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第34話「電話」

記憶を喪失したリューヤ。残された手紙。謎が謎を呼ぶ第34話

リューヤは電話の受話器を上げて、アレクシーナへ電話をしようと思ったが、一瞬考えて受話器を戻した。

 盗聴盗撮があるか調べるのを忘れていた。

 リューヤは押入れの奥にあるクリーム色の探知機を取り出して、それが正常に働いているかどうかを確かめてから、部屋を調べた。取り合えず部屋内は安全のようだった。

 リューヤは盗聴器捜索用の電波探知機をしまい、玄関に鍵をかけてから受話器をとった。

 定時連絡ではないが、リューヤ達が不測の事態に陥った時の為に、取りあえずの連絡はつくようになっている。アレクシーナが出てくれる可能性も低くはないはずだ。

 番号を押し、電話のコール音が鳴り響く。

 コール音三度程で、取次ぎの電話管理人が出た。

「リューヤ・アルデベータだが、アレクシーナ様にお取次ぎ願えるか?」

「認証コードをお願いします。」

 リューヤは八桁の自分のナンバーを言った。

「80374527」

「リューヤ様ですね、少々お待ちください。」

 ベートーベンの第九が待ち受けで流れる。暫くしてから電話管理人が再び電話に出た。

「アレクシーナ様がすぐに取り次ぐようにとの事ですので、御繋ぎします。」

 再びコール音が流れたが、それはすぐに途絶えた。

「もしもし、アレクシーナだが。」

「リューヤです。」

「何かあったのか?西城からは後はリューヤが紫炎に逢うだけだと聞いていたが・・・」

「そうらしいのですが・・・」

「言葉が不明瞭だな。」

「ここ数日にどんな連絡をしたか教えていただけませんか?」

「・・・・・」

「信じられないかもしれませんが、この一週間の記憶が私から抜け落ちています。出来れば何があったか教えて頂きたいのですが。」

「西城からは順調にいっていると聞いていただけだ。お前が戻るまで少し時間がかかるかもしれないと聞いていたが・・・」

「そこです。私はどこにいっていたのでしょうか?」

「G山だと聞いている。」

「あの山中に?」

「そうらしい。」

「我々は任務を達成出来たのですか?」

「そうだな。後はお前が紫炎に逢うだけだ。」

「紫炎に逢えと?」

「取りあえずはそれしかあるまい。どうしても記憶を取り戻したければ紫炎に相談してみるのも一興だろう。」

「は!」

「最近政務が前にも増して忙しい。時間をあまり取る事が出来ない。」

「申し訳ありません。」

「一段落ついたらじっくり話を聞かせてもらう。それまでに記憶を戻しておいてもらいたいものだ。」

「は!」

 アレクシーナが電話を切る音が聞こえた。手掛かりになる記録はアレクシーナの所にはなかった。いや、正確にはあったのだが、リューヤの不安をかき消すような内容ではなかったのだ。アレクシーナの言うとおり、紫炎に逢い、その不思議な力で納得のいく答えを導き出してもらおうと、リューヤは考えた。

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