幕間 恋愛事情~理紗のメモ~
タイトルと中身にえらいギャップがありそうです。すみません
鈴木から、エッセイを書かないかと言われた。正直少し迷う。
陽太と同居を始めてから一年と約四ヶ月。今はちょうど夏休み。とりあえず陽太を観察してみることにした。
陽太の朝は、遅い。私がリビングで執筆をしていると、大体十時頃に起きだしてくる。
そうして言うのだ。飯は? と。
別にそれは構わない。陽太を養っている身として、最低限の事はしてやるつもりだったから。もちろん、朝食もしっかり作ってやる。ただ、如何せん起きてくるのが遅い。
「……冷めてる」
そう言って、じとーっとした目でこちらを見るのだ。
温めなおせばいいだろうがよ。おい。
夏休みにはいり、陽太と私が同じ場にいる時間が極端に長くなった。それが原因なのか、陽太の態度がものすごい横柄になった。去年はこんな事は無かったのに。慣れっていうのは恐ろしい。
だったら起きてくる時間に合わせれば? と思うかもしれない。
だが、私は仕事をしている。自身と陽太を養うために。締め切りに追われながら。そんな中で毎日しっかりとご飯を作っているのだから、喜ばれこそすれ、不満を言われる筋合いはないはずだ。……と思いたい。
「ごちそうさま」
なんだかんだと言いつつ、陽太はしっかりと食べてくれるからまだ良い方だろう。それに、何も言わずに食器を洗う。しまいには、お昼は何が食べたい? と聞いてくる。
夏休みに入ってから、なぜか昼食を作るようになった。私の分まで。なぜかと問えば「だって、俺の手料理食べてもらいたいし」と好意を匂わせる発言をする。もちろんそれは軽く流して相手にしないが、最近、大胆になってきているのだ。言葉にしろ、行動にしろ、とてもあからさまで。今までなら二人きりの時だけだった。だが、今ではもう鈴木くらいでは動じない。鈴木も鈴木で、それを止めようとはせずに仕方が無い、とばかりに苦笑するだけ。
と、ここまで打って、理紗はパソコンから手を離した。
「……何だこれ」
鈴木に「先生の文章力でエッセイを書いたらかなり面白いと思います。やってみません?」と言われたのは三日前。その時は断ったが、試しに書くだけでもいいから、とへたれな鈴木には珍しく粘るので、書くだけなら、と了承した。そして書いていたのだが。
「こんなの世の中に出せるわけが無い」
読み返せば、前半は母親と息子の様な感じ。しかし、どう見ても後半は同棲中の恋人の恋愛事情。しかも社会人(自分)と学生、かといって従姉弟と入れるのは気が引ける。法律上、イトコ同士の恋愛は規制されてない。結婚できるくらいだし。ただ、自分の気持ちが落ち着かない。
「やっぱり無理だ」
これは鈴木に見せられない。陽太に至っては死んでも見せたくない。
理紗はすぐさま先ほどの文章を消去した。
文章で陽太の気持ちを認めている。その事実が理紗を動揺させた。いや、ちゃんと自覚して、認めている。だからこそそれをはぐらかしていたのだが、文章にするとまた違う。
「……なんか、今日は陽太をまともに見れないかも……」
その日、陽太が理紗の言動に違和感を感じたのは言うまでもない。
夏休み中のネタが思い浮かばなかったので、というか、ネタを考え出したらずるずるとなって、予定していた筋書きに支障をきたしそうなので、夏休みはこれで割愛。ダメ作者ですみません。