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13 爆弾を処理します!

ターニャとクリスは、幼なじみです。(メルルも)



 ターニャさんを見つめるお兄様は、ごくりと息をのんでいます。

 久しぶりに彼女と会って、緊張しているのでしょうか?

 いや違いますね、白猫を観察していました。

 やはり、魔法の効かない首輪がついています。


「ターニャ、よく聞けよ、その猫の首輪に爆弾が仕掛けられているかもしれない」

「……え?」

「俺を信じてくれ! とりあえず猫をこちらに……」

「わかりました」


 お兄様を見つめるターニャさんの瞳は、少しだけ潤んでいるように見えました。

 お兄様は猫をターニャさんから受け取ると、片膝をついて猫を降ろします。

 

 にゃーん

 

 白い毛並みの猫は、ジアスを見つめながら、にゃんにゃん鳴いていました。

 ジアスの目には涙があふれ、お兄様の腕をつかみます。

 

「お姉ちゃんを助けてください!」

「わかった」


 お兄様は、腰ベルトからダガーを取り出すと、切先を首輪のつなぎめに入れます。

 白猫は、ピタリと動きを止め、お兄様を見つめていました。

 ダガーの動きが狂えば、喉元に突き刺さってもおかしくありません。

 お兄様、頼みますよ。

 

 ガキン!

 

 鈍い音をあげて、首輪は取れました。

 しかし、何やら様子が変です。

 外された首輪は、不気味な光りを放ち始めました。

 アルト先輩が、指をさして叫びます。

 

「おい、外した衝撃で爆弾が起動したんじゃないか、これ?」

 

 !?

 

 謁見の間に戦慄が走りました。

 ターニャさんは、サッとお兄様の元に駆け寄ります。

 シスターズは、頭を抱えて、狂ったように泣き出しました。

 死にたくない! もっと遊べばよかった! ケーキを食べとくべきだった!

 そのようなくだらない懺悔をしています。


「ターニャすまない、久しぶりに会ったのにもうお別れのようだ」

「……!?」


 ターニャさんから離れたお兄様は、何を血迷ったのか首輪を持ちました。


 まさか、まさか、まさか!

 神殿のなかは魔法が使えないから、お兄様は……。

 

「クリス? 何をするの?」

「ターニャ……好きだ、君に恋をしてたみたいだ」


 お兄様は、そう告白をすると、窓に向かって走りました。

 爆弾を持って、窓を突き破るつもりのようです!

 ダメ、ダメ、ダメ、ダメ!

 お兄様が死ぬなんて、そんなの絶対ダメ!

 ターニャさんと恋人になって、これからもっともっと楽しいことが起きるはずなのに……。

 ああ、神様、ひどい。

 シスターズ、首を垂れることしかできないの?

 ターニャさんの眼差しから、涙がこぼれ落ちています。

 アルト先輩は、悔しそうに唇を噛んでいます。

 ジアスと白猫は抱き合って、身体を震わせています。

 私は……。

 

「お兄様ぁぁぁああ!」


 叫びました。

 そして、ガシャンと窓を突き破る音、お兄様の身体が美しい青い空に舞っています。

 しかし次に起こった現象は、まったくもって地獄でした。

 

 ドォン!

 

 耳をつんざくほどの爆音、そして大聖堂が揺れ、すべてのステンドグラスが割れ、まるで宝石のように粉々に砕け散っていきます。

 宙で爆発した煙は、黒く焦げた香りをただよわせていました。

 謁見の間では、みんな一瞬の出来事だったので、うまく頭で理解することができず、泣くことすらできないで、ただ呆然と立っているのがやっとでした。

 

 私は……。

 

 ぱっちりと目覚めたイヴを抱きしめながら、

 

「戻して、時間を戻して……」


 と、魔法を唱えていました。

 少しでいいから、少しだけでいいから、過去に戻せる魔法があったら、お願い……。

 すると!

 

 ヴゥン

 

 イヴが、突然光り輝いて、宙に浮かびあがりました。

 そして、パァっと白い世界が広がったかと思うと、また現実の世界が戻り、床に散らばったガラスが浮いていきます。

 

 ──光魔法 #逆再生__リバース__#

 

 ガタガタ、ガタガタ、とステンドグラスだけじゃなく、砕けた壁や落ちた絵画、すべてが元に戻ろうとする不思議な力が働き始めました。


「すべてが過去に戻っている?」


 それはまるで、世界が巻き戻し再生を見ているようでした。

 

 ドォン


 また爆発音が鳴りました。

 空にただよっていた煙が塊に戻っていく。

 お兄様が飛んでいる姿を確認できます

 そして、神殿のなかに戻っていきました。

 もちろんガラス窓を逆に直しながら!

