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最終話 恋愛巧詐


 家まで、二人並んで歩いた。

 会話はない。

 だけど、考えている事はたぶん一緒だ。



「私は、今まであんたの気持ちに気づいてた。けど、知らないふりをして、あんたをだまし続けてたんだよ」

 家の目の前で、彼女はそういって笑った。

 いつもの無気力な笑みとは違う。さっきの余韻が残る、冷たく、鋭さのあるモノだった。

 だけど、俺は穏やかに笑うだけだ。

 さっきの理紗さんを目撃してしまったから。

 彼女の表情から、知ってしまったから。

 俺が、言葉にしてしまったから。

 これは、勝利を確信した者が持つ余裕に似ている。


「陽太、歪んだ、偽物の感情を本物と思い込んで流されるのはやめなさい」


 それは、駄々をこねる弟を諌めるような声音で、それでいて口調は保護者のそれだった。

 目をそらして、本物を偽物だと思い込んでいるのは彼女の方だ。

 本物の愛情。

 自分が優位に立っている、という自信から来るその言葉と声が、俺にはどうしようもなく不快で。


「なんで俺の気持ちを疑うの?」

「私にはわかるから。あんたの事は可愛いけれど、それは恋愛感情じゃない。私の感情は、恋愛みたいに優しくない。ドロドロしてる。あんたのは、今まで近くにいた異性が私だけだったから、あの事故の後から今まで以上に寄り添うように、寄りかかりながらの生活で、刷り込みのように恋愛感情に似たモノを持っただけ。そしてそれは、恋愛感情じゃない」


 そう言って、俺を残して玄関の向こうに消えていく。

 俺はその後ろ姿を見ながら、笑いがこみあげてきた。

 近くにいた異性は従姉だけじゃない。むしろ、従姉よりも接点のある異性なんてたくさんいた。学校にもいたし、彼女だっていたことがある。それでも、満たされなかったのだから。


「刷り込みなんかじゃないよ」


 だけど、理紗さんが信じてないのなら。

 これはまだ俺だけが知ってればいいこと。

 油断しているうちに、逃げられないようにして、絶対に捕まえてやる。

 それから、長い長い時間をかけて教えてあげるよ。


「だって、愛してるからね」



 理紗さんは、知っていたのに。知っていた事すらふたをした。

 そして忘れてしまったね。俺がどんな人間かって。

 けど、もうそろそろ思い出してほしいな。

 お互いに、あの事故から乗り越えなくちゃね。じゃないと先に進めない。

 俺も本性出していいよね? 理紗さんには抑えられないと思うから。

 逃がさない。

 引き金を引いたのは理紗さんだ。

 俺をそんな目で見るから。

 その瞳は正直だ。

 だから、もう逃げられないよ?

 

 その感情を。

 巧みに(いつわ)っていたのは、果たしてどちらか。


「絶対に捕まえてやる」


 陽太は笑い、理紗の後を追いかけた。

一応これにて完結です。

なんとなく釈然としない終わりですみません。

気が向いたら脇役たちの視線からその後の二人を番外編として乗せるかもしれません。





あとがき。

何とか完結こぎつけました。

この話、実は一番最初に最終話を書いていたのですが、途中から設定とかがどんどん広がりすぎて、最終話を大幅に修正する羽目に……。

計画性が無いとこういうことになるのですね……。

大幅に修正したにもかかわらず、どうも話が前話までと噛み合ってない気がしてしょうがない。

うーん……。今度修正しようかな。


なにはともあれ、無事に完結できたのはこの話を読んでくれた皆様がいたからだと思います。

正直、アクセスが全然なかったり、お気に入り登録してくれる方がいなかったら挫折してたかもしれない(私生活でちょっといろいろありまして……)と思う自分がいます。

こんな初心者の未熟な作品を読んでくださいまして、本当にありがとうございます!!

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