第35話「知らないのは俺だけ」
失われた記憶をまさぐるリューヤ。一体、リューヤの身に何が起こったのか
意を決したリューヤは紫炎教に連絡を取り、アポをとった。
いつでも来てくれという話であった為、リューヤはすぐに紫炎のいる森に向かう事にした。
つけられていないか注意し、電車に乗り東京へ向かった。空白の一週間はどう思い出そうとしても思い出せない。必死に思い出そうとしても額から汗が流れるばかりで、なんの進展も無かった。やはり記憶は、G山で包囲されたところで途切れ、次の記憶はA-3の部屋の前だった。
リューヤの心中を不安が駆け巡った。西城もヨーコも敵の手に落ち(本当に敵と言えるかどうかはまだ判明していないが)リューヤ共々何らかの操作を受け、開放されただけではないかという不安が残った。
だが、西城の残した手紙の文面から考えれば、完全に記憶が欠落しているのはリューヤ一人であり、西城もヨーコも(ヨーコに関しては想像に過ぎないが)何らかの結論を持ち帰っている。しかも、西城はリューヤが何かを覚えていない可能性すら示唆している。
リューヤはハッとして自分の携帯電話を手に取った。
アレクシーナより、紫炎より西城に聞けばいいのだ。こんな簡単な事を失念する程リューヤは混乱し慌てていたのだ。
リューヤは新幹線の中にある電話BOXに入り、新幹線内の電話を手に取り西城の携帯電話の番号を押した。
長いコール音が響き、リューヤはヤキモキした。西城は電話に出ないつもりだろうか。そう思わせる程、八度のコール音を長く感じた。
「もしもし?」
「リューヤだけど、西城さんかい?」
「無事帰還したようだな。」
「単刀直入に聞く。この一週間俺に何があった?」
「覚えていないのか?」
「念の為に確認だ。」
「その必要は無いな。お前さんが本物のリューヤなら依頼者に報告に行く事で任務は達成される。あんたが本物じゃなけりゃ、余計な事は喋れない。そうじゃねーか?電話の相手が本人だと確証を持てる方法は限られてるぜ。」
西城は当然の用心深さをもった。
「新幹線の中の公衆電話じゃ、無理な内容という事か。」
「そういう事だな。」
「依頼者に逢う前に逢えないか?」
「悪いが俺は既に別の任務についてる。ただな・・・」
西城は少し間を置いた。
「お前がリューヤだとして、俺はお前がどういう状態で帰還するか少しは知ってる。そしてどういう結末を辿るかもだ。」
結末?
「心配はいらんさ。取り合えず依頼者に逢う事だ。そうしなければ始まらない。あの方はお前さんが知りたい事も教えてくれるはずだ。」
「知らないのは俺だけという事か?」
リューヤは不服そうにそう言った。




