第29話「西城の憂鬱」
伝説の宝珠を求め、動き出す3人。様々な思いが交錯して西城を悩ませる
リューヤ達は紫炎の館を後にして、中国山脈のG山に向かった。
車の運転は西城である。
「片道二日の旅程だな。」
西城はそう言って溜息をついた。
「それくらいはかかりそうだな。」
リューヤがそう返した。
「今回ばかりは任務達成出来るとは思えんな。なんせ無い物を探して来いって事だからな。」
「そうかもしれないが一応行っておかなければ、アレクシーナ様に言い訳が立たない。やれるべき事はやっておかなければならないさ。」
「正論だよ。」
西城はそう言うとタバコを取り出し銜えた。
「能力者のあなたから見て紫炎はどう見えたの?」
陽子が慎重な口振りで口を開いた。
「ただの少女に見えたさ・・・・一見はね。」
リューヤは呟くようにそう言った。
「だけど、何かとんでもない物を抱えてるようにも見えた。単純に気の量だけを見れば俺の方が遥かに勝るし、最初に現れた鈴と鋼にすら一見では気の量が劣る。ただ・・・」
「ただ?」
「β能力者は見た目の気の量だけでは力は測れない。少ない気の量でも、βシステムと呼ばれているものにうまくリンク出来れば多くの事を知る事が出来る。」
「紫炎は本物の超能力者なの?」
「その可能性は高い。ポテンシャルも相当なものだと思う。」
「では、アレクシーナ様の事もそのβシステムとやらでしったのかしら・・・・・」
「ふん。紫炎が本物の超能力者ならお前の頭の中を覗くだけで充分な情報は得られるさ。」
西城は不貞腐れたように言った。
「私の頭の中を覗いてた・・・・・?」
「分からないね。そういう事もあり得るかもしれないけど、俺はもっと別の物を感じた。」
「・・・・?」
「きっと紫炎も、俺の幼馴染同様何かに憑かれてる。それが人間にとって良い物なのかどうかは分からないけどね。」
「俺達の相手は本物の化け物かよ。笑い話にもならないぜ。」
西城は相変わらず不貞腐れたままだった。
「それでも、俺達は現状では紫炎に従う以外はない。アレクシーナ王女に被害を出さないには、他にいい方法があるとも思えない。」
「手っ取り早く始末した方が良かったんじゃないのか?」
「その選択肢ももちろん考えてある。・・・・だけど、アレクシーナ王女から拝した命令は、あくまで交渉だった。紫炎かそのバックにいる者が自分の命の危険に備えてないとは思えないからだろう。」
「ふん。俺はどうせ単細胞さ。」
西城は不貞腐れた顔を一層不貞腐れさせた。




