透明人間が来るその2
アカリ達が掃除をしていると、そこに、制服をきちんと着こなした、香水臭い女子達が、真っ直ぐ列を成して、中庭を歩いていた。
「何か嫌な感じね。私モテますオーラ全開で」
「止めとけよアカリ、あいつらは派閥のトップに君臨する、クイン・ビーだ。この学園では、男もファッションも彼女らに勝てる奴はいねーよ」
パメラはぶっきらぼうに言いながら、箒で落ち葉を掃いていた。
三人で固まりながら、何だかんだ言っても気になるクイン・ビーの動向を伺っていると、その中の一人が、体育倉庫に吸い込まれるようにして、入って行くのを発見した。
「ちょっと、次の時間、体育かしら」
「馬鹿だな。もう授業中だよ。あいつらはいつもサボるの」
「でも、今、倉庫に入って行ったよ」
「ふふん、あれは男だな。男を連れ込んでヤル気だ」
パメラは顎に手を当て、得意気に鼻を鳴らした。
「少し気になるね」
「覗いちゃおうぜ、仲間達はもう校舎に戻っちまったみたいだし」
「二人とも止めなよ 」
「良い子ぶっちゃって。本当は自分も見たいくせに」
パメラはミルの額を叩くと、アカリを連れて、体育倉庫の扉を少しだけ開けて、忍者のように張り付いた。
「どれどれ、うお、凄いわ。仰向けになってる」
「というか男いなくない?」
「いねーな。つうかさ、女の方、ピクリとも動かないぜ」
「ちょっと待って、死んでるわ」
「え、死姦?」
「違うわよ。本当に死んでるのよ」
パメラは倉庫の中に入ると、突然、血相を変えてアカリを見た。
「どしたの?」
「ひ、人が死んでる」
「だから言ってるでしょ。早く先生に知らせなきゃ」
「違う。さらに二人あるんだ。死体が」
「ちょっと、パメラ危ない」
パメラの背後に鉄の棒が浮いていた。そして真っ直ぐに彼女の背中を殴り付けた。
「あう・・・・」
パメラはうつ伏せに倒れると、そのまま気を失ってしまった。
「誰よあなた」
アカリは倉庫の中に入ると、倒れているパメラを抱き抱えて倉庫から出た。すると、鉄棒が再び宙に浮いて、アカリに向かって来た。
「シンデレラ」
アカリの服がボンデージ風のドレスに変形した。彼女は鉄棒に向かって蹴りを入れると、鉄棒とは違う何かに当たった。それは人肌のようにも感じられた。
「だ、誰かいる・・・・」
「痛てて、クソが、俺の存在に勘付きやがったか」
声はするけど姿は見えず、アカリの正面から男性と思わしき声が聞こえて来た。
「まさか幽霊?」
「幽霊なものか。俺はこの学校の生徒だったんだよ。でもある日、自分の体が透明になっていることに気が付いた。俺の脳に眠る才能だ。最初は楽しかったぜ。女湯覗いたり、万引きしたりよ。だけど、流石に人から無視され続けるというのは辛いな。今じゃ、八つ当たりでここに来る人間を無差別に殺してストレス解消しているわけだぜ」
「最低ね」
「言ってろ。どうせ誰にも俺の姿は見えないんだ」
男は鉄棒を持ち上げると、アカリの元に近付いて来た。最も彼は透明なので、アカリからすれば鉄棒がフワフワと浮いているようにしか見えない。




