ケースX ~それは未知なる存在の場合~
Xさんは確かに存在する。
けれどだれもその存在を認識出来ない。
「あの。ここにいますよ」
Xさんが声を掛けても誰も気付かない。
否。気付いてはいる。認識出来ないから反応出来ないだけだ。
「えーと。悪い事しちゃいますよ?魔王なんで」
悪役宣言しても誰も振り返らない。
否。魔王という言葉に反応はしている。認識が上手く取れず言葉を飲み込めないだけだ。
「それじゃあ取り合えずこの村から牛耳っちゃいますよ?」
Xさんは闇魔法であっという間に村を乗っ取った。
でも誰も困っていない。乗っ取られた事が認識出来ないからだ。
村長さえ自分が村長で無くなった事に気付いてすらいない。
否。認識出来なくなった。
今では他の村民と一緒にXさんの思う通りに日夜力仕事に勤しんでる。
「誰も気付かない・・・。
次は城を攻めちゃいますよ?」
勿論誰にも認識されず、本来手下の魔族達にも認識されず、一人寂しく国盗りを成し遂げた。
誰にも認識されないから抵抗なんて全くない。本当にない。手応えもない。
「せめて勇者とか・・・」
Xさんは寂しく玉座で贅沢三昧(何故誰もいない玉座に食事を用意しているのかわからない給仕によって)をしながらきっと現れるだろう勇者を待った。
待った。待って。待ち望んで。もうすぐ寿命を迎える。
誰にも認識されないXさんは勇者にすら認識されなかった!
誰も支配されていると認識出来ないからだ。
こうして未知の出来事は誰にも認識されることなく、Xさんの生涯が閉じると共に終わりを告げた。




