国宝の真実
無職の青年、高市が訪れたのは、古びた雑貨店…そこには、昭和の玩具が無造作に積み上げられていた…壁には、アイドルのLPレコードが飾られている。店主の姿は見当たらない、どこまでも続く店内…
「コレを…」
ピエロのメイクをした男が手渡したのは、見た事も無い女性歌手のシングルレコードで、花を施したバックに、微笑む少女のジャケットだった…
(このセンスじゃ…ジャケ買いは、しないな…)
ピエロが耳元で、囁く…
「彼女の手をよく見て…」
グイ〜ン…ギュルギュル…
奇妙な音が聴こえるが…その娘の両手は、見切れていて、確認出来ない…
「国宝…真美」
無意識に…そこに書いてある、歌い手の名前を読み上げる高市…
「違うよ…それって…名前じゃ無くって、真実って意味…」
ジャケットの写真の口が動き、女の声で話かけてくる…
「気味悪いな…でも…面白い…コレ、もらいます」
「差し上げますよ…そもそもソレ…あなたが、売りに出したモノですから…」
白塗りの店員の言っている、意味の分からないまま…店を後にする。
家に帰った高市は、実家に置き忘れられていた…姉のメイク道具を使い、何を思ったか…レコードジャケットの少女の顔に、ギャルメイクを施した…
「なんで…こんな事してんだろ…俺…」
彼の背中に一瞬…操り糸が見えたのは、夕陽が窓から差し込んだせいに、他ならなかった…
ガチガチガチガチ…
歯ぎしりをする自分の口内に、違和感を感じ、手を突っ込んでみる…
グチュ…ボトッ…
「アゴが、はずれた…いや、物理的に…」
キバの並んだ鮫のアゴ骨格標本が、机の上に…
その次の瞬間…部屋の窓をぶち破って、山から食料をもとめてやって来た…巨大な親子の熊が、侵入して来る…おかしなことに…各々、その手に電気ノコギリを持って回転させている…
ギュルギュルギュル…
必死にかわす高市…削り取られる、机の端…飛び散る木のクズ…子熊が足を椅子に引っ掛け、転倒するタイミングでかばう親熊の首を、ノコ刃で切断する…そして、血しぶきを浴び視界を失うそいつに、手にした鮫のアゴで反撃する…というか、その歯で挟み…親熊と同じ目に合わせる…
事態を頭で整理しようとしても…得体の知れない興奮が治まらない…ふと、今日買ったレコードをかけてみようとするが…プレーヤーが無い事に気付く…何を思ったか、親子熊の持っていた二本の電ノコで、盤面を上下から挟み込み…回転させる高市…その刃先は、徐々にその中に、吸い込まれてゆく…
ふと気がつくと…レコードジャケットの少女の両手には、チェーンソーが装着されていた…




