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第45話「それぞれ」

第一章エピローグ

即位式が終ったアレクシーナは自室に戻り、リッター・フォーンフィールドの到着を待っていた。自らが血を流す思いで掴み取るはずだった女王の位が、リーン・サンドライトのおかげで転がり込んできた。

 その心情は複雑な物だった。例えどれ程憎んでいたにせよ、血を分けた者の死は思いの他重かったし、転がり込んできた地位も思いの他重かった。

 だが、アレクシーナはリーンを恨む気にはなれなかった。王家の都合アレクシーナ自らの都合で、彼女を病院の地下に封印していた。長い閉塞空間の中での、希望の無い毎日。それがどれ程辛いかを考えれば、リーンが「悪魔」に魂を売ったとしてもいたしかたなかったろうと思える。

 アレクシーナは考える。全てはアレクシーナの望んでいた方向へと転がりだした。だが、リーン・サンドライトとリューヤ・アルデベータの犠牲はあまりに大きかった。

 アレクシーナが窓の外を眺めながら様々な思いに捉われていると、突然ノックの音が聞こえた。

「リッターです。」

「入れ」

 アレクシーナはそう言った。

「リッター・フォーンフィールド少佐、ただいま帰還しました。」

「長旅の後、嫌な任務を押し付けてしまったな。」

「いえ・・・・・・」

「それで、リューヤの具合はどうなのだ?」

「取り敢えず、薬は必要なくなりましたが、食事も碌にしない状態です。」

「リューヤにはまだやって貰う事があるのだがな・・・・・・・・」

 アレクシーナは遠くを見詰めるような目で静かに言った。

「彼なら、きっと回復すると思います。時間は掛かるかもしれませんが・・・・・・・」

「分かっている。故郷の日本なら精神の回復もきっと早いだろう。」

「その事ですが、リューヤを日本にお送りになってよろしかったのですか?」

「日本でなければならんのだ。」

「はあ・・・・」

「貴重なβ能力者を失ったのだ。紫炎との繋がりは大切にせねばなるまい。」

「は!」

「リッター少佐。これから大変だと思うが、宜しく頼む。今日はもう休んでくれ。」

「は!もったいなきお言葉。ありがたく存じます!」

 アレクシーナはリッターが出て行くのを見送った後、静かに呟いた。

「リーン・・・・お前の意思は無駄にはしない。」



 静かな部屋の中でリューヤが一人座り込んでいた。

「食事が出来ました。」

 鈴の声が聞こえた。

「いらない」

 リューヤは静かにそう答えた。

「紫炎様も心配しておいでです。少しでも食べないと、お体に障ります。」

 鋼が心配そうに言った。

「後で食べるよ。今は一人にしてくれ・・・・」

 リューヤは座り込んだまま障子に映る二つのの影にそう言った。二人が去っていくのを確認して、リューヤは再び首をうな垂れた。

「リーン・・・・・・・」

 リューヤ・アルデベータは二度と戻らない最愛の人を思い出し、再び涙した。もう、彼女は戻らない。その思いがリューヤの心に言いようのない寂寥感を与えた。

「リーン」

 リューヤは再びそう呟き、頬を伝わる涙を拭った。それでも次から次へと涙があふれ出た。リューヤはリーン・サンドライトとの思い出を思い浮かべ、激しく嗚咽し続けた。


仮題「シャングリラ」第1章 了

運命の最中に翻弄されたリューヤとリーン、その運命の結末は、リーンの愛の勝利に終わりました。ですが、その代償はあまりに悲痛な結末でした。この後、第2章をUPしますが、それは7月中旬からです。それでは、それまで〜〜(^▽^)ノ

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