中庭でドッジボール
昼休み、学生達にとっては最大の憩いの時間であると言える。花より団子、色気より食い気のアカリ達は、中庭でボールを投げ合っていた。明確なルールがあるわけでもなく、ただじゃれていたのである。
「あ~あ、良い出会い無いかなぁ?」
パメラは指先で赤いボールをクルクル回しながら、空を見ていた。それを横から、アカリが奪い取る。
「早く投げてよね」
「いやさ、あたし思うの。こんなことしてたら、余計に男から遠ざかるって」
「あんたは呑気で良いわね」
アカリからしたら、馴れない異世界で、元の世界に帰りたいと言うのに。
「ちょっと、そこの、一緒にドッジボールしない?」
突然、体操服姿のスラリとした長い脚をした、見慣れない女子生徒が、アカリに話し掛けて来た。
「別に良いけど」
「やったぁ、じゃあ決まりね」
その女子生徒は、突然、アカリの頬にチュッとキスをした。瞬間、アカリの顔が青ざめる。
「ちょっとおお、そういうのが目当てなわけ。さっさとどっかに行ってよ」
アカリはしっしっと手で女子生徒を振り払った。すると、女子生徒はニヤリと不気味に笑みを浮かべた。
「ほら、行くわよ」
女子生徒はボールをアカリから奪うと、それを検討違いの場所に投げた。
「うえーい、下手くそ」
パメラが囃し立てる。しかし、そこで不思議なことが起こった。女子生徒の投げたボールは、突然、空中で止まると、そのままアカリの右頬に激突した。
「うげえ」
アカリは色気の無い悲鳴を上げながら、顔を押さえた。そして女子生徒を睨み付けた。
「このクソビッチが」
ボールを八つ当たり気味に地面に投げ付けて、バウンドさせると、そのまま女子生徒に背中を向けて帰ろうとした。
「ねえ、続きしよーよ」
女子生徒はボールを拾うと、アカリの背中に向かって大声で呼び止めた。しかし、彼女はそれを無視して、さっさと教室に向かって歩いていた。
「おい、アカリ、あの女おかしいよ。頭の方がね」
「ええ、謝りもしないわ。その上やる気満々で怖いし、相手にしないでおきましょ」
アカリとパメラがこそこそと話していると、女子生徒は再びボールをアカリ目掛けて投げた。
「アカリ、危ない」
「分かってるわ」
アカリは両手でボールをキャッチしようとしたが、ボールは彼女の手元を掻い潜って、彼女の顔面にまたもぶつかった。




