ケースN ~泣き虫の場合~
Nさんは魔王に進化した!
「え?え?えぇっ!?何でぇー?ふ、ふえ」
Nさんは狼狽えている!
Nさんは目に大粒の涙を溜めている!
「魔王よ!」
「魔王だ!」
周りの人間がNさんを指差して遠ざかった!
その中にはNさんの友人家族もいた!
「ふえええええええん!!」
Nさんは泣き出した!大号泣だ!
Nさんの魔力が乱れて暴走しだした!
「うえっ!えええええん!何でええ!?
止まんないよーー!!」
Nさんは混乱してどんどん制御が出来なくなった!
生きとし生ける者達は恐怖し逃げ惑い、そして辺りには誰も居なくなった!
「ふぅぅっ、ふえっ。うぅぅ、ひっく。あぅぅっ」
Nさんは寂しさと己に対する恐怖で啜り泣いた!
「魔王はここか!」
勇者が現れた!
装備は最強だ!
「うわあああああああん!!」
それを見たNさんは怖くて又号泣した!
暴走した魔力が勇者を襲った!
「はーはっはっはー!この程度で俺を倒せると思ったかー!」
勇者は聖剣エクスカリバーで魔力を一刀両断した!
Nさんはビックリして一旦涙が引っ込んだ!
「うぎゃあああん!!!」
しかし更なる恐怖でギャン泣きした!
しかもちびった!
「え?ええ?」
大の大人のマジ泣きに勇者は慄き狼狽えた!
勇者は一歩近付いてみた!
「ふんぎゃおおす!!」
Nさんは怪獣も裸足で逃げ出す大音量で泣き出した!
勇者はビビって後退した!
「ふええっ、ひっく」
Nさんは少し安心した。
泣き声が落ち着いたから勇者は近付こうとした!
しかし敏感に反応したNさんがギャン泣きの体制に入った!
勇者は瞬間に悟って動きを止めた!
勇者は様子を見ている。
Nさんも様子を見ている。
「あー、落ち着いたか?」
「うぐぅっ」
勇者は対話を試みた!
Nさんはビクついて呻いた!
勇者は困った!
「あー、あれだ。
今日はいい天気だな?」
「うぐ?・・・う」
勇者はなるべく優しく会話を試みた!
Nさんは首を傾げた!
Nさんは鼻水を啜って勇者の言葉を反芻した。言葉の意味を理解するのに時間が掛かったが、空を見てその通りだと思ったから頷いた!
勇者は会話が成立してホッとした!
「ああ、鼻水なんて啜ったらバッチイぞ。
ティッシュ使うか?」
勇者は無理矢理笑みを作って言った!口の端が引き攣っていて無理矢理感半端ないぞ!
「うう?・・・う」
しかし効果は有った様だ!
Nさんは鼻を気にした。途端垂れた鼻水に狼狽えた!
Nさんは自前のティッシュを探して体中パタパタ弄った。しかし見つからなかった!
Nさんは辺りをキョロキョロしてやっと勇者が持つティッシュに気付いた!
「う?くれるの?」
涙と鼻水でグチャグチャの大人の上目遣いに慄く勇者。
勇気を振り絞って笑顔を貼り付けて頷いた。
「えーと、近寄っても泣かない、か?」
勇者は恐る恐る聞いた。
「・・・イジメない?」
Nさんも恐る恐る聞いた。
「・・・シナイシナイ。俺勇者。嘘ツカナイ」
勇者は間を開けて、棒読みながら何とか答えた。
Nさんはホッとしてやっと微笑んだ。
勇者はNさんの様子を伺いつつ近付いた!
Nさんはティッシュを受け取った!
Nさんはスッキリした!
「えーと、じゃあ戦って良いか?」
Nさんが落ち着いた所で勇者が改めて切り出した!
しかしNさんは大いにビクついた!
ギャン泣きまで1秒前!
「ふっぎゃあああああ!!」
勇者は至近距離で鼓膜に攻撃を受けた!
勇者は耳を塞いで困っている!
「いーけないんだ、いけないんだー!
せーんせーに言ってやろー!」
子供達が現れた!
Nさんを泣かせてる勇者を見て子供達が一斉に非難した!
勇者は子供達全員に指を指されて狼狽えている!
「イジメはダメなんだよー!」
「お兄ちゃん大っきいのにいけないんだー!」
「「「そーだ!そーだー!」」」
「イジメとかダセーんだぜ!」
「心が弱い奴とか余裕ない奴がやる事なんだぜ!」
子供達が勇者を囲んでブーイングだ!
「ち、違うぞ!?」
堪らず勇者は叫んだ!
「どう違うって言うんだよー!」
「そーだぞ!兄ちゃん泣いてんじゃん!」
「言い逃れとかダセーんだぞ!」
子供達は容赦が無い!
勇者はタジタジだ!
Nさんは事態が飲み込めていない!首を傾げている!
「いや、だからっ、ほらっ、ティッシュ!
ティッシュ持ってるだろ!?あれあげたんだよ!」
勇者は必死に弁明してる!
子供達はキョトンとしてNさんの手元を見た!
「本当だー」
「お兄ちゃんそれ、このお兄ちゃんに貰ったの?」
「う?・・・うん」
Nさんは聞かれたので正直に頷いた!
勇者は弁護されるとは思わなかったので驚いた!
「そっかー、早とちりだったね」
「うんそうだね」
「悪い事しちゃったから謝ろう」
「うん。せーのーで」
「「「ごめんなさい」」」
子供達は素直に謝った!
「う?うー、ごめんなさい?」
Nさんも良く判らないが謝った!
子供達とNさんが純粋な目で勇者を見ている!
まだ見ている!
勇者が何か言うまで見ている!
「俺モ誤解サセルヨウナコトシテ悪カッタ」
勇者は何かに負けて棒読みで謝った!
子供達もNさんもホッとして笑った!
こうして公園に平穏が訪れた!
後日談
「アンタを野放しはある意味危険だから俺がずっと側に居るからな。
ああ、もう!アメちゃんやるから泣くな。な?」
勇者はNさんが暴走しない様にご近所さんに引っ越した!