第3話「忠誠」
リューヤ・アルデベータが、死んだはずの女リーン・サンドライトの為に、アレクシーナ・クライ王女に忠誠を誓う。物語はここから始まっていく・・・・・
「お前は王族にではなく、私個人に忠誠を誓えるか?」
アレクシーナ第三王女はリューヤの耳元でそう言った。何が言いたいのか意味がとれない。下手な事は言わないのが無難な事だろう。
「私はクライ家に忠誠を誓いました。そしてアレクシーナ様の護衛を任されています。」
「クライ家ではなく、私に忠誠を誓えと言っている。嫌なのか?」
「そう御命令ならば・・・・・」
アレクシーナはゆっくりとリューヤの耳元から離れ、ゆっくりとした所作で玉座に座った。
「今の件了承ならば、お前の求めている物をお前に与えよう。」
「は?」
「リーン・サンドライトに会わせてやろうというのだ。」
「リーンに?」
リーン・サンドライトは、リューヤと同じアルファ研究所で一緒に過ごした幼馴染だった。幼馴染というより、恋人と言える程の関係だった。あの地獄のような研究所で、親に捨てられた二人は、励まし慰め合いお互い生き延びていった。リーン・サンドライトが訓練中の事故で死んだと聞かされるまで・・・
「生きているのですか?」
リューヤは声を荒げた。
「声が高いな・・・冷静ではないぞ。リューヤ。」
「はい・・・」
「生きている。お前が望むのならば引き合わせる事も可能だ。ただ・・・」
「?」
「お前が現実を受け入れれるかどうかは別の話だがな。」
「何か不都合でも?」
「都合がよければ「死んだ」などとは言われまい。」
「会えるならば・・・・」
「誓うというのか?」
「ええ。」
「そうか、ならばアルテイル公国への視察の護衛、お前に任せる。」
「は!」
「恐らく、アルファ能力が初めて試される局面になるはずだ。」
「危険なので?」
「予感だな・・・下がってよい。」
「は!」
リューヤは深々と頭を下げ、後ろを向き玉座を後に足早に歩いた。
「リューヤ」
王女の声が聞こえる。
「はい。」
リューヤが振り返る。
「先程の件忘れるでないぞ。」
「は!」
「私は約束を守る女だ。」
「・・・・・」
「下がってよい。」
リューヤは足早に謁見の間を去った。
リーンが生きている・・・逢えるのだ・・・・・
リューヤはリーン・サンドライトとの思い出を思い起こしながら、自室へと向かった。




