1-3「花の祝福」
続きです。
「何見てるの?」
意識の外から声をかけられ、身体が震えた。
視線を声の元にやると、見知った顔があった。
「エルマ」
おさげの似合う少女がそこにいた。
黒い髪を頭の両脇でまとめ、一つ動く度にブラブラ揺れている。
「どうした?」
「イオが、外を見ながらぼーっとしてたから。
どうしたの?」
おさげの少女は首を傾げた。
二本の髪の束がまた揺れる。
「なんでもない」
私は首を振った。
「うそ。あなた、やましいことがある時、まばたきの回数が多くなるもの。
私になにを隠してるの?」
彼女は、私の願望を知らない。
幼馴染で、古くから私を知っている彼女は、時々、お節介なほど世話を焼いてくる。
私には、それが、時たま酷く煩わしく感じていた。
「なんでもないって。
あっち行けよ」
私はその黒い感情がわずかに漏れるのを感じながら、彼女を追い返そうと、手をヒラヒラ揺らした。
しかし、これで黙るような女でないことは、この十数年の付き合いでよく知っている。
「いや。何か悩みでもあるの?
あ、今度のテストのこと?
じゃあ一緒に勉強しましょうよ」
「勝手に話を続けようとするなよ。
俺はなんでもないって言ったんだ。
あんまり構うなよ」
俺はそう言って机に突っ伏した。
エルマは、なによ邪魔ものみたいに、と不機嫌そうに言う。
しかし、やはり彼女は帰ろうとはしなかった。
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