 

「す、すごい……」


 しかし、みんなにはこの現象が見えていないみたいです。

 みんなの動きですら、逆再生していました。

 自由に動けるのは、どうやら私とイヴだけ、みたいですね。

 そしてこの魔法は、私とイヴの共同魔法らしく。

 ウィンドウを開いて、私とイヴのマジックポイントを見てみたら、

 

【 イヴ  MP  0 】


【 メルル MP 45 】


 でした。

 私は残り45ポイントですか、おっと、さらにジリジリとポイントが減っていますね。

 

 ティン

 

 神秘的な音が鳴り響くと、逆再生の魔法が止まりました。

 きらきらと世界が輝き、綺麗な神殿に戻っています。

 神殿はジャマー石でつくられているので、直れば、また再び魔封じの建物になりますよね。

 光魔法リバースが止まったのは、そのためでしょう。


「クリス? 何をするの?」

「ターニャ……好きだ、君に恋をしてたみたいだ」


 お兄様は、そう告白をすると、窓に向かって走っていきます。

 爆弾を持って、窓を突き破るつもりのようです!

 

「はっ!?」

 

 さっきと同じことの繰り返しですね、これでは。

 ダメ、ダメ、ダメ、ダメ!

 お兄様が死ぬなんて、そんなの絶対ダメ! 

 私は、お兄様の手から爆弾をかっさらいます。

 キョトン、とするお兄様の顔は、生まれて初めて見ました。

 アルト先輩が、

 

「メルルちゃん!」


 と大声で叫んでくれました。

 私のことが心配なようですね。


「大丈夫、まかせてください、アルト先輩!」


 もうお兄様を死なせない!

 

 私は爆弾を持って窓を開けました

 外なら魔法が使えますからね。


「いってきます!」


 私はそう言って、窓から飛び降ります。

 みんなは、びっくりした顔をしていました。

 

 ヒュウ

 

 窓から飛び降りてみると、ジェットコースターと似ています。

 最初は、ドキッとしましたが、すぐに気持ちは落ち着きました。

 私には、爆弾を処理するという使命がありますからね! 


 ──光魔法 ライトボール

 

 私は爆弾を光の玉で包み込んで、右手で拳銃をつくりました。

 風が吹く落下するスピードのなか、左手でイヴを抱いているので、非常に身体を動かしにくいですが、なんとかやりきります。

 キャキャ、と笑うイヴの笑顔だけが、今の私に元気を与えていますよ!

 ありがとう。


「飛んでけ! ライトビーム!」


 爆弾を包んだ光の玉を、思いっきりライトビームで撃ちます!

 すると光の玉は、ものすごい勢いで、グングンと空高く飛んでいきます。

 そして、太陽の日差しに照らされると……。

 

 ドォォォォン!

 

 すさまじい爆発音が、都市リトスの上空で響きました。

 これには神殿にいた観光客のみんなが、いっせいに顔をあげて驚いています。

 ふぅ、よかった……。

 爆弾はこれでいいでしょう。

 あとは私が、着陸に失敗しないようにしなくてはなりませんね。

 今の状態は、ふつうに高層ビルから飛び降りたようなものですから、地面に落ちたら即死が待っています。

 よし、やってみましょう! 

 

 ──光魔法 #光速移動__ スピードオブライト__# 

 

 私の身体は光りとなり、空間を移動することができます。

 着陸の途中で、マジックポイントが尽きないことを祈るばかりですが……。

 

 ダン!


 やった、着地成功です。

 ここは神殿のなかにある庭園のようですね。

 色とりどりの花壇、綺麗なアーチを描く噴水、さわやかな風がなんて心地いい。

 ああ、爆発があったことが嘘のように、穏やかな自然の風景が流れています。

 

「あの人……飛んできた?」

「ウソ……」


 と、数人の観光客に見られて驚かれましたが。

 まあ、しかたないでしょう。

 マジックポイントが気になったので、ウィンドウを開きます。


【 MP 0 】


「危なかったねーイヴ! 死ぬかと思いました……ふぅ、やれやれ」

 

 ほっと、私は肩の力が抜けました。

 腕のなかのイヴは、キャキャとはしゃいで青い空を指さしてます。

 ジェットコースターみたいな空中遊泳が、とても楽しかったでしょう、

 

「なかなかスリルがあって楽しかったですね、また空を飛びましょう!」

「バブバブー!」


 はぁ、よかった……これで一件落着ですね。

 

 ぱちぱちぱちぱち

 

「ん?」


 突然の拍手の響きに、私は振り返りました。

 するとそこには、黒装束の人が立っています。

 目元まで覆った黒いフードからのぞく鼻筋は綺麗で、唇は女性のような微笑みをしていますが、男なのか女なのか?

 この人物はまったくもって性別不明です。

 そう、光の神ポースのように……。

 

「誰?」


 私が質問すると、ぱちぱち、と拍手していた手が止まりました。

 その手首には禍々しいタトゥーが描かれてます。

 魔族か? 

 いや、聖石は無事なので結界は壊れていないから人間でしょう。

 あ! 神の可能性も?


 ニヤリ


 と笑う黒装束は、そのやけに美しい唇を開いて、言葉を紡ぎ出しました。

 

「とても綺麗だ……」

投稿する時間がテキトーなぬこまるです。

そんななかブクマしてくれた読者様、ありがとうございます!


次回は、バトルシーンあります。

お楽しみくださいませ!

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