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第9話「思惑と死」

リューヤ、ついにアルテイル公国に上陸。アレクシーナ、大臣アール・アール、公国の王女それらの思いが様々に交錯する

アレクシーナと一行は盛大な出迎えを受けた後、予定通りアルテイル公国一番の権力を持つ大臣アール・アールとの会談に向かった。

 会談室に通されたのはアレクシーナとリッターとリューヤと通訳の四人だった。アレクシーナに上座の席が用意され、アール・アールはアレクシーナの真向かいに座った。

「我が国へようこそ。アレクシーナ王女様。長旅ご苦労様です。」

 アール・アールは一見慇懃な言葉を使ったが、その目の奥には何か不快な物を潜ませていた。

「慇懃なご挨拶いたみいります。社交辞令から入りたいところですが、お互い忙しい身です。本題に入りましょう。」

「ベータ研究所の件ですかな?」

 アール・アールは間に挟んである机の上のコップを手に取った。

「もちろんそれもありますが・・・・」

 アレクシーナが胸にしまってあった金色の護身銃を抜いてアール・アールに向けた。アール・アールは少し驚いた様子を見せたが、すぐ落ち着いた素振りを見せ、コップを口元へ動かし、静かに言った。

「何のつもりですかな?ここには私の兵士もいる。あまり妙な真似をされると王女様と言えど只ではすみませんぞ。」

 アール・アールの後ろの護衛が今にも動きそうな気配を見せる。

「動くな!」

 アレクシーナはそう言って、アール・アールの脳天に銃口をつきつけた。

「私の国では、王族を襲った者は理由のいかんなく死刑なのを知っておいでか?」

「なんの事かな?」

 アール・アールは落ち着いて言った。リューヤはリッターの方を盗み見たが、動く気配はない。リッターは知っていたのだろうか?

「ベータ研究所を独り占めしようという考えは頂けない・・・あなたは欲をかきすぎた・・・」

「ここに来る前にテロリストに襲われたらしいですが、私はそのような真似はしませんよ・・・リスクが高すぎる・・・」

「それを証明出来ますか?」

「あなたこそ証明出来るのか?証拠も無く一国の大臣を殺せば、あなただって只では済みませんぞ。いや、下手をすれば戦争だ。」

「そういう理由をつければ、自分のやった事は全て誤魔化せると思うのですか?」

「私はやっていない。その引き金は両国の和平を崩すものだぞ。分かってるのか!」

 アール・アールの体がほんの少し震えていた。

「私が撃てばな・・・・・」

 アレクシーナがそう言って銃口を離した瞬間、銃声が聞こえた。

「馬鹿な・・・・貴様ら・・・・」

 アール・アールの背中と胸がみるみる赤く染まる。

「アルテイル家の御命令です。アール・アールは国家をあまりに私的に利用し過ぎると」

 アール・アールの背後に立っていた、アール・アールの護衛だった兵達の一人が静かにそう言った。

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