理想の妄想は現実に
泣きたい気分だ。
……目が、目が幸せすぎる!!
「那希ってば、ほら戻ってきて。戻って来ないとみんな連れて帰っちゃうから」
「それだけはやめろー!まだ可愛い少年の事とここに居る理由を聞いてないっ」
そうだそうだまだ聞いてないんだ!二人が先生だって事は、耳かっぽじって兄ちゃんの話聞いてたから分かったけど。
「あ、そういえばそうだね。尚輝、それはオレに話させてくれる?無理言ったのはオレだから」
「分かりました」
奏さま、じゃなくて遊乃先生が私に?無理を?
「無理じゃない」
「ちょ、遊乃先生まだ何も言ってないよ」
「心配するな兄ちゃん。愛で何とかするから!!」
「ふふ、それは心強い。じゃあ那希ちゃんにお願い」
「はいっ」
「とある機械の実験体になってくれないかな?」
「はいっ!…………え?」
実験体って、言ったよな?勢い余って返事しちゃったけど。いやいや機械って、機械って。未知なる内容過ぎないか?さすがイケメンは言うことが違うな!……じゃないだろっ。
「実はオレのいとこが物作りとか好きで、特許もいくつか取ってるんだよね。今回は自分たちの為に作ったみたいなんだけど。使ってみたら見事成功は良いもののいろんな年齢層でも試したいって聞かなくて」
「へぇ……どんな機械なんですか?」
遊乃先生のいとこか。絶対美人だろっ!機械も気になるけどそのいとこさんも気になるな。
「ん、内緒」
「えぇえ……」
そんなおちゃめな所もたまんないっ。
「大丈夫だよ那希。オレも使ってみたら成功したから」
「兄ちゃんも使ったのか?」
「うん。オレだけじゃなくて、先生達も羽恋もね」
ふわふわとした鮮やかな赤色の髪を持つ可愛い少年は羽恋と言うらしい。兄ちゃんに優しく撫でられて少し照れている様子なんかはもう悩殺モン。それに兄ちゃんの本命だって思ったのも間違いない!きっと間違いないぞ。理想のカップリングだっ……!!
「はいそこ、いちゃいちゃすんなよ。そういう事は部屋に連れ込んでからな。それからなら、撫でようがちゅーしようが抱こうが構わない」
「えぇっ?!」
「だってさ。羽恋今日は家帰れないから早めに連絡付けといてね?」
「な、なな、お……!」
兄ちゃんっ!!相変わらずサービス精神が旺盛過ぎるぞ?!那希はそろそろ意識が飛びそうだ。
「こら羽恋をいじめないよ。話もずれちゃったでしょ。那希ちゃん、さっきお願いって言ったけどバイトだと思ってやってくれて良いからね」
「バイト……ですか」
「そう。オレ達は一回試しただけだけど、出来れば何回か試して欲しいんだって。割の良いバイトって事でどうかな?三日に一回のペースで一ヶ月。一回につき五千円だったかな」
って事は、一ヶ月で五万?!
「尚輝にバイトしてるって聞いたんだけど、そっちに支障が出ない程度にで良いからお願いしても良い?」
「そりゃもう!!むしろ大歓迎」
毎月大体五、六万稼いでるから合わせて約十万。素晴らしいじゃないか!
「そっか、良かった。良い返事がもらえたって伝えておくね」
直々に遊乃先生が伝えに来てくれたから、ここに居る訳だな。んで、志摩先生と羽恋ちゃんも仲良しだから付いてきてくれた、と。
兄ちゃんってば、相変わらず着々とハーレムを築いてるんだな。こんな豪華な面々を連れてきてくれるとか。
「で、兄ちゃん。まだ問題は残ってるぞ。羽恋ちゃんとはどんな関係なんだ。え、どうなんだよ。片想いか?友達かクラスメイトって奴か」
がっくがっく揺らしながられっつ尋問。全部吐かしてやるから覚悟しろよ。
「わぁあ言うから言うから!揺らさないでってば」
「よし吐け」
「友達」
「あん?」
「って言って納得する訳無いよね」
「当たり前だろ。さっきからこっちで話してる間にいちゃいちゃしてたくせに。ねぇ羽恋ちゃん、兄ちゃん明らかに鼻の下のびてたもんな」
羽恋ちゃんからかったり、羽恋ちゃんなでなでしたり、羽恋ちゃん照れさせたり、羽恋ちゃんむくれさせたり。
「あ、や……んと」
わぁ照れてる照れてる。可愛いよ可愛いよ、小動物だ!
「かーわいい子捕まえてきたな!!せめて友達以上希望」
まぁクラスメイトって事は無いだろうけど、せめてなぁ?
「恋人」
「あーやっぱり!………………ごめん今何て?」
何だ何だ幻聴か?私の妄想か?いやそんな訳――
「恋人。羽恋はオレの大事な人」
「な、な、尚輝っ!!」
「照れてるの?」
「照れてないっ」
「照れてるでしょ。真っ赤でイチゴみたい」
「照れてないもん!」
羽恋ちゃんは照れながらも否定はしない。先生達は微笑ましそうに見守るだけ。……いやまぁ、志摩先生はにやにやにやにやしてるけど。
って事はマジだ、恋人だーい!
カップリングじゃねぇ、カップルだ。ものほんだ。
「お前らむかつくなー。むかつきついでにどっか出かけるか」
「志摩、前半と後半繋がってないよ」
確かに。
段々この二人の地のキャラが分かってきた。