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列車の旅の行く末シリーズ

列車の旅の行く末(社会人編)

作者: 樫原 せりな

時間とお金があったら列車のブラリ旅に出たいという気持ちから書きました。

※実際このような(ミスで泊まれないからと相部屋にすること)はありませんのであしからず・・・

「予約が入っていない?」

部屋に案内され売店をウロウロしているとフロントの方から冷ややかな男の声が聞こえた。

「申し訳ございません。ご予約を依頼されていた旅行会社に連絡を取りましたところこちらに予約通知が流れていなかったようで・・・」

旅館の人も申し訳なさそうに対応していた。

なんだ、手配したお店がミスしたのか・・・

一体、どこの会社よ。

他人事のように耳を澄ましていた。

次の瞬間、旅行会社の名前を聞くまでは・・・


「そんなことどうでもいい。とりあえず、どこでもいいから部屋を用意してくれ。」

「あの・・・それが本日はこの地区は込み合っていましてどこも満室でして・・・」

まさか、うちの会社名をこんな形で聞くことになるとは・・

しかし、施設の人も他に言い方ないのかな。

ったく、しゃーないなぁ~

「一間なら空いてますけど?」

後ろから、驚かさないようにその人に声を掛けた。

私が泊まっている部屋は和洋室で部屋が一つ空いているといっても仕方がない。

元々、6人部屋の離れなのだから・・・


ハッとこちらを振り向いた男性

「「あっ・・・」」

二人声を出したのは、ほとんど同じだったと思う。


「延岡 悠月です」

部屋に招き入れるなり名乗り右手を差し出した彼

「川内 柚衣です・・・・よく、会いますね。」

自分で起こした行動のくせに何を言えばいいのかわからず笑顔で微笑み言った・・・つもりだった。


「プッ・・・そんなに構えなくても大丈夫ですよ。って、見知らぬ誰かに言われても信用ないですね。とりあえず、部屋を与えてくれた恩を仇で返すようなことはしませんから。」

吹き出し、しまいには笑いだした彼

「しかし、本当によく会いますね。最初はどこでしたっけ?」

私は今日の出来事を思い出し、最初に彼に会った場所を考えた。


「海・・・フラッと降りたから駅名わかんないけど、改札でたら海が広がっていた。正面から延岡さんが駅に向かって歩いてきた・・」

私の言葉に、あーぁそういえばと反応する彼

「そこでも会ってんのか・・・悠月でいいよ。俺はてっきり神社かと思った。お参りしていたよな?」

確かにお参りしてた・・・

いろんなことを吹っ切るために・・・

「わぁ~、きれい・・・」

夕食まで時間があり、散歩でもしようと言ってきたのは彼だった。

一人でブラブラするのもいいが今は何となく一人になりたくなかったのですぐにOKした。


「紅葉か・・・久しぶりだな」

悠月がそう呟いたが、私の耳には入っていなかった。

「柚衣、具合でも悪いのか?」

紅葉に見入ったまま黙り込んだ私

「ううん・・・本当はね、ここへは二人で来る予定だったの。」

なぜか悠月に話したくなった。

「なんだ、フラれたのか?」

さらりっとさっきまでとかわらない様子で言った彼

「違いますぅ~私がふったのっ!!」

彼とは学生時代からの付き合いだった。

優しい人でいつも私のことを第一で考えてくれた。

そんな私たちの歯車が狂ったのはつい最近のことだった。


「もどかしいったらありゃしない・・・お互いに惹かれあってんのバレバレなんだもん。親友は彼と一緒なら絶対に会わないし、彼は彼で、私に触れなくなった。二人ともさ、私に遠慮してさ・・・だから、この旅行を計画して・・・・彼にサヨナラして駅に置いてきちゃった。ふふっ・・・バカだよね。彼とそのまま結婚しちゃえばハッピーエンドだったのに・・・」

