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12 パイザックの狙いがわかりました。

この異世界では、魔力が蓄積された魔石によって、魔道具が開発されています。

車や建物などは、すべて魔法で作られており、いわゆる電気と同等の役割です。

私たちの世界で言うと、メルルたちは産業革命時代の文化レベルで、生活をしているようですね……。

 

「わー! すっげぇなー!」


 車の窓を開けて、まるで子どもみたいに叫ぶアルト先輩。

 流れる白亜の建造物を見つめるグルグル眼鏡が、きらりと光りました。

 ジアスは、猫耳をふるふると震わせて、街の喧騒を聞いているようです。

 イヴは、まだ私の腕の中で寝ていますね。

 本当によく寝る子。

 お兄様は、ずっと本に夢中です。

 どんな本を読んでいるのでしょうか、どれどれ?


 【悪役令嬢のゆったり異世界旅行】


 な、なんですかこの本は? ラノベでしょうか……。

 そんなことより、目的地に着きましたよ!

 

 ──都市リトス


 城壁のなかに、美しい白亜の建造物が並んでおり、中央には女神をたたえる大聖堂があります。


「どうですか? お兄様、二年ぶりの故郷は?」

「もうそんなになるか?」

「はい、魔法学園中等部の卒業式が終わって以来ですよ」

「……ふむ、本当に車で一時間だな、はやい」


 と言って、パタンと本を閉じます。

 どうやら、一冊読み終わったようですね、ラノベが。

 

「なかなか有意義な時間だった、車とはいいものだな」

「はい、車窓を眺めているだけでも、世の中の流れが感じとれます。何が流行っていて何が廃れていくのか……」

「ほう」

「レイガルド王国の西に位置する辺境都市リトスは今、王都イディオンをしのぐ勢いで発展をしています、ご覧ください、あの建物の高さを!」

「たしかにそうだな、綺麗に舗装された道路も素晴らしい。これは滑らかな石でできていて、まるで鏡のような美しさが都市じゅうに伸びている。外を見れば、もはや馬車より車の交通量のほうが多いのではないか?」

「はい、王都と違って他国との交易が盛んですからね。ゆえに法律もゆるいのです」

「ふぅん、ではターニャは相変わらず政治には口を出していないわけだ」


 はい、と言った私は、遠くの空を眺めました。

 そちらに見えるのは、都市の中央に位置する神殿。

 頂点に輝く女神の像が、きらきらしてまぶしいです。

 

「メルル、あれはなに?」


 ジアスが、それを指さして聞いてきます。

 

「あれは、土の神オロスを祀る神殿です」

「へー、でかいね」

「はい、あの神殿には巨大な聖石が置かれ、魔族の侵入を防ぐ結界を張ってくれています。都市リトスの最重要機関であり、絶対に破壊されてはならないものです!」


 なぁ、とアルト先輩が声をあげます。

 

「ターニャって誰だ? クリスくんの恋人?」


 ブッフォーー

 

 あらやだ、お兄様は飲んでいた紅茶を吹きこぼしてしまいました。

 そうとう動揺しているようですね、これは面白い。


「ターニャさんは都市リトスを守る聖女です。神殿に住み込みで聖石に魔力を施してくれているのですよ。なので、プライベートがないわ……といつもぼやいております」

「ふぅん、で君の兄とターニャの関係は?」

「幼なじみですね、小さい頃はよく遊んでいました」

「なーんだ、恋人じゃないのかぁ、つまんなーい」

「たぶんターニャさんはお兄様のこと大好きだと思いますけどね……あ、言っちゃった!」


 本当か!? とお兄様は立ち上がりますが、ここは車の中です。

 

 ごつん!

 

 鈍い音が車内に響きました、はい、お兄様の頭にタンコブができていますね。


「いってー!」

「クリスくん、まあ、ポーションでも飲んで落ち着きたまえ」

「ゴクゴク、オウェー! これ消費期限切れてるぞ、っぺっぺ、まっず!」

「ごめーん! おわびにジアスくんのお姉ちゃんを救出したら、ターニャさんへ告白しに行こう、僕もいっしょにいってやる」


 コクリ、とうなずくお兄様。

 なぁんだ……やっぱりお兄様もターニャさんが好きだったのですね。

 これは、寿です。

 妹として、盛大に祝ってあげることにしましょう!

