第七話 『勝てないなぁ』
「ってことがあったんですよ。」
俺は、ギルドで起こったことを愚痴のようにトウカさんに話していた。
オリビアは、帰った瞬間に地下に降りて行ってしまったため、ここには俺とトウカさんの二人だけだ。
「ははっ。それは災難だったね。」
トウカさんは、苦笑しながら俺の話を聞いてくれていた。彼女はけっこう聞き上手で、俺は毎回つい長々と話してしまう。
「でも、まさか君が半魔だったとはね。私も、角が生えていないからてっきり人族かと思っていたよ。」
「トウカさんは、魔族に忌避感はないんですか?」
笑いながら話すトウカさんに、俺は疑問を持った。
そういえば、トウカさんは俺が半魔だと聞いても驚いた表情を見せただけで、怖がったりしなかったな、と。
「しないとも。それに、私たちの仲間にも魔族は何人かいるからね。機会があれば、会うことになるかもしれないよ。」
その言葉に俺は安堵してしまう。
さすがに、トウカさんに嫌われていたら数日はショックで寝込む自信がある。
奴隷から解放してくれた上に、こんな生活まで送らせてもらって、いつも笑いながら話しかけてくれた。
俺の中で、トウカさんはもういなくてはならない存在にまで大きくなっている。
俺が浮かない顔をしていると、トウカさんはそれに見かねてか、
「じゃあ、ちょっとこっちおいで。」
手招きしながら、呼びかけてくる。
俺は流されるようにトウカさんの横に行く。
「よーしよしよし。」
すると、トウカさんはいきなり俺の頭を撫でてきた。
トウカさんの方を見ると、笑顔を返してきた。
(やっぱり、勝てないなぁ。)
もちろん、肉体的にも今戦ったらトウカさんの圧勝で終わるだろうけど、精神的な面でもだ。
トウカさんの持つ包容力のようなものに、俺は逆らう気にはなれない。
それから数分間ほど、俺はされるがままに撫でられ続けるのだった。
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ギルドに行ってから、またもや一週間が経とうとしていた。
俺は最近は毎朝トウカさんと城壁周りを走ることを日課にしている。
今も、ランニングから帰ったところだ。
体力が切れたら「身体強化」で体力と足の速さを底上げしてから走ることを繰り返してきたことで、魔力なしでも城壁半分のくらいなら走り切れるようになっていた。
そして、健康を取り戻したのと、ここ二週間で魔力を使い続けたことで、俺の魔力量は以前の倍ほどになっていた。
トウカさん曰く、この増え方は異常らしい。
魔力量を抜かれたオリビアは、拗ねて訓練をよりスパルタにしてきた。理不尽だ。
また、オリビアとの訓練は継続させながら、俺はたまに町の外に出て魔獣を狩ったりしていた。
どうやら、魔獣を狩るためにギルドに登録する必要はないらしい。
ただ、登録しておけば、魔獣を討伐することで報酬を手に入れることが出来るんだと。
あの日以来俺はギルドに近づくことを避けている。またあんな目を向けられるのは勘弁願いたい。
トウカさんとオリビアも、そんな気持ちを察してかギルドの話はしようとしない。
だから、俺はその厚意に甘えてしまっている。
今更だけど、なんだか申し訳ない。
そんなことを考えていると、
「そっち行った。」
と、オリビアに声をかけられた。
俺は、こっちに向かってかなりの速度で走ってくる、黒い体毛に覆われた狼、通称ブラックウルフに向けて魔法を放つ。
「シャイニングボール」
そう言うと、俺の手に魔力が徐々に集まっていき、白色の光球を形作っていく。。
そして、魔力の玉が拳くらいの大きさになった時、それはブラックウルフに向けて物凄い速度で飛んでいく。
「ぐぎゃ、きゅぇぇっ」
光球に直撃したブラックウルフは、心臓のあたりにポッカリと穴を開けられ虫の息になっている。
もうじき死ぬだろう。
すると、茂みの奥からオリビアが駆けてくる。
「怪我はない?」
「大丈夫だ。もう一週間もこんなことを続けたら、流石に慣れてくるって。」
「もう!そういう油断が命取りになるの。すぐに慣れるのを止めて!」
「慣れるのを止めてって言われても困るんだけど。」
俺がそう言うと、オリビアは自身の失言に気が付いたのか、ふんっ、と言いながらスタスタと奥へ歩いていく。若干顔が赤くなっているのは気のせいではないだろう。
オリビアは、ああ見えて少し抜けているところが多々ある。
そこをトウカさんにいつもからかわれて、オリビアさんは拗ねて読書を始めてしまうのだ。
今回も、少し拗ねてしまったオリビアを俺は慌てて森の中へ追いかけていく。
さて、もう俺たちがなにをしているかが分かっただろう。
そう、魔獣討伐だ。
ここ一週間は「身体強化」を使い、魔獣を殴って討伐していた。
だが、最近魔力の操作が上達してきたことで、遂に昨日新らしく「シャイニングボール」を使えるようになったのだ。
よって、今日は試しに魔獣相手でその魔法を使いに、森にやってきていた。(思ったよりも威力が高くて引いたけれども。)
オリビアがうまくサポートしてくれるおかげで、俺は順調に討伐経験を積むことが出来ている。
(この調子なら、二週間後のダンジョンの調査任務までには二人に遅れないくらいの実力は身に着けられるだろう。)
そう思いながら、俺は魔獣を狩るのだった。
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