涙がどんどん溢れ出てくる・・・

「二人は絶対に私を裏切ったりしないことわかってた・・・

私・・・彼のこと大好きだったけど、彼女のことも大好きなの・・・」


ギュッ

「えらかったな。柚衣は、えらかった。もう、楽になっていいよ。」

抱き締め、そう言いながら頭を撫でてくれる悠月

その言葉で私は糸が切れたかのように彼にしがみつき声が枯れるくらい泣いた。

ゆうに30分は泣いただろう。

その間、悠月は黙ったままただ抱き締めていてくれた。


「そろそろ夕食の時間だな。戻ろう」

泣き止んだ私を彼の腕から解放され、なんだか淋しい気持ちになった。

が、さっきまで抱き締めてくれていた手で持て余していた私の手を捕らえ歩きだした。

そのことに気が付いた私は淋しいと思っていた気持ちをすぐに頭の端へと追いやった。


「あの・・・隣で眠ってもいい?」

自分の部屋にあったまくらを抱え悠月の部屋に入った。

「・・・おいで。」

驚きを隠せない悠月だったが、私の顔を見て不安がっていることに気が付いてくれたか体を布団の端に寄せ、空いたスペースをポンポンと叩き、手を伸ばしてくれた。

私は彼の手を取り潜り込んだ。


「会えたのが悠月でよかった。」

どちらからかなんてわからない

気がついたら私たちは唇を重ね、そして何度も何度も体を重ね合わせた。


「私はもう少しここにいるわ。」

ホームに入ってきた列車に悠月を押し込み笑顔で言った。

彼とはここでお別れ。

後悔なんてしていない。

でも、これ以上悠月に甘えるワケにはいかない・・・


「わかった。楽しかったよ、柚衣」

私の気持ちに気が付いたのか悠月は何も言わなかった。

「私も楽しかった・・・ありがとう。」

そう言ったと同時に私たちの間がドアに遮られてしまった。

サヨナラ、悠月・・・

それから私は、親友に電話した。

彼をよろしくと・・・


あれから、2ヶ月が経っていた。

「川内さん、見た?」

受話器を置いた途端、向かい側に座っている同僚が興奮して言ってきた。

「なにを?」

彼女の言った意味がわからず首を軽く傾げた。

「ほら、海外の支店から新しい課長がくるって話あったじゃない?」

新しい課長・・・そういえば、移動の話が出てたわね。

「なんと、27歳で独身なんですよ。し・か・も、すっごくかっこいいんですっ!!婚約者がいる川内さんには興味ない話だね。」


うわぁ~、若い男正社員か・・・気の毒だなぁ

これからおこるであろう女性陣の群れをどう対処するか見物だわ。

「あっ、私。婚約解消したわよ?言ってなかったけ?」

と、言っても私は興味がないことにはわかりがないけれど・・・

ふっと脳裏に2ヶ月前のことが浮かんだ。


どこの誰かすら知らないんだから会いたくてもどうしようもないのにっ!!

ふるふると頭を振り、さっさと次の仕事に取り掛かった私を見て同僚はライバルが減ったことを喜ぶかのように嬉しそうに別の人の所へと言った。


「みんな集まってくれ、今日からここに配属された課長だ。」

部長が応接室から一人の男性をつれてきた。

周りの女性陣は嬉しそうに黄色い声を出ししゃべっていた。

私はというと、ただ茫然と立っていた。

「はじめましてニューヨーク支店より来ました。延岡悠月です、宜しくお願いします。」


◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□

ちょっことだけ彼side


応接室の外からきゃぁきゃぁと黄色い声が響いていた。

「うるさくてすまないね・・・」

向かい側に座っている部長があとできちんと指導しなければと頭のメモに書き加えたのを見届け口を開いた。

「いえ、それは後々ということで。」

はっきりとさっきのようなことは自分がいたらならないようにすると宣言した俺。


女はいつだってうるさい。

それはここだって、ニューヨークの支店であろうとかわらない。

だから、俺は女が嫌いだ。

どの女もすべて一緒だと思っていた・・・あの日までは・・・

俺が初めて惚れた相手。


しかし、彼女とはその場限りで名前は知っているが住んでいるところはおろか、携帯番号すらしらないのだ・・・

この2ヶ月、そのことを何度悔やんだことか・・・

宿に聞いても教えてくれるわけもなく途方に暮れての出社となったのだ。


「じゃ、延岡くんよろしくな。さて、みんなに挨拶しに行こうか」

そういって、部長は席を立った。

俺は、その後ろからついていった。


さぁ、今日から気を引き締めて頑張らなければ・・・

その扉の先に待ち受けていることを知らずに俺は気合をいれた。


2007.9.9に自サイトにてpass小説として掲載したものです。


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