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自由暗殺人 ノロクロ  作者: 浪川 晃帆
Ⅵ 祝福
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天空 ‐1


「さぁ、ニートの時間だ。意味ありげな戦いを始めようか。是雲よぉ!」

 疾走し、男は是雲に飛びかかった。

「はて、貴方はどちら様でしょうか」

「使徒だよ、使徒。格好いい名前だろう? だが残念だ、俺はただの無職引きこもり」

「そうですか。貴方もまた、悪魔なのですね」

「あ?」

 そして、例の如く額の電撃が炸裂した。

 爆ぜるスパークは空気を引き裂き、放った瞬間に狙いに当たる。

 だが、光が駆け抜けたその後、そこに男の倒れる姿がなければ、完全に消えていた。

「これは?」


「ここだっての」

 その瞬間。真横から突然の殴打。固く握り締められた男の拳が、是雲の顔面を撃ち抜き、吹き飛ばされる体は橋の主塔に激突した。

「やらせねえよ。右那は、俺が守るんだっての」

「な、なぜ……、如何に避けたのでしょうか」

「これがハイニートの実力だ」

「何ですか? それは」

「ほら行くぜ、ぼーっとしてると、あんパン坊主になっちまうぜ?」

 再び男は駆け出し、是雲へと高速で接近する。またしても是雲は電撃で応戦するが、当たらない。いや、男を狙った瞬間に男の体は瞬時に消失し、別の場所へと移動していた。

 今度は背後をとられ、中段の蹴りが炸裂した。是雲は橋桁に叩き付けられる。

「まさか、自分が最強だなんて思ってねえよな? 確かに必殺必中のおでこビームはやべえけど、つまんねえ力業だってのな。全ては相性の問題なんだ。音速の敵を仕留め、氷の壁を砕けようが、だが、てめえは闇を捉えることはできねえ。俺だよ、俺。おめえにとって嫌な敵っての」

「やはり使徒のようですが、あなたは一体……」

「誰だろうなぁ? そうだよ、あんたが救おうとしなかった、見向きもしなかったゴミ同然の人間だ。な? わかんねえだろ?」

 またしても飛びかかるヘルメットの男に対し幾度となく電撃を放つが、男は瞬時に場所を入れ替え、その後ろ、横、上から打撃を加えた。

 男の移動速度は既に時間の概念を超えている。まるでを目に見えぬ異次元のゲートがあるかのように自由自在、無制限な瞬間移動、残像とも錯覚するほどの高速だ。息のつく間もない連撃があらゆる方向から是雲を襲った。

「オラァ! これが与破音の痛みだ!」

 跳び蹴りが命中し、是雲は座禅のまま転がってアスファルトを滑走した。

「これは、何という悪魔でございましょう。あなたが一体どなたか存じ上げませんが、決して逃すことはできぬようです。人の世のしあわせ、光と愛に満ち満ちた世界に影を落とす恐ろしい存在だと、今わかりました」

 是雲は、かくして自身の足で地面に立ち上がった。その横には真っ二つに破壊されたドローンボードが転がっている。正方形の板の四方に強力なモーターと羽根を付けた軍用の最新移動装置だ。何らかの神能で音と姿を消せば、確かに座禅で飛んで見える。

「そうそう、それだよ。あんたがいるから俺がいるんだ。眩しいよな、お前は。綺麗な言葉で人を導く聖なる坊さんだ。だが、お前は暗闇に追いやられたゴミクソ人間のことなんか知らねえ。そこは光の当たらねえ隅っこなんだ。いま、お前に敵対してる悪魔の正体はそれだよ。未来、理想、愛、平和、正義、平等、なんか良さげな言葉に馴染めなかったゴミ共、死んだ方がいいような人間達、そいつらに手を差し伸べなかったのが、つけだ」

「……」

「お前はあの時、与破音を救わなかった。そして今なお、影に生きる少女を世界人類の犠牲にしようとしてる。俺という使徒が、お前をぶん殴る理由は十分以上にあんだよ。そら、何か言うことあるか? いつもみてえに平和を唱えてみろよ、法師様よぉ」

「……あなたは、よもやわたくしを倒せるとでも、思っているのでございしょうか」

「そういう問題じゃねんだな。マジ卍のアウトオブ眼中。俺を含め、おまえに敵対する闇は不滅ってことよ。まぁそれでもお前を殺すのは俺だがねぇ」

「今までの散々な打撃、少しでも効いているとお思いなのでしたら、そのように調子づくのはよろしくないかと存じます」

 そう言って是雲が端のほうに目をやると、先ほどまで動くことすらままならなかった珀斗が、橋の柵にしがみつき、ふらふらの足取りで立ち上がっていた。

「珀斗か」

「それで、その影とやらの貴方に一体なにができるのでございましょう。あなたが唯一世界の為にできることは、滅ぶことにございます。これより旧世使徒たる、わたくしの力をもう少しだけご覧に入れましょう。どうか己の愚を悔い改めなさいませ」

 すると、それは一瞬であった。

 闇に覆われた天空より、電光が散ったと見えるその刹那、是雲の直上に巨大な稲妻が走った。大気を割るような雷鳴が木霊し。そして、空一面に立ちこめる暗雲の中には、神ともおぼしき災厄の片鱗が所々見え隠れした。

 雲の隙間から覗く暗緑の鱗、その全貌は到底見ることは叶わないが、島を一つ締め上げてしまいそうな規模である。

「龍……」

 呟く珀斗は、足をひきずって右那の所までやって来た。


 ――わたくしは、この地域一帯を破滅の光で葬り去りましょう。あなた方の全身全細胞を完全に焼き払ってご覧にいれます……






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