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崖っぷちの世界踏破 ~時を越えてでもあいつをぶっ飛ばす~  作者: Rough ranch
第一章  『テロリストの仲間入り』
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第十話 『戻ってくるから、絶対に!』


 俺がガルドを殺した日から、もう二週間は経った。

 ガルドを殺してしまったことで、何か起きるのではと内心ヒヤヒヤしていたが、この二週間は特に目立ったことも起きず、平穏な日々が続いていた。

 朝はトウカさんと共に走り、昼はオリビアと共に魔法の訓練をする。

 そうそう、先日ようやく俺用のベッドが届いた。

 奴隷だった頃を含めて、今までずっと床で寝ていたので、数年ぶりにベッドで寝たときは思わず泣いてしまった。

 そして、なんと今日ついにダンジョンの調査任務の日がやってきた。

 今日のために、この二週間さらに自分を追い込んで魔法訓練に取り組んできた。

 次にガルドみたいなやつと戦うことになった時に、トウカさんたちに迷惑をかけないために。

 その成果で、新たに魔法も使えるようになった。これを使えば、今日のダンジョン調査もよりスムーズに進められるだろう。


(こんな事じゃ足りないだろうけど、いつかトウカさんやオリビアに恩を返せたらいいな。)


 そんなことを考えていると、地下からトウカさんが上がってきた。


「おはよう。」

「おはようございます。」


 こんなありふれた会話だって、俺にはとても幸せな日常の一ページだ。

 こんな生活がいつまでも続いて欲しい、とそう思わずにはいられない。



.........................................


......................


.........


「えーそれでは、これよりダンジョン調査を始める。」


 俺とオリビアは、並んでトウカさんの話を聞いていた。

 時間はもう十時を回り、いい感じの時間になったので俺たちはダンジョンに潜ろうとしていた。

 今は、今回の調査の予定の最終確認だ。

 周りには多くの木々が立ち並んでいて、人っ子一人いない。


「このダンジョンには、数百年前に存在したと言われている知恵を持った竜族が残した遺産が眠っているという情報がある。」


 竜族というのは、強靭な身体性能と空中を自在に飛び回ることの出来る飛行能力を持つのに対し、理性を持たずにただ人に襲ってくる凶暴なモンスターだ。

 はっきり言って、数百年前に知恵を持つ竜族がいたなんて信じられない。


「私たちのチームは先遣隊なので、ダンジョンの安全性などの基本的なことが分かればいい。くれぐれも、深部に進み過ぎないように。分かったか?」

「「はい。」」


 そう締めくくると、トウカさんはダンジョンの中に入っていった。


 ダンジョンの中は少し肌寒く、発光源はないのに何故か明るい。

 行く前にもトウカさんにそういうダンジョンの特徴について聞かされてはいたが、人に聞くのと自分で体験するのとでは、実感が違う。

 ある程度進むと、一つの分かれ道があった。


「よし、では私はこっちの道を見てくるので、君とオリビアはそっちを調べてみてくれ。危なそうなところを見つけたら、私に伝えてほしい。」

「「はい。」」


 事前に、分かれ道があればこう別れると決めていたので、了承する。

 それから、分かれ道を進むと何やら壁に俺の読めない文字で、何かが書き記される道に出た。

 またその文字の周りには竜族に、人族が二人乗って、誰かを倒そうとしている絵が壁一面に描かれているようだ。

 違う。片方の人族には角があったので、おそらくは魔族だろう。

 この絵に何の意味があるのかは分からないけれども、おそらく竜族の残した遺産とやらに関係があるのは確かだと思う。

 絵を見ながら歩いていくと、今度は少し開けた空間に出た。。

 そして、この部屋の中央の床になにやら魔方陣らしき模様が刻まれていた。

 長年使われていなかったのか、少し埃をかぶっている。

 俺は、どうするのかをオリビアに尋ねる。


「トウカさんに報告するか?」

「うん。けど、ちょっとだけ魔方陣を確認してから。」


 そう言うと、オリビアは警戒心を高めながら魔方陣に近寄っていく。

 俺も、一応オリビアについていく。


「いい、魔方陣には絶対に触れないでよ。」

「分かってる。」


 そう言うと、オリビアを魔方陣を観察し始めた。

 魔方陣というのは、形やその模様に書かれている文字で大体の内容を確認できるらしい。

 もうすぐ、魔方陣の仕組みも習う予定だ。

 オリビアが魔方陣を調べている間、俺はこのあたりのことでも少し調べておこうか。

 そんなこんなで、オリビアが調べだしてから三十秒ほど経つと、


「どうやら、ここには転移魔法が書かれてる。」


 と、いきなりそう言いだした。


「どこに飛ばされるの?」

「そこまで細かいことは分からなかった。でも、トウカならわかるかもしれない。」

「じゃあ、トウカさんに報告しにいくか!」


 俺がそう言うと、オリビアさんは来た道を戻っていく。

 それに合わせて、俺もいったんこの部屋を調べるのを後回しにして、戻ろうとした。

 しかし、その時俺の周りが急に光り出した。

 俺は何が起こっているのかが分からず、足元を見てみた。

 すると、足元にはオリビアが調べたやつとは別に、もう一つの魔方陣を踏んでしまっていた。

 こっちの魔方陣も大量の魔方陣を被っており、踏むその瞬間まであることが分からなかった。


「あ、アベル!」


 オリビアは、すぐさま「身体強化」を発動して俺の前まで物凄い勢いで走ってきた。しかし、


「痛っ、」


 オリビアは俺の周りの光の壁にぶつかると、そのまま奥に弾き飛ばされてしまった。

 俺も、この魔方陣の上から出られない。

 周りの光の壁は徐々に光を強くしていき、もうほとんどオリビアが見えなくなっていた。


「い、行かないでぇ、アベルぅ。」


 オリビアのそんな弱弱しい声なんて初めて聴いた気がする。

 きっと、この魔方陣も転移魔法が刻まれているのだろう。

 だから、飛ばされたらきっと長い間会えなくなる。それに、死ぬ可能性だってある。

 そんなことは構わず、光は俺を飲み込んでいく。


「せ、せめてこれだけでもっ!」


 そう言うと、オリビアさんの方から何か飛んできた。

 周りの光が強くてそれが何かは分からないけれども。


「何があった、こっちから強い魔力の波動を感じたぞ!」


 トウカさんの焦ったような声が、この空間に響いてきた。

 しかし、もう間に合うことはないだろう。直感でそう悟った。

 なので、俺は叫ぶ。


「トウカさん、オリビア、絶対戻ってくるから、それまで待っていてくれ!


 たとえ何年かかっても、必ず戻るから!」


 最後の方は、多分届いていなかったと思う。

 だが、彼女たちの元に戻ってくるという覚悟は本物だ。

 必ず戻る、そう心に決めながら、俺は飛ばされていくのだった。





 こうして、俺たちの日常は脆くも崩れ去ったのだった。





第一章完結です!

いや~ホントに長かったですね。

小説投稿を初めてから一週間ぐらいしか経ちましたが、それだけでも毎日投稿はめっちゃきつかった。

ただ、評価や星がつくことをモチベーションにしながら、何とかやってこれた気がします。


「面白かった!」


「もっと読みたい!」


と思ったら、


作品への応援お願いいたします。


作者のモチベーションになります。


また、ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願い申し上げます。


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