封印
潮の島を後にしたルナとアルデバランは、星の神殿へと戻る旅を始めた。
海を越え、平原を抜け、風の谷や炎の山を通過した道を逆行する旅路は、ルナにとって成長の軌跡を振り返る時間でもあった。
彼女の胸元では、光の結晶、風の結晶、炎の結晶、潮の結晶がそれぞれの輝きを放ち、彼女の魔力を増幅していた。
父バルドの黒竜石のペンダント、母エリナの聖水と薬草、ルークのナイフ、ガレンの魔力を宿した短剣は、革袋の中でルナを支え続けている。
星の神殿、風の谷、炎の山、潮の島での試練を乗り越えたルナは、光、風、炎、水の四つの元素の力を操る魔法使いとして大きく成長していた。
だが、竜王アザロスの復活が刻一刻と近づく中、彼女の心には決意と重圧が交錯していた。
朝の陽光が道を照らす中、ルナは軽快に歩きながらアルデバランに尋ねた。
『星の神殿に戻ったら、どんな試練が待ってるの? アザロスを完全に封じるって、どうやるの? すごい魔法を使うの?』
彼女の金色の髪が風に揺れ、好奇心に満ちた瞳がキラキラと輝いていた。
アルデバランは杖を手に、静かに答えた。
『ルナ、星の神殿での最後の試練は、星の守護者の真の力を引き出す儀式だ。
光、風、炎、水の四つの結晶を使い、聖水晶を通じてアザロスの封印を強化する。だが、それは容易なことではない。アザロスの闇は、お前の心の隙を狙うだろう。心を清らかに、強く保て。』
ルナは拳を握り、目を輝かせた。
『よーし! 私、ぜんぶ乗り越える! 光も風も炎も水も、全部使って、アザロスをやっつける! 星の守護者として、みんなを守るんだ!』
アルデバランはルナの熱意に微笑みつつ、遠くの空を見やった。
雲の間にかすかな黒い影が揺らめ、闇の気配が強まっていることを感じていた。
『ルナ、油断するな。アザロスの使者は、われわれが神殿に近づくのを阻もうとするだろう。この旅路は、これまでで最も危険だ。』
星の神殿への道のりは、予想通り平穏ではなかった。
旅の数日目、ルナとアルデバランが森を抜ける夜、突然、空気が重くなり、木々の間から不気味な唸り声が響いた。アルデバランは杖を握り、ルナに警告した。
『ルナ、準備しろ。闇の勢力が来た。これはこれまでの使い魔や使者とは違う……アザロス自身の意志が動いている。』
ルナは光、風、炎、潮の結晶を握り、ガレンの短剣を手に構えた。
『アザロスの意志? 私、負けない! 家族と、みんなを守るために、ぜんぶやっつける!』
黒い霧が森を包み、赤い目が無数に光った。
だが、今回は霧の中から巨大な影が現れた……竜の形をした闇の幻影だった。
その目はアザロスの力を宿し、ルナの心に直接囁きかけた。
『星の守護者の子孫よ、汝の力は我に及ばぬ。抵抗は無駄だ。家族も、仲間も、すべて失うぞ。』
ルナは一瞬、恐怖で震えたが、家族の顔を思い出し、ペンダントを握りしめた。
『うるさい! お父さん、お母さん、ルーク、ガレン、みんなが信じてくれてる! 私、星の守護者として、絶対に負けないんだから!』
アルデバランは杖を掲げ、結界を張った。
『ルナ、四つの結晶を使え! 光、風、炎、水を一つにし、アザロスの幻影を打ち破れ!』
ルナは目を閉じ、心を集中した。
彼女は星の神殿でリリアナの勇気を見、風の谷で自由を、炎の山で情熱を、潮の島で命の深さを学んだ。家族の愛と、星の守護者の遺産が彼女の心に力を与えた。
「ルミス・ヴェントス・イグニス・アクア!」彼女が叫ぶと、四つの結晶が輝き、光、風、炎、水が融合した眩い力が闇の幻影を直撃した。
幻影は悲鳴を上げ、黒い霧となって消え去った。
ルナは息を整え、笑顔でアルデバランを見上げた。『やった! 私、四つの力、ぜんぶ使えた! アザロス、きっと、びっくりしたよね!』
アルデバランは厳しい表情で頷いた。
『ルナ、よくやった。だが、これはアザロスのほんの一部の力にすぎん。神殿での儀式が、すべてを決する。心を強く持て。』
数日後、ルナとアルデバランは星の神殿に再びたどり着いた。
