表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕と私の転生事情  作者: 日向こなつ
1/9

1話目

「キリア、そろそろここを切り上げて屋敷に戻らないかい?一刻も早く冷たい水を飲まなきゃ倒れてしまいそうだよ。」


共に作業をしていたガーデナーのアルトさんに声をかけられる。

確かにこの炎天下の中作業していたら、熱中症になってしまう可能性がある。

私は熱中すると時間や周りを気にせず作業を続けてしまう事があるので声をかけてくれて助かった。


「そうですね、だいぶここの花壇も整いましたし……」


急に立ち上がったせいかふらっと目眩がし、目の前が真っ暗になった。

遠くで私の名前を呼ぶ声が聞こえるがそのまま体が落ちていく。


このまま倒れてしまったらせっかく植え替えた花達を押し潰してしまうなどと思いながら。



暗闇の中私は……。

いや、僕は前世の記憶を思い出した。

前世の僕は高校生であった。

何も取り柄のない男子高校生で、成績も中の中。運動能力もそんな感じ。唯一、他の人とは違うなと思う事といえば庭いじりが好きな事。母親が花など好きだったので、一緒に花を植えたり、野菜を育てていたりしていたくらいだ。

そんな僕は17歳で亡くなった。死んだ原因は交通事故だ。

その日は妹に頼まれた予約のゲームを取りに帰った時に事故にあった。信号無視のトラックが歩道に突っ込んできたのだ。

平々凡々の僕が得など積んでいなく、このまま死んでいくんだな。思い残す事はそれ程ないけどせめて妹にゲームを渡してからがよかったのになと思いながら意識が遠のいていった記憶まである。



そんなこんなで今はキリア・ルートンとして生きているらしい。記憶を思い出したばっかりであまり現実味がない状態だが、この世界での僕はお嬢様専属に仕える従者である。

しかもこの世界は妹が熱中していた乙女ゲームの世界なのだ。

仕えるお嬢様はゲームの中のヒロインだ。

珍しい白銀の長髪に、目は赤目でぱっちりであり、笑顔は可愛らしい。しかしこのヒロイン最終的には死ぬんじゃなかったけ?妹曰く救いようのないゲームとか言ってたな。なんか全攻略者がヤンデレでどれもバットエンドに突き進んでいくゲームとか言ってた記憶が……

しかもルートには従者が巻き込まれて死ぬんじゃなかったけ?


なんというゲームをやっているんだ妹よ……。


今、そんなヒロインこと、お嬢様に壁ドンされています。

可愛い女の子に壁ドンされて嬉しいけど、実際にされるとちょっと怖いな、なんて。

アルトさんが心配してるだろうからなるべく早く顔を見せたいのだが退いてくださいとも言えそうにない。


「お嬢様、どうされたのですか?」

僕はお嬢様から距離を取ろうと僕から見て右側、腕の下を潜って逃げようとする……。

ダンッッ

と大きな音を立て今度は足で通行を遮ってくる。

え……怖っ!僕何かしでかしました?


「……お嬢様、私何かしでかしましたでしょうか?」

僕は恐る恐る、お嬢様に問いかける。


「貴方、熱中症で倒れたって聞いたわ。」

眉間にシワを寄せながら言ってくるので、めちゃ怖い。


「お嬢様のお耳にも入ってしまったのですね。」


「……。後で貴方に塩入りレモン水を届けさせるわ。今日1日大人しくしとくことよ。」


そう言って去っていった。

何だったのだろう?僕の体調を心配してくれていたのだろうか。にしては、凄い仏頂面だったが。

まぁ、僕の身の為にもなるべく関わらずに済むようにしよう……。

しかしどうやって関わらずして済むのか。


何でお嬢様専属の従者に転生しちゃたんだよ……。


僕は肩を落として自室に戻るのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 近づきたい令嬢と、近づきたくない従者。 令嬢の不器用さの中に見え隠れする優しさが好みです。 どうやって2人の距離が縮まるのか、はたまた縮まらないのか。 続きが楽しみです。 ブクマさせてい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