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ルート1 転生先で、主人公(元親友)にロックオンされた。



※ギャグテイストBLの軽めR-15作品です。過激な表現はありませんが、苦手な方はご注意ください。

※会話は主に関西弁です。




「ここどこ……?」


朝、目覚めたらベッドがふかふかだった。天井はアーチ、壁は大理石、布団は羽毛……てかこの豪華さ何?

寝ぼけたまま鏡を見ると、映ったのは知らん美少年。


「……誰だ、お前ぇ……」


金髪サラッサラ、肌真っ白、口角上がってて上品な顔――

鏡の中の“誰か”と、動きが完全にリンクしてる。つまり、これが俺?

訳も分からぬまま、執事っぽい人がノックしてきて言った。


「本日は、皇太子殿下主催の社交パーティーでございます。ユリウス様もご参加を」

「え? は?」


そしてそのまま、何が何だかわからないまま着替えさせられ、気づけば馬車に乗せられて連れてこられたのは――

きらびやかな貴族たちが集う、ガーデンパーティーだった。初対面の人に「ご機嫌よう、ユリウス様」って言われるたびにニッコリ返すしかない。

てか、ユリウスって俺の名前??

もしかして、ここの世界の美形貴族令息的なポジ??


(えっ……もしかして俺、転生してね??)


しかし、何の作品かも思い出せん。異世界転生ものは読んだことあるが、こんな設定覚えない。てかこれ乙女ゲー? BL? マジで勘弁してくれ。とりあえずその辺の貴族に聞くわけにもいかず、適当にさらに乗った料理を手に取るが、味がしないほど緊張していた。よくわからんけど、大人しくしときゃなんとかなるだろう。そう思っていたら茶髪の貴族少年が、俺を指差して叫んだ。


「……っ、おま……お前ぇぇぇぇ!!!」


思わずその声の方を見た俺は、目を見開いた。

まさか……

前世の親友・タクミそっくりじゃね!?


「……なあ、髪色違うけど、お前アキトだよな!? 俺、タクミ!」

「タクミ?!まって、お前も転生したのか!? 俺もやねん!」


会場がざわめく中、俺とタクミの脳内だけがフルスロットルで回っていた。ガーデンパーティーの片隅、バラの垣根の影で肩を寄せ合い、必死に小声で話す二人。


「てか、タクミ。俺の役なに?」

「……え、知らんの? お前、悪役令息やで?」

「…………嘘やろ?」

「マジで。てか、まさか悪役令息のユリウスがお前とは……運命感じるやつやん。」

「運命とかじゃないわ。なんで転生してまでお前とセットなんだよ!」


俺は肩を落としてうなだれていた。


「なぁタクミ。お前さ、これ何の作品か分かる?」

「……たぶん、俺の持ってたやつやと思う。タイトル忘れたけど、“悪役令息が皇太子に執着してバッドエンド迎えるBLモノ”」

「聞きたくなかった情報をありがとうな!!!」


俺は頭を抱えた。

しかも、自分がそのバッドエンドを迎える“悪役”だと告げられたのだ。


「ちなみに俺はレオンて言う主人公ポジで、攻略対象者やモブに溺愛されんの。お前は執着系の悪役令息……だった。」

「だった?」

「「えっと、アキトが皇太子殿下の婚約者候補を辞退したことで、ストーリーが崩れて、主人公である俺の“友人ポジ”になったっぽい。」


辞退した記憶はないけど──

ナイスや、ユリウス!(俺)


「……へぇ。辞退してたなんて知らんかったわ……てか、お前が主人公!?」

「うん。」

「マジか。」

「マジマジ!おかげで攻略対象者との嬉しくな腐ラグがいっぱい建築されてる。」

「お前、腐男子だから嬉しいんじゃないん?」

「二次元と三次元は別物。俺は好きな子と一緒になりたいの!」

「…でもさ、このストーリー終わらないと、付き纏われるんだろ?だったら誰かのルート入って攻略しろよ。」

「……うーん。そうやなぁ…」


タクミは顎に手を当てて考えるポーズをとって、俺を見つめる。


「じゃあ、アキト攻略しようかな!」

「なんでやねん。」

「だって他の奴らは煩わしいし!」

「お前の知ってるその物語に友達ルートでもあんのか?」

「ん?ないよ。」

「ないならあかんやろ。」

「そんな事ないで。アキトが婚約者候補辞退した時点でストーリー崩れてるから、いっそ崩してやろうかと。」


タクミはニヤッと口角を上げた。


「いや待て、何をどう崩す気やねん。主人公ルート突き進めや。」

「だってさ~、俺の好みじゃないんだもん、攻略対象者たち。」

「は?」

「イケメン揃いやけど、なんかこう、キラキラすぎて現実味がないというか……乙女ゲーの“既定路線感”が無理。あと、無駄に距離詰めてくるやつとか、無理。」

「……わがままか。」

「アキトは現実味あって好き。」

「待て待て待て待て???」

「昔から好きだったけどさ。…親友としてね。でも、こっちの世界じゃ友人ルートとかないし、だから、俺が作ってみようかな~って。」

「え、いや、え? お前、何言い出してんの???」

「だってアキト、優しいし、ツッコミキレあるし、顔も悪役補正で美形やし、あと……俺の“初めて”をくれてもいい存在かなって。」

「いやいやいや、重い重い重い!!」

「ふふ、でも嬉しいでしょ? “初めて”って言うみたいなやつ。」

「やめろ、そういうやつ苦手って知ってるやろが!!!!」

「……だからアキトにだけ言いたいの♡」

「ほんまお前、転生してから自由すぎるやろ……」

「人生二週目やからね~。本気で推しを攻略しに行くスタイル。」

「お前の推し、俺かよ!!!」

「うん♡」

「くっそ、こいつガチや……」


アキトは額を押さえた。バッドエンドより厄介なルートが今、ここに爆誕した気がした。

──ここから、タクミによるアキト溺愛ルートがスタートするなんて、この時の俺はまだ、微塵も気づいていなかった。



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