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リュシアナ王国
リュシアナは、太古の昔から竜に守られた国として知られている。
伝説では、竜は王国を見守り、災厄から民を守る存在だ。
その世話人は、代々選ばれた一族が担い、ルナの父、バルドもその一人だった。
彼とガレンは、竜の住まう城の奥でその世話をし、村を守るために力を尽くしていた。
だが、二人には秘密があった――彼らは強力な魔法使いだったのだ。
この国では、魔法使いは高貴な存在とされ、貴族や王城に仕えることが多い。
しかし、バルドとガレンは、竜と村を守るため、その力を隠していた。
ルナは、魔法使いになる夢を持っていた。
リュシアナでは、15歳になった男子は魔法使いを探して弟子入りする伝統があるが、女子にはその機会は少ない。それでも、ルナは密かに父から簡単な魔法を教わっていた。彼女の小さな手には、風を呼び寄せる力や花を一瞬で咲かせる力が宿っていたが、村の誰にも明かしていなかった