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オラルス王国物語(旧版)  作者: うい まろ
プロローグ
1/5

オラルス内乱

オラルス王国・中原北部、アナプティ渓谷。高山に囲まれた清流の脇をアステル伯爵率いる軍は本隊と右翼側が北側、川を挟んで南側の左翼に200の兵を配置し戦闘を行っていた。


「マーサ!左翼に救援を頼むぞ!」


銀髪で豊かな髭を蓄えた男性アステル伯。本隊と右翼1000の兵が迎え撃ったの敵兵の誘導部隊であった。誘導部隊とはいえ大将がいる本隊。むやみに兵を減らすわけにも行かない。

アステル伯の隣でレイピアより少し幅の広いロングソードを構え、(ウルシ)のような光沢を持つ黒髪をなびかせた軽装の美丈夫がしっかりとうなずき返し、後方に控えた近衛兵が声を上げると鞘から抜剣し自らの部隊に応えたである。


本隊から切り離されている左翼隊は士気が落ち壊滅まで時間の問題であった。そこへ川を越えたわずか100程度の兵が追いついて何の意味があるだろうか。

敵兵の指揮官は侮りを持ってマーサと呼ばれた将の部隊を待ち受けたのである。


「われらを国賊と呼び戦を仕掛けたアステル軍もここまで!この程度の援軍で何ができるか!!」


建国以来3世代続いたオラルス王国は危機に瀕していた。先王オラルス3世没後、王位継承権を持つ3名の王子を貴族がそれぞれに擁立(ヨウリツ)。先王によって抑えられていた派閥争いが表面化したのである。

領地が接する地域では小競り合いが頻発し、領地は荒れ、民草は飢えていった。そして、ついには貴族間の政治闘争から武力を使った内紛へと火が大きくなっていた。

王命を受けて行軍から4日後、王宮から国賊として認められたアグリオス男爵率いる部隊と接触。徐々に追い詰めながらも初戦から7日目。3回目の交戦ではさすがに疲労の色が兵に出始めていた。


「左翼隊よよく耐えた!これよりわれらがマーサ卿率いる部隊が支援する!!」


左翼が今まで引き受けていた敵兵は500。今回の交戦で既に左翼隊は70の兵を失っていた。援軍を含めても倍の兵力。焼け石に水と思われた瞬間、情勢に動きが出た。南の山から150の兵が押し寄せてきたのである。

川を越えた100の兵に目をむけ敵を油断させ、時間差で回りこんだ150の兵が一気に躍り出る。マーサが指示したのはこれだけであった。

一番のポイントは挟撃のタイミング。そのため川を渡る兵は歩兵を多くし、山側へ迂回した部隊を足の速い騎馬隊にしたのである。

挟撃にうろたえたアグリオス軍は四散。勝利したアステル軍の損害は本隊右翼、左翼を含め死者80。重軽傷者が30という結果であった。

国賊掃討後、陣を設置しているアナプティア渓谷周辺は、渓谷という名が示すとおり山岳地帯である。

そのため進行・補給ともに困難な地域であった。当初用意していた10日分の兵糧は既に底をつき、進行線上の集落から戦費を使い食料の調達を行ってはいたがここから先の集落へは単騎最速で5日。歩兵も合わせたこの行軍では兵糧が尽きるのは自明である。


「父上、先日の集落に小隊を駐屯させ本隊は領に戻りましょう。早馬であれば2日で領に知らせが届きます」


「帰りはおそらく敵襲や戦闘もないでしょうから、4日・・・このままいけるでしょう」


マーサの進言にうなずくと、翌朝自領へと転進。アステル軍の第1次国賊討伐戦は勝利と、治安維持としてはまずまずの結果を残し、帰還したのであった。

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