 そんなやりとりをしていると、ジアスの様子がおかしいので、私は肩を叩きました。

 

「大丈夫? ジアス」

「感じる、お姉ちゃんの匂いを強く感じる!」

「どこ?」

「あの神殿からだ!」

 

 え?

 

 車内に戦慄が走りました。

 アルト先輩が、うーんと頭をかきむしります。

 

「お姉さんは、パイザックの支社で監禁されていると踏んでいたが、違ったか……」

「あっちこっちで獣人の匂いはするけど……お姉ちゃんの匂いは、あの神殿からだ!」

「よし、行こう」


 アルト先輩は、キリッと神殿にそびえる女神像を見つめます。

 グルグル眼鏡が少しだけズレて、かっこいい黒い瞳が光りました。

 するとお兄様が、うーん、とうなりをあげます。

 

「パイザックが神殿に……まさか!?」

「どうしました、お兄様?」

「パイザックは聖石を破壊して結界の力をなくし、魔族を都市に入れたい……そう考えているのではないか?」

「そんなことしたら都市リトスがめちゃくちゃに!」

 

 ピコッ

 

 私は光魔法──ウィンドウを放ち、マップを開きます。


「すごいな、神殿が模型のように立体的に見える……あ、ここかな、ターニャの部屋は? ブツブツ……」

「お兄様? そんなことより安心してください」

「ん?」

「神殿は魔力無効のジャマー石でできており魔法はいっさい使えません。そして頂上にある聖石の部屋にいくためには、とんでもない重さの聖女の扉を開けなくてはなりません。さらに腕っぷしの強いシスターズが守っているので、聖石のセキュリティは完璧ですよ!」

「たしかに……パイザックの狙いがわからん」


 すると、ふふふ、とアルト先輩は不敵な笑みを浮かべました。

 

「そこで猫の出番じゃないのか?」

「え?」

「そのターニャという聖女がパイザックが用意した猫を抱っこして聖石の部屋に行ったら……ドカン! と爆発なんてことは?」

「アルト先輩……天才! パイザックの狙いはそれですよ!」


 血相を変えたお兄様は、アルソスに指示を出します。

 

「アルソス! 神殿を目指してくれ!」

「はい! 坊っちゃま」


 執事アルソスの運転は、グングン加速し、馬車や他の車をジグザクに抜き去り、あっという間に神殿の駐車場に車を停めました。

 スピード違反はいけませんよ。

 

「運転ご苦労様、アルソス」

「ふぅ、なんの、我が生涯はメルルお嬢様を支えることが生き甲斐ですから」

「またまた~嬉しいことをいいますね、アルソス」

「ふぉふぉふぉ」

「うふふ」


 なんて笑い合いながら、私たちは車から降りました。

 見上げる神殿は、相変わらず巨大で、まるでラスボスでもいるかのようにそびえたっています。

 しかしそれにしても、まわりには観光客がいっぱいで、とてもジアスのお姉さんが捕まっているような、暗い雰囲気はどこにもありません。

 青い空のなかには、白い鳥たちが羽ばたいています。

 はい、平和ですね。

 

「本当に神殿からお姉さんの匂いがするのかい? ジアスくん」


 お兄様の質問に、ジアスは真剣な目つきでうなずきます。

 匂いには、絶対の自信があるようですね、ジアス。

 私は、アルソスに言って、車にある着替え用の服を取ってこさせました。

 だって彼らの今の格好を見てください。

 ジアスはデカシャツ一枚。

 お兄様は腹筋&胸板のチラ見せ状態。

 いくらなんでも、目の保養すぎてヨダレが出ますからね。

 

「お嬢様、この黒のワンピースなどいかがでしょうか?」

「うん、ありがとう」

「ところで、抱っこしている赤ちゃんは?」

「……あ、わけあって私が育てることになりました」

「そうですか……よく寝ていらっしゃる。赤ちゃんのときのメルルお嬢様を思い出します」

「うふふ、私ってこんなに可愛かったのね」

「もちろん、今でも可愛いですがね」


 アルソスの冗談を微笑みで返した私は、ワンピースをジアスに渡しました。

 

