第十六話 『え、試練?』
「まあなんだ、ここにはラシア様が居るから一旦表に出やがれ。」
気まずげにそう言うと、地竜はスタスタと外に出て行ってしまった。
俺も、先程の光景を見せられて毒気が抜かれてしまったが、一応地竜の言う通りにする。
気まぐれで殺されかねないからね。
一応ぺテさんが一緒に来てくれてるので、ある程度の安心感はあるけど。
「いいか、一応予言について知らないお前のために説明してやろう。ペテルギウス、頼んだ!」
そう言うと、隣にぺテさんが地竜の代わりにに話し出した。
まあ、あの地竜って話し方からして説明苦手そうだしね。
「竜族の王族に神の権能を持つ者が生まれし時、この地にリュートマスの性を持つ一人の半魔が現れるだろう。その者と共に、権能を持ち生まれた者を旅に出させよ。そうすれば、いずれ来たる世界の災厄に打ち勝つことが出来るだろう、という内容の物です。」
なんかけっこう胡散臭いな。
というか、リュートマスの性を持つ一人の半魔なんて限定的すぎやしませんかね?
まあ、ぺテさんが嘘を言っているようには見えなかったけど。
「で、分かったかよ?」
う~ん、リュートマスのところ以外があやふや過ぎなんだよな。
後、俺が予言の指す男だったら何すればいいのだろうか?
「ジオラストークは、もし君が予言の指す男だった場合ラシア様を君と共に旅に出させないといけないから、あそこまで不機嫌なんだよ。」
そういえば、ぺテさんの言ってた予言に、~この地にリュートマスの性を持つ一人の半魔が現れるだろう。その者と共に、権能を持ち生まれた者を旅に出させよ。~みたいな一節があったな。
じゃあ、さっき七皇竜二人にあやされてたラシアという小竜は、神の権能とやらを持っているのか。
「じゃあこうしようじゃねぇか、俺が今からお前にちょっとした試練を与える。それを無事乗り切ったら、旅にラシア様を同行させることを認めてやるよ。」
こっちの意見はガン無視で話を進めていくよなこいつ。
まあ、トウカさんたちのところに戻るのなら、神の権能とやらはきっと役に立つと思うけれども。
だが、その権能も七皇竜の与える試練に挑むのとはが割に合ってない気がするけど。
「なぁ、それでいいだろぺテルバルク!」
そう言いながらぺテさんに確認をとる地竜。
俺は連られて、この土地に来てからの唯一の味方であるぺテさんの方を見た。
「それくらいならばいいですよ、流石にあなた自身が戦うというのは無しですけど。」
「よっしゃっ!」
そう言うと地竜はいきなり人型から竜の姿に戻り、その足で俺を掴み上げた。
「じゃあぺテルバルク、お前の弟を借りるぞっ!」
「あっちが了承するのならいいですよ。」
「サンキュッ」
そう言うと、地竜は俺を掴みながらとんでもない速度で飛び始めた。
配慮なんて一ミリも感じられないんすけど。
すると、高速で飛びながら地竜が俺に話しかけてきた。
「知らないだろうから教えてやるよ。」
耳からというより脳内に直接語りかけられている感じだ。
「いいか、竜の世界には、名無しの竜、下竜、中竜、上竜、そして、その中で最も強い奴が俺たちの様に七皇竜と呼ばれている。。」
まあ、当然初耳だ。
そして、飛び始めてから数十秒くらい経った後、地竜は森の中でもかなり開けたところに下降しながらもこう言った。
「そんで、今からお前に戦ってもらうのは、その中の上竜だ。ぺテルバルクの弟だけどな。」
地面に着陸した地竜は、「ヴォォォォォー-」と、こっちの耳が張り裂けるような声を出した。
すると、森の木々をかぎ分けながら一人の小柄な男が歩いてきた。
「全く、狩りの途中だというのにいきなり呼び出さないで下さいよ。」
そう言いながら返り血を全身に身に纏っていながら歩いてくる一体の竜は、地竜程ではないが強烈な威圧を放っていた。
「まあまあ、そんな怒るもんじゃねぇ、クサンド。今回は一応ぺテルバルクの許可も取ってんだよ。」
あれ、許可取ってたっけ?
「はぁ~~、まあ兄様が許可を出したのなら僕からは何も言うことはありませんけど。で、要件は何ですか?」
クサンドと呼ばれた竜は、人型に戻りながら地竜にそう問いかけた。
兄弟だからか、クサンドの顔には若干ぺテさんに面影がある。
ん?
もしかして、これ俺がこの竜と戦う展開だったりしないか。
「ああ、お前にそこの男を一回でいいからぶっ飛ばしてほしいんだよ。」
「何でそんなことを兄様が了承したのですか?」
「それはだなぁ、」
そう言うと、地竜はクサンドに今までの流れをざっくり説明した。
「なるほど、彼があの予言の指す男ですか。」
そう納得した風に頷いたクサンドは、俺の方を見てこう言った。
「確かに、この森をラシア様と歩くのなら最低でも上竜レベルの実力は欲しいですね。」
そう言うと、クサンドから溢れるプレッシャーが急激に増加した。
「いいか、確かにあいつは上竜とは言ったが、もしぺテルバルクがいなければあいつは天竜になっていたはずだ。」
じゃあ、ほとんど七皇竜レベルじゃん。
「さらに、お前があの魔方陣の前で倒した竜は下竜だ。」
つまり、互角だった俺の実力は下竜くらいだといいたいのだろう。
「まあ、せいぜい死ぬ気で戦うんだな。」
そう言うと、地竜はぺテさんのいる家の方向に飛んで行ってしまった。
「マジですか。(この土地に来てから三回目)」
竜の名前に違和感を感じたら、直観力が凄いですね。
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