第11話「病棟の少女 前編」
リューヤ、ついに死んだはずのかつての恋人に出会う。運命渦巻く第11話
「ここだ。」
公用車から降りたアレクシーナは同乗していたリューヤにそう言った。
「ここにリーン・サンドライトがいる。」
「・・・・・・」
「正直、お前に逢わせるべきではないのかも知れないと何度も思った。だが・・・・お前には王家の罪を明らかにせねばなるまい・・・・・」
「リーンはどのような状況なのですか?」
「・・・・・会えば分かる。」
そう言ってアレクシーナは病院へ向かい、リューヤはそれに従った。リッターと数人のSPもそれに続く。大勢いた報道陣もまいたせいもあり、今はいない。
アレクシーナは病院の奥へ向かいエレベーターの前に立った。
「リューヤ以外の者はここで待機せよ。」
「は!」
「リューヤついて来い。」
「は!」
アレクシーナに続きリューヤもエレベーターに乗る。
エレベータを降り、長い階段を下りるとそこには受付があった。髪の長い女性が受付に座っている。
「アレクシーナ・クライとリューヤ・アルデベータが来た。院長にそう伝えて欲しい。」
受付の女性は少し不審気な顔をしたが、すぐに電話の受話器をとった。
「すぐに参ります」そう受付の女性が言ってからリューヤにとって長い時間が過ぎた。
リーンに逢える。
その思いが一分を一時間にも感じさせた。
院長らしい男が受付の奥から現れる。
「これはアレクシーナ様。ようこそ。」
「用件はミュール閣下から伝わっていると思うが・・・・」
「例の患者ですかな?」
「そうだ。」
「幸い今は安定した状態です。」
「逢えるか?」
「逢えます。こちらへ・・・・」
院長はゆっくりと歩き、鍵のついた鉄の扉を何個も開けては閉めて、リューヤ達を先導した。
こんな所にリーンは閉じ込められているのか?
リューヤは不安を覚えると同時に怒りを覚えた。
リーンが何をしたと言うんだ!
リューヤは胸に湧く感情を必死に自制した。
「こちらです。」
院長はそう言って最後の扉の鍵を開けた。
「リーン!」
リューヤは声を上げた。白い清潔感のあるベットの上にリーン・サンドライトは横たわっていた。その顔色は日光にあまりあたっていないせいか不健康に青白く、その体はあの厳しい訓練に耐えた強さを微塵も感じさせない程弱弱しくなっていた。それでもその面影から間違いなく彼女がリーン・サンドライトである事は分かった。
「リューヤ?リューヤなの?」
リーンは虚ろな目でこちらを見詰め、ゆっくりとした口調でそう言った。




