第六話 『冒険者ギルドへ②』
俺たちは固まっていた。
オリビアさんは、やってしまったとばかりに額に手をついてため息をついている。
だってそうだろう、いきなり自分に魔族の血が流れていると言われて、納得出来るわけがない。
「お、俺の種族が二つあるように見えるんだが。」
もうほとんど答えは出てしまっているが、一応俺の見間違いという一縷の望みに賭けてみる。
しかし、受付嬢さんからの返事がない。数秒沈黙が続いた後、
「ま、ま、ま、魔族ぅー-ー-ー-。」
そう叫びながら、奥の部屋に走って行ってしまった。
俺はそれをただ見送ることしか出来ない。
すると、いきなり部屋の空気が変わったのを感じる。
周りを見渡すと、他の冒険者たちから強い敵意や殺意がこもった目を向けているのが分かった。
「この国には、魔族に家族や友人、恋人を殺された人が多くいる。」
耳元でオリビアさんが説明してくれる。
はっきり言って、ここは物凄く居心地が悪い。
早く終わってくれと願いながら、沈黙が場を支配してから数十秒ぐらい経った。
すると奥から、かなりムキムキな五十代くらいの男性が歩いてきた。着ている服が少し小さいのか、服越しでも彼の筋肉のすごさがうかがえる
彼は、俺の前まで歩いてきて、
「半魔の少年が現れたと聞いたのだが、もしかして君のことかい?」
「い、一応俺です。」
彼の迫力に圧倒され、俺はつい敬語を使ってしまう。
「そうか。なら少し私についてきてくれ。」
そう言うと、彼はまた元来た道を戻っていく。
慌てて俺もオリビアさんもついていく。
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俺とオリビアさんは、受付より少し豪華な客間に案内された。
目の前には、俺たちを案内した先ほどの男性が座っている。
ドアの前には、強そうな兵士がドアを守るように立っていた。さらに、この部屋には窓がない。
(どうやら、かなり警戒されているみたいだな。)
魔族の血が入ってるというだけで、ここまで警戒されるのは少しばかりイラっとくる。
だがこの国の立地的に、こうなってしまうのは仕方がないのだろう。
目の前の男性の目にも、若干恐れが含まれている気がする。
「私は、この冒険者ギルドのギルドマスターをしている、ワンドソンだ。よろしく。」
「アベルだ。」
そう、俺たちは自己紹介をしあった。
「さて、君たちは何故ここに連れてこられたか分かるかね?」
ワンドソンは、まっすぐ俺を見つめ直して、そう問いかけてくる。
「俺が魔族だからか?」
「そうだとも。もっと言うならば、この国にどうしては入れたのかだけれどね。このでは魔族の侵入を防ぐために、入国する際の検問や国での兵士の巡回を非常に厳重に行っているんだよ。君のような人族と魔族のハーフだったとしても、見逃すことはないはずなんだ。」
確かにここ数日、町を歩いたらよく武装した魔力を持った人たちが歩いていたが、あれは巡回していた兵士だったのか。
だが、そうなると俺も分からないことになってしまう。
何故兵士の人たちは、魔力を持つ俺に気が付かなかったのだろうか?
こっちが気付いてるから、当然向こうも気付いているとばかし思っていたのだけれど。
「最近私の耳に、魔族たちが入国しようとしたという報告は入っていない。よって、君がどのような方法でこの国に入ったのかが気になっているのだよ。」
そんなことを聞かれても、俺にだってわからない。
というか、水晶で種族を調べるまでは俺が魔族だということすら知らなかったのだし。
オリビアさんは、反応的に何かを知ってたっぽいけど。
俺が悩んでる間に、オリビアさんが質問に答える。
「それは、これのせい。」
そう言うと、オリビアさんは俺のブレスレッドを見せる。
このブレスレットは、俺がキルゴットに入った時にトウカさんにもらった物だ。
「これは?」
「これは、認識を阻害させるアーチファクト。」
「ほぉ。」
「後、アベルは最近まで奴隷だったから、入国をしたわけじゃない。」
「な、なるほど。」
ワンドソンは、俺たちの(ほとんどオリビアさんが弁明していたけど)話を聞いて、しばらく考え込んだのち、
「一応筋は通っているな。それに、半魔だからか人への嫌悪感もあまりないらしい。」
その言い方だとまるで魔族は皆、人に嫌悪感を持っているようじゃないか。
「まあいいだろう。一旦はその言葉を信用しよう。だが、くれぐれもこの国で問題を起こさないでくれよ。」
そう言うと、ワンドソンさんは言いたいことは言ったとばかりに肩の力を抜いた。
そして、この部屋の扉の前にいた兵士たちに、
「おい、こいつらを入り口まで連れてってやれ。」
こうして、俺たちはギルドを追い出されたのだった。
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アベルたちが部屋を出た後の客間で、ワンドソンは震えていた。さっきまでは全力で虚勢を張っていたが、今はその虚勢を張る意味がなくなっていた。
(なんなんだあの魔力量は。)
彼は今ではギルドマスターをやっているが、昔はそこそこ名の売れた冒険者をやっていた。
しかし、彼は魔力を持っていない。
そのため、彼は長年の経験によって相手の魔力量を本能で感じれるようになっていた。
だからこそわかってしまった。アベルの規格外さを。
認識阻害のアーチファクトは、一度認識されててしまうと効果はなくなってしまう。
よって、ワンドソンはアベルの魔力を認識してしまった。
あの魔力は、人ひとりで持つことのできる出来る量を軽々と超えている。
(あれを放置しておくわけにはいかない。)
そう判断すると、彼はすぐ行動に出た。
「おい、アルベド。」
ワンドソンがそう言うと、天井から一人の女性の影が降りてきた。
全身黒タイツを着ており、顔は見ることが出来ない。
いかにもスパイです、といった雰囲気の格好だ。
「なんでしょうか。」
「あのアベルという半魔について調べろ。」
あの話し合いの時、ワンドソンはアベルの無自覚に放つプレッシャーをもろに受けていたことで、一刻も早く会話を終わらせようとしていた。
今となっては、もう少しアベルについて聞いておくべきだったなと若干後悔している。
「はっ。」
そう言うと、アルベドと呼ばれた女性は姿を一瞬にして消した。
ワンドソンも、これ以上考えても無意味だと思い、溜まっている仕事を始めるのだった。
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