第十三話 『逆鱗』
「ヴォォォォォォー-」
俺が先程のこの世のものとは思えない光景に混乱していることなどお構いなしに、竜はこちらにブレスを放ってくる。
俺の「シャイニングボール」とは威力も速度も桁外れだ。
俺は、仕方なくこの序盤から奥の手を使用する。
普通、「身体強化」を体の限界を超えて使えば、全身が悲鳴を上げて体が比喩ではなく破裂する。
だが、半魔族である俺の体は人族の平均をはるかに凌駕する。
一秒に満たないほんの一瞬ならば、俺は肉体の限界を超えて使えるようになった。
俺はあのガルバを大きく超える速度でその場を飛びのく。
グッシャァァァーーーン
俺が元いたところには、少し小規模だが隕石でも落ちたと言われても納得できるほど大きなクレーターが出来ていた。
「なっ」
さっきから驚かされてばかりだ。
こんな見知らぬ土地に飛ばされて、いきなり竜が襲ってきて、竜の大群が上空を滑空していて、そして対峙している竜が規格外過ぎて。
強いとは知っていたが、これほどとは。
だが、戦う以外に道が無いのも事実。
当たって砕けろだ。
「シャイニングボール!」
この二週間で、ガルバ戦で使った直径五ミリくらいの大きさの「ミニシャイニングボール」を、俺は完全に使いこなせるようになっている。
あの鱗がどれだけ硬くても、所詮は鱗だ。
鱗と鱗の隙間に通してしまえば攻撃は竜本体に届くので、普通に攻撃は効くはず。
右手に作った三個の「ミニシャイニングボール」を、俺は奴の鱗の隙間に放つ。
「ギョェェェ、ゴヤッッツプエ」
そこまで奴はだめーしを受けた気配はないが、攻撃を食らったことに若干驚いている。
(この戦法は通用するぞ!)
そう思った俺は、奴の心臓を守っているであろう鱗と鱗の隙間を狙ってどんどん「ミニシャイニングボール」を打ち込むのだった。
............................................
.........................
...........
俺が竜と戦い始めてから、体感で二十分ほど経った。
お互いにもうほとんどボロボロだ。
奴は俺の「ミニシャイニングボール」を五十発ほどは食らっただろう、全身に出血が見られる。
「ミニシャイニングボール」は魔力の圧縮が小さいので速度は少し落ちる。
そのため、奴にけっこう「ミニシャイニングボール」を避けられてしまった。
だが奴は、致命傷ではないが重症と言っても過言ではない量の攻撃を受けた。
一方俺は、「身体強化」を限界を超えて何度も使用したので、もう魔力は枯れかけているし、外見上は目立った傷はないけれど体の中はボロボロだ。
お互いに満身創痍と言って差し支えない状況だ。
「ギャャャァァァォォォーー」
奴は今までと同じようにブレスを撃とうと振りかぶる。
俺も同様に「身体強化」を限界を超えて使用する。
そして、今まで通り避けた後、「ミニシャイニングボール」をブレスの の間に撃ちこみ続ける。
だが、今回は少し前回とは違う結果になった、いや少しではないか。
なんと、奴は空から地上に落ちてきたのだ。
俺はこの隙を見逃さない。
追撃の為に何度も「ミニシャイニングボール」を撃ち続けたけれど、一向に奴が動く気配が無い。
俺は罠を疑いつつも、全く動かない奴に近づき奴の顔を確認した。
すると、奴は泡を吹いて失神していた。
(なんか竜が泡を吐いてる姿ってシュールだな。)
そんなことを思いつつも、俺は何故奴が失神したのかを考察する。
そして、何となく奴の首あたりを見てみた。すると、
「あぁ~~、なるほどね。」
戦闘中は思い出しもしなかったが、竜には逆鱗という弱点があると言われている。
奴隷になる前に本でそんなことを読んだ気がする。
数年前のことだし思い出せなかったのは仕方ないけれど、これさえ知ってればもっと簡単に勝てたと思うと、後悔してもしきれない。
朗報には変わりないのだけれど。なにせ、
「まだ、上空にいた竜の群れについてはまだ何も解決してないからな。」
そう、もし今後ここを探索するのならば、ほか竜との対決は不可避だろう。
今回は運よく勝てたが、はっきり言って逆鱗にたまたま当たらなければ普通に負けていたかもしれない。
「よし、いくか!」
不安材料は山ほどあるが、とりあえずは竜から逃げるための拠点を探すことが今は大事だ。
俺は、自分に気合を入れるためにそう宣言した。
テスト期間なので、3/8まで休みます。
「面白かった!」
「もっと読みたい!」
と思ったら、
下の☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
作者のモチベーションになります。
また、ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願い申し上げます。