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18 告白 Side.陽太


 どこか、こうなる事を予想していたような落ち着いた姿だった。

 けれど。

 その瞳だけは不安に揺れて、俺を見ている。

 その隠されている怯えた姿に、俺は同じように不安を感じて、それ以上の愉悦を感じる。

 俺たちの関係は、どこまでも歪んでいるんだ。



「そうだね。私も話さなければと思ってた」


 何を話すつもりでいるのか、互いにわかっている。わかっているからこそ、言葉が出ない。

 理紗さんも言い淀んでいるのか、口を開いてもそこから漏れるのは吐息だけ。


「理紗さんはさ」


 先に口を開いたのは陽太だった。

 いつの間にか他の人はいなくなって、この静かな墓地にいるのは二人だけだ。


「理紗さんは、俺の気持ちを知ってたでしょ? 俺の親が生きてた頃から」

「……」


 確信を持っている。それを裏付けるように、声には力がこもった。


「知ってたよ」

「じゃあさ、それに答えるつもりが無いくせに、なんで?」

「……」

「なんで同居を持ち出したりしたんだよ?」


 答えるつもりが無い事はわかっていた。同居をするうえで、その事実がかなり苦痛になるだろうことも。

 それでもその提案を承諾したのは。


「……陽太には、何の苦労もなく、学校生活を楽しんでほしいと思ったからだよ」


 その答えは、きっと理由の一つに当てはまるんだろう。

 けれど、本当のところの理由は別にある。


「理紗さんは、俺に責めてほしかったんでしょ?」


 今でも覚えている。

 病院の遺体安置所。その前で、一度だけ言った、理紗さんを責める言葉。

 その言葉を吐いた自分に愕然としたけれど、その言葉を受けた理紗さんの表情にも言葉にも、もっと愕然とした。


「……責められると安心するから。俺に責めてほしかったんでしょう?」


 誰かに責められたい。

 あの時、理紗さんは確かにそう言った。

 そして同居をすることで、常に忘れずにいられる。自分を責め続ける事が出来る。

 俺自身、恋愛感情以外の部分で理紗さんに依存している。理紗さんに親のような立ち位置を求めている自分がいる事を知っていた。

 だから、常に理紗さんへの愛情を示してきた。

 自分自身を納得させるためにも必要だった。

 愛情を示さなくてもそれを拒むのなら、むしろ逃げられなくなるくらいまで、と思ったから。


「そうだよ」


 理紗さんは笑った。

 冷たい笑みだ。

 全てを拒絶するような。

 けれど、それでいてどこか求めているような。

 そんな矛盾した表情。


「私も陽太もあの事故を引きずりすぎて、お互いに依存してる。こんな関係はおかしいだろう? だから、そろそろ潮時だと思っていた」


 どこか、こうなる事を予想していた。

 今度こそ、本当の意味で俺の全てを拒むのだろうと。

 けれど、口では拒んでいても、その心が、その表情が、その瞳が。全てが俺を求めている。

 その瞳は、隠しきれない不安に揺れて、俺を見ている。

 そんな彼女の姿に、俺は同じように不安を感じて、それ以上の愉悦を感じる。

 俺たちの関係は、どこまでも歪んでいるんだ。

 俺は、それを正そうなんて思わない。



あと1話か2話で完結予定です。

ようやくここまで来ました。


なお、完結後、もう一度一話目から修正を行いたいと思います。

たぶん三人称な感じから完全なる一人称になるかと思います!

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