1-5「花の祝福」
続きです。
学校から外に出た。
すぐそこはバザールになっており、多くの人が行き交う大通りだ。
そんな中、石畳の床を音を立てながら通り抜ける。
道すがら、出店の店員から営業をかけられたが、すべて無視した。
切羽詰まっていた。
俺は、たまにこうなってしまう。
俺が俺であることを望み。
人と比べられることを嫌った。
‥‥いや、違うか。
私は、誰よりも有能であることを望んだのだ。
人と比べられ、優位に立っていたかったのだ。
そして俺は、俺よりも能のある者をすべからく視野から消した。
気づけば、俺の足は走り出していた。
胸が苦しくて、張り裂けそうな痛みが走った。
苦しい。
とても、苦しい痛みだった。
そこは高い草木に囲まれた洞窟であった。
わけもわからず走り続け、こんなところまで来てしまっていた。
「ここ、どこだ」
荒れた息を整えながら、辺りを見渡した。
生まれ育った街であるにも関わらず、俺の記憶にこのような場所はなかった。
洞窟は水場にできることが多いと聞いたことがある。
だが、この街には川も湖もない。
あるのは、源のわからない井戸だけだ。
俺は、まさかと思った。
マグニ・ローレンは生前、自分の宝をどこかに隠した。
自分の死後、それが悪用されることを嫌ったのだ。
その宝は、彼が最も大切にし、最も愛した、この世にまたとない秘宝。
俺はまた走り出していた。
暗く、岩の多い洞窟だが、なぜか通るべき道なりがくっきり見えるような気がした。
心臓が跳ねる。
先ほどの痛みはなく、至極高揚した気分に変わっていた。