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第38話「可能性」

かつての恋人、リーン・サンドライトの死を予告されるリューヤ・・・・・僅かな可能性を探る・・・・リューヤとリーンの前に待つ結末はいかに・・・第一章ラストスパート開始の第38話

「本当に可能性は無いのか?」

 リューヤは辛うじてそう聞いた。リューヤの記憶喪失の事を知っていた事、洩れるはずの無いアレクシーナの秘密が漏れた事、リューヤの来る時間まで分かっていた事を考えれば、紫炎の能力を軽んじる事は出来なかった。

「あなたなら可能なはずでした。」

 紫炎は静かにそう言った。

「私の所へやってきたこの数時間が致命傷なのです。」

「西城もアレクシーナ王女もあんたに会えと言っていた・・・・そしてあんたもそれを受け入れたはずだ。」

 リューヤはあらゆる事に納得がいかなかった。

「あなたが、記憶を失っている以上他に手が無いのです。それを西城氏もアレクシーナ王女も知っていたからです。」

「だが、手紙が・・・・・・」

「それも、あなたが記憶を喪失していなければ読まずに済んでいるのですよ。もしあなたが記憶を持ったまま、なお運命に立ち向かう気だったならば、あなたは今頃私の元ではなくリーン・サンドライトの元にいたのですから・・・・・。」

 紫炎の声は相変わらず責めるようだった。

「どうすればいい・・・・・・リーンがまだ死んでいないならばまだ手は打てるはずだ。まさか・・・・」

紫炎は言葉を遮った。リューヤが口にするにはあまりに凶々しい言葉だった。

「いえ、リーン・サンドライトはまだ生きています。ですが、もはやあなたの知っているリーン・サンドライトではありません。」

「例の現象の事か?」

 リューヤは内部事情を漏らさぬ範囲でそう聞いた。

「そうです・・・・リーン・サンドライトはあの存在と完全に融合してしまった。あなたにとっては最悪の結果でしょう。」

 リューヤの心に言い知れぬ不安と後悔が渦巻いた。

「リーンを救う方法はあるのか?」

「救う方法はあります・・・・ですがそれは決してあなたが報われない結末です。しかし、あなたなら別の方法でリーン・サンドライトを救えるかもしれません。僅かな可能性ですが・・・・・賭けてみますか?」

「1%でも可能性があるならやるさ。」

 リューヤは目の前の少女に全てを賭ける以外なかった。

「今から言う事は、あなたが否定し自らの記憶を封鎖しなければならなかった程の未来です。聞く覚悟はありますか?」

 紫炎のその問いにリューヤは力強く頷いた。リーンを救う為ならなんでもやるつもりだった。例え悪魔に魂を売ろうとも・・・・・・

 そう思うリューヤに紫炎は信じられない言葉を発した。

「あなたが記憶を封鎖したのは、リーン・サンドライトの命を終らせるのがあなた自身だという事を知ったからです。」

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