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9 光魔法で無双しました。

バトルは安心・安全の無双でお送りします!

 

「どこに行くのですか? メルル」

「この近くに攻略対象者がいます」

「それって例の乙女ゲームですか?」

「はい、イケメンがいます!」


 と、答えた私の身体は、きらきらの光りに包まれていました。

 

 ──光魔法 光速移動__ スピードオブライト

 

 あっという間に私は、目的地につきました。

 まさに、秒、です。

 そこには、一台の馬車があり、見るからに何かヤバいものを乗せているような、嫌な雰囲気がただよっていますね。

 前にまわると、バカでかい大男があくびをしています。

 こいつが馬車を動かす、御者なのでしょう。

 とんでもなく巨体ですね、馬が可愛そう。

 

「ふわぁー、ったく、早く赤ん坊を連れて戻ってこいよな」


 その一言で、先ほどやっつけた悪者の仲間だとわかり、私は笑顔になりました。

 うふふ、これでまた強いやつをいじめられる!

 おや? 光の神ポースが消えました。

 自分の姿を、他の人間に見られたくないのでしょうか?


「まぁ、いっか……それよりも、この馬車のなかに攻略対象者がいるような気がします」


 クンカクンカ

 

 と、私は鼻を鳴らして、探します。

 うーん、このあたりからイケメンの香りがしますね。

 

「やはり、馬車からです!」


 私は、いっきに馬車のなかに乗り込みます。

 するとなかには、一匹の黒猫ちゃんがいるではないですか!

 

「きゃあん、かわいいー!」


 私に警戒しているのか、シャー、と威嚇してきます。

 驚いたイヴは、まだ赤ちゃんなので泣いてしまいました。

 

 オギャア、オギャァァァ

 

「あ、泣かないで、よしよーし」


 背中をトントンと叩いてあやしますが、なかなか泣き止みません。

 いきなり暗いところに入るのも、よくないのでしょう。

 私はいったん、外に出ました。

 すると、また日陰になります、え? なぜ?

 見上げると、巨体の男が私を睨んでいました。

 ちょっと、怖いんですけど……。 


「こ、こんにちは~」

「おい女、おまえはなんだ?」

「……あ、通りすがりのものです」

「その赤ん坊は? まさか俺の仲間から奪ったんじゃないよな?」

「この子は私の赤ちゃんです」

「そうか、それならいいけど……」

「では、ごきげんよう」

「おい、ちょっとまて! なんで馬車のなかに入ってた? このなかにいるのは希少価値の高い黒猫の獣人がいるんだぞ」

「へー、そうなんですね」

「おう、俺様はパイザック様に一目置かれる奴隷商人だからな、このくらいの獣人を捕まえるのなんて、朝飯前よ」


 ふぅん、と私は鼻を鳴らしました。

 本当に男性って悪いことを自慢げに話しますね、そんなもの武勇伝でもなんでもなく、ただのウザい話ですよ?


「おい、よかったらお茶しないか、赤ん坊つきでも俺様は気にしないぞ! がはは」

「……えっ?」

「おじさんとデートしよう、美味いもの、なんでも食べさせてやるぞ」

「無理です」

「そんなこと言わずに、さあ、飯食ったらホテルに行こう、金ならいくらでもやる」


 それ、パパ活か?

 

「お断りします」


 そう言って私は、手で拳銃をつくりました。

 

「なんのまねだ?」

「悪者をぶっ倒すまねですっ! ライトビーム」


 バキュン!

 

 と、凄まじい勢いで飛ぶ光りの弾丸。


「エンブラァァァ」


 という、意味不明な断末魔を残し、悪漢はぶっ倒れました。

 狙ったところはもちろん、ヘッドショットです。

 楽しかったのかイヴも泣き止んで、もうごきげんな笑い声をあげていますね。


「ざまぁでちゅね~」

「バブバブー」


 さてと……。

 私はすぐに馬車の荷台に乗り込むと、黒猫ちゃんの救出を急ぎました。

 

 にゃーん

 

 と鳴いている黒猫ちゃん、ああん、きゃわいい。

 ん? 鎖に繋がれているようですね、すぐ外してあげます。

 

 バキュン、バキュン、バキュン

 

 光の弾丸で鎖を破壊し、見事に黒猫ちゃんの救出に成功しました。

 私の足にすり寄ってくる黒猫ちゃん。

 ああん、名前をつけてあげたいですよぉぉ、好き。

 すると、ここで光の神ポースのお出ましです

 

「メルルってすごいね! 前世で何をやっていたんですか? 探偵? 警察? それとも軍人だったりして」

「そんな強そうな職業じゃありません、どこにでもいる平凡なOLでした」

「オーエルって何?」

「うーん、パソコンをカタカタする人って感じかな」

「よくわかんないんですけど、ようはゲームオタクですか?」

「そうね、家に帰ればゲームばかりしてました。彼氏もいないし友達もオンラインにしかいませんし、家族と離れてひとり暮らしでしたし……ああ、前世を思い出すと泣けてくる」

「何歳だったの?」

「えっと、たしか24歳? だったような……ってあれ? 前世ってことはそんな若さで死んでるの? 私の前世……ぴえん」

「いや、これを見てください」


 ピコッ

 

 もうひとつウィンドウが現れました。

 そこにいるのは、ベッドで寝ている……前世の私?

 

「これって私の前世?」

「そうです。どうやら寝ているだけのようですね、死亡は確認できませんでした」

「え? どういうこと?」

「寝ているとき、人間の脳は思考を停止しているので、まあ、死んでいるのと同じですね」

「はい?」

「こんな夢を見たことないですか? どこかの国のお姫様になっていたり、勇者になっていたり」

「あ、子どもの頃はよくありましたね、夢のなかで大活躍するんですが、起きるとなぜか忘れているんです」

「今、まさにその現象が起きているのです」

 

 あ、そういうことね、と私はポースの説明に納得しました。

 あまり深く考えてはダメですよね? ごめんなさい。

 ここは剣と魔法のファンタジーの世界、さらに乙女ゲームっぽいのですから。

 私は、大いに楽しみまくりますよぉ、イケメンたちとっ!

 うふふ、うまくいけば、商人ルートで飯テロしてやりますから、お楽しみにねっ!

 

「メルル、さっきから何をぶつぶつ言っているのですか?」

「うふふ、なんでもない」

「本当に変な女の子ですね、メルルって」

「えへへ、ほら、黒猫ちゃん、森へおかえり~」


 私はそう言って、黒猫に手を振りますが、なかなか行こうとしません。

 なぜ? と私が首を傾けていると、誰かが近づいてくる気配を感じました。

 

 ヴゥン

 

 光の神ポースは消え、前世の私を映していたウィンドウも消えました。

 近づいてくる人物は、

 

「こ、これって、メルルちゃんがやったの?」


 と声をかけてきます。

 その、おどおどした声で、もう誰かわかりますね。

 

「アルト先輩……まだ帰ってなかったんですか?」

「うん、なんか男の悲鳴が聞こえてきたからさ、気になって」

「……うふふ、それ私がやりました」

「ってか、その赤ちゃん可愛いねぇ」


 バブー

 

 と、笑うイヴは、ジタバタと手を振ります。

 

「ねぇ、羽、生えてんじゃん、その赤ちゃん」

「……あ、これは、その」


 ヤバい、この状況、どう説明したらいいのでしょう?

 

 どうしよー!

ブクマ、ありがとうございます!

増えてると嬉しいなぁ〜

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