第13話「病棟の少女 後編」
想像の外にあるリーンの実態に、リューヤ戸惑い慟哭す。
リーン・サンドライトはその後、ベットの上に崩れるように倒れこんだ。
「リーン!」
リューヤはリーンに駆け寄った。院長が近づきリーンの腕を捲くった。そこには痛々しい注射針の痕が何本も残っていた。その痕の近くに新たな痕が増える。
「α能力の研究の過程で、こういう人間が何人も生まれている。大半は無意味な事を言うが、中にはリーンのように非常に価値のある事を言うものもいる。それでも、α能力開発の犠牲者である事には変わりないがな。」
アレクシーナは冷静にそう言った。
「あんたら、こんな事になるって分かっていながらやってるって言うのかよ!」
リューヤはキッとアレクシーナを見据えた。
「そうだ。そして、お前は貴重な成功例だ。」
「うおおおおおおおおおおお!」
リューヤがアレクシーナに殴りかかる。アレクシーナはリューヤのコブシをかわし、腹に膝を入れた。
「ぐう」
リューヤがその場にへたりこむ。
「顔でなく、腹なら大人しく殴られてやったものを・・・・・」
アレクシーナは静かにそう言った。
「これが、王家のやり方だ。長い特権階級にいる事で腐りきっているのさ。」
リューヤはゆっくりとアレクシーナの前に立った。その耳元にアレクシーナが口を近づける。
「私は王家を打倒する。お前やリーンのような犠牲者を二度と出さないと約束しよう。そしてリーンを元に戻す方法を考えてやる。協力してくれるな?」
リューヤは無言のまま動かない。
「リューヤ。」
リーンの小さな声が聞こえる。リューヤはリーンの側に駆け寄った。
「アレクシーナ様に協力してあげて。私に出来る事なんてないから・・・・私はアレクシーナ様の理想を信じるわ。」
注射を打たれ意識が弱まっているのか、声が掠れるようにか細い。
「そんな事はない。お前は役にたってくれているぞ。」
アレクシーナはいつの間にかリューヤの背後に立っており、そう言った。
「ありがとうございます・・・・疲れた。休むね・・・・。」
リーンが目を瞑るのを待って、リューヤは病室のドアに向かった。
「開けてくれ。」
院長がアレクシーナの顔色を伺い、アレクシーナは顔を少し動かし、開けるように指示した。
三つ目の扉の向こうで、リューヤの叫び声がするのを、アレクシーナは確かに聞いた。




