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灰になるまで歌っていた  作者: 倉本大
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序文

あなたに宛てて書く。


あなたが誰であるかは、最後まで書かない。書けない、というほうが正確かもしれない。わたしはまだ、あなたをひとつの名前に固定することを恐れている。名前をつけた瞬間に、あなたはわたしの理解の内側に収まってしまう。そしてわたしはずっと、あなたを理解できないままでいたかった。


あの声は、もうない。


それがいつのことだったのか、わたしはあまり数えたくない。失われた日から、花音はすでにゆっくりと消えはじめていた。あの最後の夜は、消えきるための儀式だったのだと、いまのわたしは思っている。


この手記を書くのは、自分への弁明のためではない。弁明できるとも思っていない。わたしは花音が壊れていくのを、三年かけて、見ていた。止めることができたのに、止めなかった。その事実は、どんな言葉で包んでも、事実のまま残る。


ただ書く。あなたのために、というより、あの声のために。


消えてしまったものには、形が必要だ。

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