連れ込んで、半ば監禁しているかのように、ドアの鍵を掛けた。


「さあてね。早速だけど、裏切り者のミルちゃんには、色々と聞きたいことがあるんだよな~」

 パメラは笑顔を浮かべていたが、その瞳に笑みは無かった。アカリはこの世界に来てから日が浅いが、パメラの方は、生まれも育ちもこの世界で、ミルとの付き合いも、アカリよりずっと長いことだろう。

「派閥のクイン・ビーならまだしも、まさか地味グループ筆頭のあんたが、あたしらより先に男作るとはね。それも弱そうな、まるで女みたいな男ね。絶対インポでしょ?」


 畳みかけるようなパメラの暴言にミルは眼を塞いだ。友人ですらこんな調子なのだから、その男子生徒も、青い顔をして、小さく震えていた。


「君さ、あたしらよりも年下だよね。名前は?」

「あ、僕はトトと申します」

「へえ、トトちゃんね~」

 パメラは嫌らしい顔つきで、トトを見た。彼はぎょっとして、突然立ち上がると、そのまま彼女かに背中を向けた。


「ぼ、僕はこれで失礼します」

「ちょっと、待ちなさいよ。まだ話は・・・・」

 言い終えるよりも早く、トトは部屋から出て行ってしまった。後に残されたのは、ミルの鳴き声と、パメラの罵声だけだった。



 その日の夜、大半の生徒が寝静まっていた時間帯に、怪しげな人影が三つ、中庭に集まって屯していた。


「マイン、トト・・・・」

「はっ・・・・」

 人影の内、二つはマインとトトだった。二人は膝を折ると、噴水の所に腰掛けている人影に頭を垂れた。人影は体付きからして女性であり、スラリと伸びた脚を組んで、二人を見下ろしていた。


「手筈通りに進行しているわね。二人とも、あの三人を見張っていなさい。パメラ、ミル、そしてアカリ。うふふ、ジンに味方するであろう愚かなる仔羊達には、もう少しだけ眠っていてもらわないとね」

「どうするのですか?」

 トトが首を傾げた。

「奴らと仲良くするのよ。マインが余計なことをしてくれたせいで、すっかりアカリはマインを敵視しているようだけどね。これからは彼女らと仲良くなり、信頼を勝ち取るのよ。私の目的は彼女らの排除ではない。しかし、あの運命の日が訪れるまでは、少なくとも、彼女らに余計な動きはしてもらいたくない」

 人影はそれだけ告げると、そのまま暗がりに消えて行った。この学園を中心に、何かが起ころうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