第30話「荒事」
伝説の宝珠を求め、G山に向かう3人。だが、動いていたのはリューヤ達だけではなかった・・・・・
「ここまでは車で登れる。昔はこんな所に駐車場なんか無かったらしいぜ。」
西城は駐車場に入りながらそう言った。
車が止まり、三人が降りる。
「自然の豊かな所ね・・・・」
陽子は空と山の境目を見なが言った。
「神社の境内に行ってどこを探索するか考えよう。」
「そうだな。神社を中心に怪しい所を探してみるか。」
西城はそう言ってから呟くように低い声を出した。
「尾行されてる。俺が何とかするからお前らは先に行け。」
陽子が頷く。
「俺が相手をした方が確実だ。」
リューヤも小声で言った。
「虎の子のお前に万が一があっちゃ困るのさ。紫炎の言ってる事が本当なら、宝珠とやらはお前にしか見つけられない。俺が囮になった方がいい。」
「だが・・・・・」
「お前には陽子も守ってもらわなきゃならん。それに、アレクシーナ様にお前を守ってくれと頼まれてる。」
「分かった・・・・・」
「こういう荒事には慣れてるさ。せいぜい連中の気を引くさ。」
西城は自信有り気な表情を見せた。
「分かった。必ず後から追いついてくれ。」
西城は頷く。
「走るぞ!」
リューヤは陽子の手を引っ張った。
二人が山の中へと消えた後、西城はタバコに火を点けて携帯用の灰皿を取り出した。
四人か・・・・少しばかり骨が折れそうだな。
西城は何食わぬ顔でタバコを吸い続けた。
アスファルトの坂道を喪服姿の四人組が歩いて来る。そして西城の目の前を通り抜けようとした瞬間西城が口を開いた。
「こんな山奥で葬式かい?」
一人が怪訝そうな目で西城を見る。
「何か用かね?」
四人組の一人がそう言った。
「それはこっちの台詞だな。随分前からつけてるのは分かってる。」
そう言って西城がタバコを捨てると同時に4人組の男の一人が西城の顔目掛けて拳を放った。西城は突発的に見えた拳を屈んでかわした。西城にして見れば予想通りの動きだった。
西城はそのまま体のバネを効かせて相手の顎に頭ツキを敢行した。一人が倒れる。
西城はそのまま二人目の鳩尾に拳をめり込ませた。
西城が荒事に慣れているというのは事実だった。普段は酒場の用心棒をしている。酔っ払いやヤクザとの喧嘩もかなりの数をこなしていた。
それでも4対1はあまりに不利だった。
西城の拳が相手の鳩尾に入った瞬間、西城は背中に鈍い痛みを感じた。動き方が一歩遅れれば後頭部に入っていたはずだ。
西城が振り返りざまに裏拳を放ったがそれは空しく空を切った。
西城が相手を目視すると、相手はスプレーを目の前に向けていた。
まずい・・・・
西城がそう思うと同時にスプレーを吹きかけられた。
西城が目と鼻を覆った時にはガスを少し吸込んでいた。
西城の巨体がゆらりと崩れる。
その瞬間、側頭部に鈍い痛みが走り意識は遠のいていった。