「とりあえず、私の服に着替えてください」

「わかった」

「あ、下着も欲しいですか? 私のでよければ……はけるかしら?」

「いらない」

「あら、そうですか……見た目が可愛いのでつい……」


 するとジアスは突然、服を脱いで全裸に。

 そして、お兄様に服を返します。

 私の顔は、みるみるうちにまっ赤になってしまいました。

 

「ジアス! トイレで着替えてきて……」

「え?」

「いいからトイレで!」

「わかった」


 走り去るジアズ。

 数人の観光客である若い女性に見られましたが、美少年の全裸はご褒美だったのでしょう。

 きゃーなんて言って喜んでいます。

 トイレで着替えたジアスは戻ってくるなり、鼻をヒクヒクと動かすと、ズンズンと歩き、やがて走り始めました。

 

「お姉ちゃんの匂いが強い! こっちです!」


 私たちは、全速力でジアスを追いかけました。

 彼が進んでいく神殿のなかは、参拝客でいっぱいです。

 中央の広間を通り過ぎ、螺旋階段をグルグル駆け上り、ズンズンと長い廊下を走ります。

 が、しかし!

 

 ──聖女の扉


 ドラゴンの紋章が描かれた扉の前で、シスターズに止められました。

 総勢十名の女戦士たちが、私たちを睨んでいます。

 私、お兄様、ジアス、そしてアルト先輩は、ピタッと走るのをやめます。

 腕の中に眠るイブが、少しだけピクッと動きましたが、また動かなくなりました。

 本当によく寝ますね。

 

「……ぽっ」

 

 シスターズはお兄様の顔を見るなり、頬を赤らめました。

 ははん、お兄様の美貌は、まだまだ故郷でも健在でしたね。


「おかえりなさいませ、クリス様」


 いっせいに首を垂れるシスターズ。

 うむ、なんて答えるお兄様は、シスターズのリーダーに話しかけます。

 

「シスターズよ、ここを通してくれないか?」

「どうぞどうぞ、ターニャ様がお待ちかねですよ」

「うむ、ときにシスターズ」

「はい」

「猫を見かけなかったか?」

「猫? クリス様、よくご存知ですね。ターニャ様が猫を飼いたいとおっしゃるので、先ほど商人が持ってきたところですよ」

「いかんっ!」


 突然、お兄様が大きな声をあげたので、シスターズはびっくり。

 

「はやく聖女の扉を開けよ!」


 シスターズは、みんなで力を振り絞って扉を押します。


「うんとこしょ、どっこいしょ!」


 あのぉ、その掛け声いります?

 と私は心でツッコミつつ、開いた扉を全力で走る抜けるお兄様のあとを追います。

 向かった場所は、聖女との謁見の間。

 ここは神殿の頂上にあり、きらめく天窓からは女神像が見ることができました。

 そして聖石があるのは、この部屋の奥、つまりもう目と鼻の先です。

 

「お姉ちゃん!」


 ジアスの大きな声が、天界に届きそうなほど神殿に響きます。

 私たちの目の前には、ずらりと並ぶシスターズ。

 光りのカーテンの奥にいるターニャであろう人影は、玉座に座っていました。

 聖女は滅多に人前に姿を見せないというルールですから、当然ですね。

 

「お姉ちゃん!」


 ジアスがさらに叫ぶと……。

 

 チリン

 

 鈴の音が響きました。

 ゆっくりと玉座から立ち上がる聖女ターニャ。

 その腕の中には、しっぽをくねらせた猫の影のシルエットが見えます。

 ターニャは腕を伸ばし、光のカーテンを開きます。

 そして姿を現したのは、可憐な美少女。

 その綺麗な水色の髪は、腰に届きそうなほど長く、透き通るような白い肌に太陽の光りが、きらきらと反射していました。

 久しぶりにターニャさんを見ましたが、相変わらず美しいですね。


「あら、クリス……それにメルルちゃんまで、どうしたの突然?」

おお! 評価が増えている!

ポチッと⭐︎してくれた読者様、ありがとうございます!


あ、ども、ぬこまるです。


ここまで読んでくれる読者様がいるかどうかわかりませんが……。


もしいたら……きゅんでーす♡


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