第4話「思い出」
生きていた少年時代の恋人。リューヤはリーン・サンドライトに会えるのか?
「リッター大尉!」
リューヤの自室の前で、リッターが壁にもたれ掛かり待っていた。
「早かったわね。」
「ええ。」
リューヤはリーン・サンドライトの事を考えている事を悟られないように、目線を下げてそう言った。
「何の話だったの?」
「アルテイル公国への視察の護衛に選ばれました。」
「ほんと!」
「?」
「私と同じ任務なのね。」
「大尉も?」
「そうよ、ヘマは許されなくてよ。」
「そうですね。」
リューヤはどこか虚ろにそう言った。リーンの事が気になっていた。不都合な事態とはなんなのだろう・・・・
「上の空ね。アルテイル公国とは友好的な関係とは言っても、気を抜きすぎるのは良くないわ。」
「アレクシーナ王女は危険な予感がするって・・・・」
リッターは少し首を傾げた。
「あの人の予感はよく当たるわ・・・」
「何もないといいんですがね。」
「そうね。それに越した事はないわ。明日には私にも報告書が届くと思うわ。あなたの初仕事うまくいくといいわね。」
「ええ。」
「今日はもう休みなさい。」
「はい。」
「おやすみ。」
リッターはそう言ってリューヤに背を向けた。
「おやすみ。リッター大尉。」
リューヤがそう言うとリッターは軽く手を挙げ応え、足早に去っていった。
部屋に入り、リューヤは暗めの紺のスーツを脱ぎベットについた。
囲まれた空間の中だったとはいえ、幾つもの思い出があった。訓練の後に差し出されたタオル。一緒に買い物をしたショッピングモール。教官に隠れて交わされた秘密のキス。小さな思い出一つ一つに涙が零れそうだった。
リーンは生きている・・・・生きていてくれて嬉しい。どんな不都合な事があったて、生きていてくれた方がいい・・・・。どんな境遇だろうと俺が必ず助け出す。きっと・・・
感情が眠りを妨げる。眠れない。
リューヤは布団を頭から被り無理に眠ろうとした。




