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第32話「A-3」

捕まろうとしていたリューヤは、突然、時間を超えあるアパートの前に一体リューヤの身に何が起こったのか?

リューヤはアパートの部屋の前に立っていた。部屋の番号はA-3、不測の事態が起きた時に集まる予定だった場所だった。

 

 何が起こったんだ?

 確か、俺は

 山の斜面を降りようとして捕まるところだった。

 なんでこの場所にいる?


 リューヤは時計を見た。日付と時間が、記憶にあるものと違う。既に斜面を降りようとした時から一週間が過ぎている。


 記憶が無い・・・・

 薬品で記憶を操作されたか?


 リューヤは素早く自分の体を調べたが、捕まった形跡も薬品を使われた形跡もなかった。


 おかしい・・・・・


 この一週間何があった?


 リューヤは暫く思案して、A-3の部屋の扉を開ける事にした。鍵があるか不安だったが、ポケットをまさぐると、所定の場所に鍵はあった。

 リューヤは身構えた状態で、素早く玄関の扉を開け、中に体を忍び込ませた。誰もいる気配は無い。

  西城の姿も陽子の姿も見当たらなかった。だが、数日前に誰かがいた気配は確かにあった。

 リューヤは暫く、人のいない部屋の中で慎重に敵がいないかを調べた。部屋の中央にあるテーブルの白い紙片に目が行ったが、部屋を調べるのが先だった。リューヤは一通り部屋を調べると黒いテーブルの上の紙片を手にとった。

 それは綺麗な白い封筒だった。

 

「龍也へ」


 手紙の上に大きくそう書かれていた。自分の名前だと思い出すのに2秒ほど時間がかかった。漢字で書かれた名前で手紙を残されるのは初めての事で、一瞬何の事か判断がつかなかった。

 よく見れば、それは西城の字であり、自分の名前だった。

 そして、この手紙があるという事は打ち合わせ以降、西城も一度はここに来たのだという事。

 リューヤは奇妙な違和感を覚えながら、ゆっくりと手紙の封を切った。

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