白い大理石の神殿は、以前と変わらず星の光を反射し、聖水晶が中央で輝いていた。だが、今回は神殿全体に不穏な空気が漂い、聖水晶の光がかすかに揺れているように見えた。
ルナは神殿を見上げ、胸を高鳴らせた。
『ようやく来た! でも……聖水晶、キラキラしてるけど、なんかちょっと変な感じ。これは、アザロスのせい?』
アルデバランは頷き、杖を握りしめた。
『そうだ、ルナ。アザロスの力が封印を弱めている。聖水晶を通じて封印を強化する儀式を行わねばならない。だが、アザロスはそれを阻止しようとするだろう。準備はできているか?』
ルナは四つの結晶とペンダントを握り、力強く頷いた。
『大丈夫! 私、星の守護者として、アザロスを完全に封じる! みんなを守る!』
二人は神殿の奥、聖水晶の前に進んだ。アルデバランは魔法陣を描き、儀式の準備を始めた。
『ルナ、四つの結晶を聖水晶の前に置き、星の守護者の力を呼び起こせ。お前の心が、封印の鍵だ。』
ルナは聖水晶の前に立ち、光、風、炎、潮の結晶を魔法陣に置いた。
彼女は目を閉じ、家族の愛と星の守護者の歴史を思い出した。リリアナの勇気、風の民の自由、炎の民の情熱、潮の民の深さ……それらがルナの心に力を与えた。
アルデバランが呪文を唱えると、聖水晶が眩く輝き、ルナの四つの結晶が共鳴した。
だが、その瞬間、神殿が激しく揺れ、地下から黒い霧が噴き出した。霧の中から、竜王アザロスの幻影が現れた。
それは、星の神殿で封じられた姿よりもはるかに強大で、黒い鱗と燃えるような赤い目がルナを睨みつけた。
『星の守護者の子孫よ、汝の力は我を封じるには足りぬ! この世界は闇に飲み込まれる!』
アザロスの声は神殿全体を震わせ、ルナの心に恐怖を植え付けようとした。
ルナは震えながらも、家族の贈り物を握りしめた。
『うるさい! 私は星の守護者! お父さん、お母さん、ルーク、ガレン、みんなが信じてくれてる! リリアナの血を継いで、ぜんぶ乗り越える!』
彼女は四つの結晶を掲げ、叫んだ。「ルミス・ユニタス!」光、風、炎、水が一つに融合し、眩い光の柱が聖水晶を通じてアザロスの幻影を直撃した。
アルデバランも杖を掲げ、ルナの力を増幅する呪文を唱えた。神殿全体が光に包まれ、アザロスの幻影は悲鳴を上げながら黒い水晶に吸い込まれていった。
聖水晶が一際強く輝き、黒い水晶の封印が完全に強化された。ルナは息を整え、聖水晶を見つめた。
『やった……アザロス、封じた……?』
アルデバランはルナの肩に手を置き、静かに頷いた。
『ルナ、よくやった。お前は真の星の守護者だ。アザロスの力は封じられた。だが、闇は完全には消えない。いつかまた、試練が訪れるだろう。その時も、お前の光が世界を守るのだぞ。』
儀式を終えたルナとアルデバランは、星の神殿を後にした。
ルナは四つの結晶を胸に抱き、家族の待つ家へと向かった。旅の間、彼女は大きく成長し、星の守護者としての使命を果たした。だが、彼女の心には、家族との再会への喜びと、新たな冒険への好奇心が溢れていた。
家にたどり着くと、バルド、エリナ、ルーク、ガレンが門の前で待っていた。
ルナは走り寄り、家族一人一人と強く抱き合った。
『お父さん!お母さん! ルーク! ガレン! 私、帰ってきたよ! アザロスを封じて、星の守護者になったよ!』
エリナは涙を流しながらルナを抱きしめ、バルドは誇らしげに微笑んだ。
『ルナ、お前は我々の誇りだ。よくやった。』
ルークは照れくさそうに笑い、ガレンはルナの頭を撫でた。
『お前、ほんとにすごい魔法使いになったな。次は俺と一緒にドラゴン退治でも行くか?』
ルナは笑顔で拳を握った。
『うん! 次はドラゴンでも、闇の魔法使いでも、ぜんぶやっつける! だって、私、星の守護者だもん!』
その夜、暖炉の火がパチパチと鳴る中、アルデバランと家族はルナの冒険譚を聞きながら笑い合った。
星空の下、ルナの心には新たな決意が芽生えていた。彼女の旅は終わったが、星の守護者としての使命は続く。
アザロスの闇が再び目覚める日が来るかもしれないが、ルナの光は、どんな闇にも立ち向かう力を持っていた。




