第24話「講堂の少女」
リューヤ、ついに紫炎に出会う。知られざる紫炎の正体が今明らかに!新たな運命の輪に取り込まれるリューヤ。最新の24話
リューヤは西城の名前で借りたレンタカーを降り、佐藤 陽子と共に大きな屋敷の門の前に立った。日本の新興宗教のそれらしく、屋敷は若干華美で胡散臭さを感じさせる。
車に乗ったままの西城は「何かあったら連絡しろ」と言って、近くの山林へと車を走らせて行った。
陽子が門についた呼び鈴を鳴らす。
鬱蒼と茂った森の中はひんやりとした物を感じさせる。α能力者のリューヤには森の静謐な雰囲気は落ち着きを与えてくれる。大きな宗教施設に有り勝ちなザワザワしさは感じない。余程良い場所なのか、シエンとやらが余程しっかりした人物なのか今の所判断がつかない。
そう考えてる内に門が開いて、巫女姿の少女が二人現れ出迎えた。
二人共、美少女と呼べる位の美しさがあった。双子のように似ている印象を受ける二人だ。巫女姿というのがそういう感覚を助長させているのだろうか?
「お待ちしておりました。」
少女の一人がそう言った。
「紫炎様がお待ちです。」
代わってもう一人の少女が答えた。
「進藤 龍也様をお連れしました。」
陽子は先程までの気丈な姿が嘘のように弱弱しくそう言った。
リューヤと陽子は二人の巫女に導かれるままについていく。
「龍也様、私は馬渡 鈴と申します。」
「私は、斉藤 鋼と申します。」
二人の巫女は代わる代わる言った。それに対しリューヤはぶっきらぼうに名乗った。紫炎教の連中は敵だという感覚がはっきりとあった。
「進藤 龍也という。」
「存じております。」
「存じております。」
鈴と鋼はまた代わる代わるそう言った。
「世界の命運を背負うお方だと聞かされております。」
鈴はそう言った。
「そんなもんじゃない。」
リューヤがそう言うと鈴と鋼は薄く微笑んだ。
「陽子さんはこちらでお待ちを。」
鋼は休憩室と書かれた部屋の前でそう言った。俺達を切り離すつもりだろうか?だがここで揉める訳にはいかないし、紫炎との会話次第では陽子に聞かれて困る内容もある。秘密を持つ者は少ない程いい。
「ここで待っててくれ。」
リューヤはそう促した。陽子は一瞬不安そうな顔をしたが、リューヤと二人の巫女に従った。リューヤの様子から何かを感じ取った様子だった。
「はい。」
そうか細く言って陽子は休憩室に入った。
それから3分程歩いて、リューヤは大きな講堂の前まで連れていかれた。先程の休憩室がある建物とは別棟だった。
「この先に紫炎様がお待ちです。」
「私共はこれで・・・」
そう言って、鈴と鋼は静かな足取りで去っていった。
暫くして、リューヤは意を決して講堂の扉を開けた。一国の王女を脅す程の相手と対峙する為には覚悟を決める必要があった。
「龍也様、ようこそ紫炎教へ。歓迎致します。」
講堂の奥から少女の声が聞こえた。
リューヤは奥に一人座っている少女に近づいていった。
「紫炎に用があるんだが」
「私が紫炎ですが、そうは見えませんか?」
少女はあどけない表情でそう言った。
「あんたがアレクシーナ王女に無理な要求をしたっていうのか?」
少女は円らな瞳を湛えた鋼や鈴とは違ったタイプの美少女だった。鋼や鈴が凛とした美しさを持っているとすれば、この少女は初心さが美しさを際立たせているタイプだ。
「正直に脅迫状と仰ってよろしいのですよ。」
「そう言えと言われたのか?黒幕がいると言ってくれないか?」
リューヤは自分の納得のいく答えが欲しかった。




